不定期連載小説『YOU&I』40話
小金井も旅行に行く。
それを聞いて國立は驚き混乱した。この旅行の話しをしたのはつい先日。この短期間に何があったのか。
「ちょ、ちょっと待った。何で立夏が旅行に行くことになったんだ?」
「! いま、立夏って呼んだよね?」
國立は混乱のあまり、小金井のことを“立夏”と呼んだ。しかし國立にとって今はそんなことは気にならなかった。
「あ、ごめん。で、どういう経緯でそうなったの?」
「立夏って呼んだよね!!」
対する小金井は、下の名前で呼ばれたことに頭がいっぱいになっていた。
「よ、呼んだよ。それはわかったから、何で旅行に行くことになったの?」
「ねえねえ、これからも立夏って呼んでくれる?」
「そ、それよりも、経緯を教えてよ」
「呼んでくれる?」
小金井は再び國立の目をじっと見つめて問いかけた。國立はその圧に押され、
「わ、わかったよ。呼ぶから、呼ぶから経緯を教えてくれよ」
と下の名前で呼ぶことを了承した。
「やった! なら約束ね! 次“小金井さん”とか言ったら叩くからね」
と小金井は無邪気に喜んでみせた。
「叩くって、本当に小学生みたいだな……。まあそれはいいからさ、早く教えてよ」
「うん、実はさっきね……」
と、小金井が口を開こうとしたとき、
「はい、それでは授業を始めますよ」
と、教授が教室へと入ってきた。
「あ、もう授業始まるから、また後で話すよ」
と小金井は話しを止め、前を向いた。
「お、おい! 話し始めたなら、最後まで話してよ」
「だめだよ。先生に怒られるかもしれないし、この授業板書とるの大変なんだから。授業終わったら教えてあげるよ」
「……ったく、なんか遊ばれてる気分だよ」
「今日は学校終わりに時間ある?」
「? まああるはあるけど」
「なら学校で話すのも何だから、どっか外で話そう」
「そ、外って?」
「どっか喫茶店とか」
「喫茶店? ま、まあ別に予定ないからいいけど」
「なら決まりね!」
こうして國立と小金井は、学校終わりに出かけることになった。
(学校じゃ話せないようなことがあったのか? もしかして、俺が中野さんに気があることがバレてるとかじゃないよな?)
國立は急にそんな不安が押し寄せてきた。
▶To be continued
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