不定期連載小説『YOU&I』31話
小金井が放った言葉が國立の胸に刺さる。自分が非常識だと言い放った相手に返す刀で切られた気持ちになった。
「……た、確かに俺は一人だったけど、ちゃんとここには呼ばれているし、友達だっているよ……」
小金井に言われたことがショックだった國立は、思わず声が震えてしまった。
「ごめんごめん。そんな悪く言ったつもりじゃなかったよ」
その様子を察してか、小金井は國立へと謝る。しかし、謝られる方がよっぽど惨めである。國立は、
「い、いいよ謝らなくても。俺は君と違って常識はあるから、何にも気にしてないし」
とムキになって答えた。
「そう怒るなよ。ほら、この唐揚げ美味しいから食べな?」
小金井はそう言うと、席を立ち上がり國立の横へと唐揚げを持って移動した。そして國立の真横に来て、
「はい、仲直りの唐揚げだよ」
と笑顔で唐揚げを差し出したのだ。
「何だよ仲直り唐揚げって! 別に怒ってないし、唐揚げだってもうさっき食べたよ」
國立は小金井の行動に少し笑ってしまう。本当に小学生のような行動をする子だと思った。
「まあまあ、そんなこと言わずにさ。はい、あ~ん」
「だからいいって! 恥ずかしいからやめてよ」
「何照れてんの。全く春樹は小学生みたいだな」
「君に言われたくないよ!」
「……さっきから“君”って言うけど、立夏でいいよ」
小金井は急に真面目な顔をしてそう話した。
「そ、そんなこと言われても。……さっき知り合ったばっかりでいきなり下の名前で呼べるわけないだろ」
國立は少し照れながら答える。
「んー? また照れてんの? 春樹は色々なことを気にしすぎだよ。次“君”って呼んだらもう唐揚げあげないからね」
「唐揚げはいらないって!」
小金井の独特なペースに巻き込まれる國立であったが、彼女が時折見せる屈託のない笑顔に、不思議と嫌な気持ちはなくなっていた。
「……あれ? 何か春樹くん楽しそうだね。隣にいる子は誰だろう?」
國立から少し離れた席にいた神田が、二人のことに気づいた。
▶To be continued
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