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Be Place 事始め シニアの居場所は何処にある?

まあ、余計なお世話かもしれませんが・・・。
ひどい言われようである。中高年、それも定年退職者を想定したその生活実態はまるで社会問題化しているかのようなネガティブな報告や情報であふれている。
 定年退職年齢を六十歳とする企業が多いためか五十歳代の人たちが目にするメディアや読者となる書籍の多くは、定年を無事に迎えるためのノウハウや心構えといったテーマをよく取り上げるが、年金や社会保険関連、資産管理など具体的に役立つことも多いとはいえ、必ず指摘されるのがライフスタイルにおける居場所づくりに関することで、これが先達諸氏たちの失敗例を引用したアドバイスだったりするのだ。
 家庭内で居場所を失うどころか奥さんから熟年離婚を言い渡されるとか、公立図書館では席の奪い合いや新聞の閲覧順で小競合いになるとか。そのためにも地域のコミュニティに参加しましょう、趣味を持ちましょう、孤独にならないよう社会奉仕活動はどうですかといったようにもっともなヒントが列挙されている。
 確かにそうだろう、これまで自営業を生業としてきた人は生活環境のなかで日々起こりうる問題や迫られるテーマについてそのたびごとに順応してきているが、長年にわたり会社といった組織を中心に仕事人生を送ってきた人にとってはいきなりの場面転換に直面するのだから、失敗もあるだろう。
 特に「団塊」といわれた世代の人たちが大挙して定年を迎えたあたりからのあれこれには枚挙にいとまがない。失敗例も多くあればそれはそれで参考になるが、反面、嵐が過ぎ去った後の荒涼とした風景に並ぶ墓標のようにしかみえない経験談など、確認すべき道標どころか三途の川へ向かうまるで可哀そうな旅人への注意書きのようだ。
 このところ国や政府、世の中の論調は六十歳を越えても働こう、働きなさい、働けるようにしなさい、ということに傾いている。もちろん、働かなくてはならない人は働くのだから年齢を問わず労働環境整備が進むのは歓迎すべきことだ。また、健康を維持する意味で高年齢でも従事する仕事人生、少子化問題や年金問題を考え少しでも長く多く納税責任を負い続けようというのは決して悪いことではない、むしろ良いことではある。
 しかし、推奨されることに光があたればあたるほどそうでないものには否応なく陰が強くなる。さぁ、定年退職してゆっくりと休もう、第二の人生の船出はいかに過ごそうかと考えていた人はいつのまにか社会の風潮から働く意思のない役に立たない人、社会的には必要のない人といったようなありがたくないカテゴリーに入れられているのかもしれない。また、先達諸氏が残した数々の定年後の失敗例も追い打ちをかけるので、再雇用制度など雇用延長の選択領域が広がれば広がるほど中高年齢の定年退職予備軍は暗澹たる思いで定年後の居場所の無さに不安を感じているのではないだろうか。
 令和四年、六十歳から六十四歳で働いている人は七十三%、六十五歳以上で二十五%という統計があるがこれは自営業も含めてのことだろう。雇用勤務者はどう考えてもそれよりかは少ないはずだ。六十代前半で半数は自由人だろう、世の中の同調圧力など気にせず、中高年の居場所探しの旅にも明るい灯台があっても良いのではないか。

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