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その日のまえに

「あとになってから気づく。あとにならなければ分からないことが、たくさんある。」

「悲しみと不安とでは、不安のほうがずっと重い。病名という形を与えられる前の、輪郭を持たない不安は、どんなにしても封じ込めることができない。どこにいても、なにをしていても、不安は目に見えない霧になって僕にまとわりついていた。」

「悲しみは深い。けれど、不安とは違って、そこにはちゃんと輪郭がある。ありかがわかれば、それに触れないようにすることだって、できる。」

「忘れてもいいよ」

「考えることが答えなんだと、わたしは思ってます。死んでいく人にとっても、あとにのこされるひとにとっても」

大切な人の死に初めて触れて気づく当たり前なことだと思っていた事への感謝。

大切な人がこの世からいなくなってしまうと知ったらどうするだろう。

絶望的な感情が渦巻く日々の中をどうやって過ごすのだろう。

大切な人の存在、何気ない会話、二人で見た景色、日常。

全てが当たり前ではなく有難いことだったのだと失って初めて気づく。

そこから少しづつまた新しい人生が始まる。

新しい毎日の中にもその人の存在は生き続ける。

無理に忘れる必要なんてない。一緒にまえに進む。

いずれ新しい愛する人との生活があったとしても過去の人になることはないのだと思う。

新しい生活の中にもあの日この世界からいなくなってしまった人は生き続ける。

苦しみの中で無理に解決する必要なんてない。

いずれ大切な人にも訪れる「あの日」があるのなら

私は今日、なにを伝えられるだろうか。


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