不定期連載小説『YOU&I』10話
再び中野と二人きりにされてしまった國立。
(……もう何も会話が浮かんでこない。このまま気まずい状態が続くのか……最悪だ)
何を話したらいいか分からず、パニック状態に陥っていた。すると、
「お腹空いたね! 國立くんは何頼むの?」
と中野から話しかけてきた。
「あ、あの……。そうだね。……えーっと、ラ、ラーメンにでもしようかな」
「うーんラーメンねぇ。いいチョイスするね。私もちょうどラーメンの気分だったんだよ。ちなみに学食はよく来るの?」
「い、いや。あの、まだ数回しか来たことないかな……」
「そうなんだ! なら豚骨ラーメンがオススメだよ! 値段の割に結構美味しいんだ」
「そ、そうなんだ。なら……豚骨ラーメンにしようかな」
「お! いいね! なら一緒に頼んじゃおう!!」
そして二人は一緒に豚骨ラーメンを頼んだ。國立の心臓は変わらず早く脈を打っていたが、先ほどまでのパニック状態とは少し違う感じがしているのを感じていた。
(……何なんだ一体……)
その正体が何か分からないまま、二人は神田らがいる席へと戻る。
「おかえり! ごめん、先に食べてた! お、二人して豚骨ラーメン?」
神田は、二人が同じメニューを持っているのに気づきそう話した。
「うん! 春樹くんがあんまり学食に来たことないって言うから、オススメしてみた!」
「お、良いチョイスするね。俺もここに来ると毎回豚骨ラーメン頼んでるぞ」
市ヶ谷も豚骨ラーメンを頼んでいるようだった。
「そ、そうなんだ。なら間違いないね」
國立は少し引きつった笑顔で、そう答える。今だ緊張状態にあり、何とか反応するのが精一杯な國立。その後も、緊張していることを悟られまいと、必死に笑顔だけを作り会話に参加していく。
そうしてあっという間にお昼の時間が終わりを迎え、一同はここで解散する。國立はみんなとは別の授業をとっていたので、ここからは一人となる。
みんなと別れ、一人になった國立。
まるで嵐のが去ったかのように心に平穏が訪れる。
(……疲れた)
今まで、あのようにグループで食事をとるなんてことをしたことがなかった國立は、周りの会話に合わせるのに精一杯だった。
午後からの授業を一人で受けながら、色々なことを考えていた。
(やっぱり俺にはグループっていうのは向いてないのかもな。……でも、冬真とは仲良くなれて嬉しいし、神田さんも明るくて良い人だったから嫌じゃないんだよな)
疲れはしたものの、市ヶ谷や神田に対しては嫌な気持ちは一切なく、むしろまた話したいという気持ちすら持っていた。
しかし、國立の胸に引っかかっているのは“中野亜希”のことだ。
なぜだか彼女だけは市ヶ谷や神田と同じように接することが出来ない。そして、彼女の笑顔も頭から離れない。
気づけばここ1週間は、中野のことばかり考えていた。
(うーん……。何なんだ? これじゃあまるで俺が中野さんのこの好きみたいじゃないか……?)
ふとそんなことを思ってしまった。
▶To be continued
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