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不定期連載小説『YOU&I』54話

旅行の話が持ち上がると、更に國立は言葉を失った。

「いや……。旅行はその……」

それ以上國立は何も言えなかった。自分でもどうすればいいかよくわからなかったからだ。

中野のことを考えると、旅行は絶対に断りたい。しかし、市ヶ谷たちの手前なんと言って断ればいいのか分からない。自分の意思をハッキリとすることが出来ず、モヤモヤしたまま時だけが過ぎていた。

「あれ? 國立くんは旅行行かないの? 立夏は行くんでしょ?」

大久保はここでもあえて國立へと突っ込む。小金井は少し気まずそうな顔をして、

「えと……。前から気になっていたんだけど、春樹は旅行行きたくないの?」

と國立へ問いかけた。

「い、いや……。別に行きたくないとかではないんだけど」

しかしここでも國立は言葉を濁す。まさか、「中野のことが好きで、そのことに気づかれ避けられているから旅行に行きたくない」なんてことは言えるはずもなかった。

しばらく車内は沈黙が続く。

「なーんか重たい雰囲気だね。國立くん、初対面だからあえて聞いちゃうけど、誰かとなんかあったの? ケンカとか?」

大久保はその沈黙を破り國立へと問いかける。小金井では聞きにくいだろうと思ったことは代わりに聞いてあげるつもりだった。

「い、いえ。そんなんじゃありませんよ……」

ここでも変わらず國立は言葉を濁し、確信的なことは何も言わない。その態度に思わず大久保はため息をつく。

「うーん、よくわからんな。まあ色々あるんだろうけどさ。俺だったらあんな可愛い子と旅行行けるなら喜んで行くけどな」

と少し冗談混じりでそう話した。雰囲気が少し和むかと思ったが、大久保の予想に反して國立の表情がより強張ったのだ。その反応を大久保は見逃さなかった。

「……中野さんって可愛いよな。一回しか会ってないけど、一目惚れしちゃったよ」

大久保は國立の反応を確かめるようにそう話した。対する國立は明らかに動揺をみせ、

「そ、そそうですか。僕は何ともわかりませが……」

と答えた。

(なるほどねぇ)

大久保は、國立のその反応を見てあることを確信する。そして、

「そっかー。俺は可愛いと思うけどな。あ、そうだ。もし國立くんが旅行行かないなら、俺が変わりに行っちゃおうかな」

と話した。

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