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「クリエイターと作品」を守る法律知識を、弁護士・山田邦明さんがわかりやすく解説!#安心創作勉強会

インターネット上で創作や発信をするときに必要な知識や考え方を学び、生まれがちな不安や疑問を少しでも減らしていくためのシリーズ「安心創作勉強会」。

第4弾のテーマは「クリエイターの仕事に役立つ法律知識講座」。解説は、第1弾「クリエイターが知っておきたい著作権の基本」でも講師を務めていただいた、しろしinc. のCEOで、しろし法律事務所代表弁護士でもある山田邦明やまだくにあきさんです。

今回は、5月に出版予定の『クリエイター1年目のビジネススキル図鑑』(KADOKAWA)のテーマでもある、クリエイターと作品を守る法律の基本的な知識を伺いました。

イベント第1弾「クリエイターが知っておきたい著作権の基本」は、こちらを参照してください。

教えてくれるひと

しろしinc. CEO&しろし法律事務所 代表弁護士  山田 邦明やまだ くにあきさん

山田邦明さん

法律って、やっぱりなんかモヤモヤする

一般的に、法律的にNGなことはすべてNGだと思われている方は多いと思います。しかし実際には、著作権に関しては法律的にかなり曖昧な部分が多いのです。NGかOKかを一概に決められないもののほうがはるかに多く、グレーの部分がかなりの割合で存在します。

さらに著作権に関しては、法律だけでなく、そこに業界の慣習や雰囲気、企業や個人の倫理といった判断基準が加わってきますので、さらに白黒は曖昧になってきます。

逆にいえば、法律的にOKであれば絶対大丈夫かといえば、そうとも限りません。たとえば、少し前に問題になった五輪のエンブレムとか、頻繁に取り沙汰される漫画のトレース問題などもそうです。

著作権の何かの権利を侵害してるかというと、おそらく「法律的にはトレースは権利侵害に値しない」と回答する専門家が多いと思われます。ただ、SNSなどでトレースが特定された場合、トレースした人が叩かれるのは感覚として理解できます。たとえ法律的には問題のない使用だったとしても、倫理的に考えたら手放しでOKにはできない。

そういうとても曖昧なところを生きているわけですから、モヤモヤするのは当たり前といえば当たり前のこと。ただその中で、トラブルをできるだけ回避するために、どんな打ち手があるのかを考えてもらえたらと思っています。

そのためにまずは、「創作すると手に入る権利」について知ってもらいたいです。それがわかることによって、法律的に他の人に侵害されているかどうかもわかりますし、侵害されたときに自分がどういう対処をしたいのか、その対処法もわかると思います。

*著作権の基本については、第1弾の「クリエイターが知っておきたい著作権の基本」をご覧ください。

クリエイターは自分のつくった作品について、どんな権利を行使できる?

著作権の中には、著作者人格権と著作財産権といわれてるものがあり、創作性が認められる著作物を作った瞬間に、作り手にはこれだけの権利が生まれます。これをひとつずつ説明していきます。

複製権・上演権・演奏権

まず「複製権」。コピーや印刷、写真といった方法で作品を複製する権利になります。これはよく問題になる権利でもあります。例えば自分がイラストを描いたり、文章を書いたりしたものが、誰かに勝手にコピーされて使われた場合は、「自分の複製権が侵害されている」という状態になります。

次に「上演権」や「演奏権」。これは自分の作ったお芝居や音楽を、大勢の人の前で見せたり、聴かせたりする権利のことです。

上映権・公衆送信権

上映権」は、DVDやフィルムを公の場で上映する権利ですね。おもに映画の話だと思ってください。

公衆送信権」は、自分の著作物を放送電波にのせたり、インターネットに公開する権利ですね。インターネットがメインになってる時代において、これはとても重要な権利になります。例えば自分の創作をTwitterなどのSNSにアップする権利はここで使われています。

展示権・譲渡権

展示権」は、写真や美術品をたくさんの人に見せる権利。
譲渡権」は、創作した著作物自体を販売したり譲渡したりできる権利です。

貸与権・翻訳権・翻案権

貸与権」は、創作した著作物を貸す権利のこと。
翻訳権」「翻案権」は、二次的著作物を作る権利です。例えば原作が小説のものを漫画や映画にする場合や、日本語の小説を英語に翻訳して海外で出版するような場合などは、この「翻訳権」が関わってきます。

二次的著作物利用権・公表権

二次的著作物利用権」は、自分の著作物に関して二次的使用がされた場合、その二次的著作物の利用に関して、原著作物と同じ権利を持てるということです。
公表権」は、自分の著作物を、いつどうやって公開するかを決められる権利です。

氏名表示権・同一性保持権

氏名表示権」というのは、自分の著作物に名前を表示するのか、そもそも表示しないのかといった、表示する方法を決められる権利。
同一性保持権」というのは、著作物が他人の手によって自由に変えられないための、著作者の権利のことです。

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創作活動をつづけられるようにするには、基本的な法律の知識が必要になりますが、自分では判断がつかないときは一人で悩まず、弁護士や税理士などの専門家に相談してみることは、健やかな創作活動を続けることにもつながります。

noteでは創作活動をするときの基礎知識をまとめたガイドライン「noteを安心して使いこなすために」を用意しています。ぜひ参照してください。

最後に、視聴者から寄せられた質問と山田さんの回答を掲載します。

クリエイターからの質問に答えます

質問①:自分の記事がコピペされたうえ、引用表示がありません。

自分の記事がコピペされていて、そこに引用の記載がなかったり、引用の範囲を超えていたりした場合、どのように対処したらいいのか教えてください。

山田さんの回答:これは「創作すると手に入る権利」のうちの「複製権」の侵害に該当します。そもそも「引用」自体、明確なガイドラインが存在しないため、かなり雑に理解されています。「引用」とすれば著作権侵害には当たらないかといえば、そうともいえない難しい問題であることを、先に理解しておいてほしいと思います。

その上での対処法として、まず、コピペした人が特定できている場合と、特定できない場合の2つに大きく分かれます。

特定できている場合、権利を侵害している相手にDMなどで直接連絡するのは効果的な手段であると思います。引用の記載がなかったり、引用の範囲を超えている〝コピペ記事〟は、本人はなんの悪気もなく、著作権についての知識が乏しいためにやってしまっているケースが非常にたくさんあります。ですから、「これは著作権侵害にあたります」ということを伝えるだけで解決に至ることが結構多いのです。

本来は、創作者自身にその義務を負わせること自体があってはならないのですが、そこで必要以上に攻撃的になるより、「知らなかったのなら仕方ない」と許すほうが、お互いが気持ちよく終われますよね。そして、その人が著作権についての知識を得ることによって、日本の未来の創作に対して、新たな種を蒔くことになるかもしれない。そういう優しい対応をしてもらえたらいいなというのが、僕自身の理想です。

僕がいつも思うのは、創作している人の権利は適切に守られるべきではあるけれど、自分が正義だから、自分が権利を持っているからといって、誰かに対して攻撃的になっていいということではないということ。それは僕が望む世界ではありません。望むのは他人に対して寛容な世界。そこに近づいていけるようなアクションをとってほしいなというのが、僕の基本的な考え方だと思ってください。

もうひとつは権利を侵害している相手を特定できない場合です。DMが送れないようなときは、掲載されているサイトのプラットフォームに連絡することになります。

noteの場合だと、記事の下の「・・・(三点リーダ)」ボタンから連絡することになります。noteに限らず、それぞれプラットフォーム側に著作権侵害に関する対処方法があるので、基本はその処理の仕方に従ったほうがいいかと思います。最近は、著作権に関するガイドラインの記載がわかりやすく掲示されているサイトが多いので、事前に読んでおくことをおすすめします。

質問②:著作権はいつ発生し、どのように保護されるのですか?

Web上で交換した作品に関する著作権について。著作権はいつの時点で発生して、どのように保護されるのか。また、著作権が侵害された場合の対策について知りたいです。

山田さんの回答:「著作権はいつの時点で発生するのか」。それは「作った瞬間」になります。なのでこの場合、Web上で公開した時期にかかわらず、作品がアナログでもデジタルでも、生まれた瞬間から著作権は発生しています。

「どのように保護されるのか」に関していうと、創作物を作った本人以外の人が利用した場合、それを止める権利が創作者には生まれるわけで、そのようにして保護されるといえます。法律的にいうと、差し止めの請求権だったり、勝手に利用されたことで作者本人が被った不利益に関して損害の賠償を請求することもできます。

ただ、いきなり裁判というのはあまり現実的ではありませんから、基本的には個人的にDMを送り、相手と交渉することになると思います。

質問③:アイデアをブログ等で事前公開することによる不利益はありますか?

アイデアを自分で製品化する前に、ブログ等で公開することによって被る不利益はありますか。また公開後、他社が先に製品化した場合、対抗できる手段はありますか。

山田さんの回答:
ここでの「不利益」とは、「先に製品化されてしまう」ことになります。アイデアというのは、正確にいうと著作物とみなされません。著作権によって保護されないため、先に製品化されてしまった場合、それを止める権利はない、というのが法律的な見地からの回答になります。

ただ、正直ビジネス的にいうと、ブログでアイデアを公開することに関してのリスクは、実際はそれほどないと思っています。それより、アイデアを公表することによって、賛同する味方だったり、新たな評価も得られるという利点のほうが大きいのではないでしょうか。

もっというと、例えば1月26日にブログでアイデアを公開したら、2月に別の誰かが製品化した場合、権利的に保護されなかったとしても、アイデアの帰属先が誰にあるかはすぐわかるわけです。

僕としては、権利として保護されることよりも、公開しながら進めていく方が、いい形で発展性があるのではないかと思っています。

ただ、考え方も人それぞれいろいろありますし、実際にアイデアを盗用されて致命的なダメージを受ける可能性はゼロとはいえません。これが例えば特許に関するものであれば、事前に特許を取得しておくという対策も取れるのではないかと思います。

質問④:作品の料金設定の基準があれば教えてください。

作品の料金設定について、目安となる基準があれば知りたいです。現在は、「最低賃金(時給)×作品完成までにかかった時間」で料金設定をしているのですが、トラブルにならないように気をつけることがあれば教えてください。

山田さんの回答:かなり難しい質問ですが、僕の考えでは料金を設定するのに3つの方法があると思っています。

1つ目はマーケット、いわゆる相場から決める方法です。例えば、クラウドワークスのような、いわゆるオンライン上で仕事を頼めるサービスがあります。そこで類似のサービスがいくらに設定されているかを調べます。多くの場合、最安値に設定されていることが多いので、それが最低金額だと思ってください。そして同時に、最高値がいくらかも調べます。自分の憧れている同業のクリエイターさんがいるのであれば、その人が提示している料金を最高値として、その幅の中で決めるというのが、マーケットから決める感覚です。

2つ目は、コストの積み上げから算出する方法です。実際それが完成するまでにかかったコストを単純に足していきます。そのとき注意してほしいのは、創作にかかった時間、つまり自分の時給を忘れずに足すこと。例えば時給2,000円で働いて、10時間で作って、材料費が何もなかったとき、ミニマムコストは2万円になります。ただそれでは、自分の利益が何もないので、そこに利益をちょっと足して、2万3,000円にする、ということです。

3つ目は、好きに決める方法です。自分の作品はこのくらいの価値だろうと直感で決める。この場合、重要になってくるのは、相手にその金額で納得させる論理を用意できるかどうかです。それができれば、基本的に金額のことで揉めることはないはずです。

質問者の場合、時給を最低賃金で換算していますが、別に最低賃金でなくても、自分がこの金額なら働いてもいいと思う時給に設定すればいいのかなと思います。

創作物の金額の決め方については、「安心創作勉強会」第2弾に登場いただいた、フリーでイラストレーターをされているサタケシュンスケさんもしてくださっています。もう少し詳しく知りたい方は、そちらもぜひ参考にしてください。

質問⑤:一般的に有名な漫画のセリフを自分の記事に使うのはNGですか?

漫画『ドラえもん』に登場するジャイアンが発する「お前のものは俺のもの」のような、一般的に有名な漫画のセリフをnoteの記事やTwitterなどで使うのも本当はアウトなんでしょうか。使うたび、いちいち「引用」とつけるのも興醒めな気がしてしまいます。

山田さんの回答:まず法律的なお話から整理しておくと、基本的にはセリフには著作権はありません。ですから、使用しても著作権侵害になりません。なので基本的にその程度の短い漫画のセリフは著作権で保護されるものではなく、法律的な話でいうと自由に使ってもOK。これが原則ですね。

しかし、原則的に好きに使ってもいいけれど、あまりに自分たちの利益のためだけに使うケースがあったときに、著作者が怒るというのは当然想定されます。法律的に、著作者自身が何か主張できるかというと厳しいですが、作家が怒るような使い方をして本当にいいと思うのかという倫理上の問題と、まったく関係のない第三者が攻撃して炎上するというリスクは、ある程度あります。

なので、法律的な正解不正解の話と、そういったものを超えて炎上等のリスクが有る場合がある、というのを理解した上で使ったほうがいいのではないでしょうか。

質問⑥:著作権について学べるおすすめの書籍を教えてください。

著作権のことが知りたいです。いろんな事例が載っているような、お勧めの本があれば教えてください。

山田さんの回答:まずは、5月に出す予定の僕の本を買ってください、と宣伝しておきます(笑)。クリエイターさんに向けて、法律に関してのみならずビジネスに関することまで書いた本ですので、それを買ってください(笑)。

その上でお話しするとしたら、どこまで読んで知っておきたいかによって、おすすめする本も変わってきます。例えば、ライターさんたちに発注する側の立場で勉強したいと思っているのであれば、紙とデジタル両方の権利について書かれたものがいいと思います。

最近読んだ中でお勧めは『エンターテイメント法実務』(弘文堂)でしょうか。少し難しいですが、エンターテイメント業界において必要とされるさまざまな権利関係や法律関係の事案がとても綺麗にまとまっているのでおすすめです。

もう一冊、さきほどの質問にもあった、法律関係の契約書を作るときぜひ読んでおくといい本も紹介しておきます。『契約書作成の実務と書式 企業実務家視点の雛形とその解説 第2版』(有斐閣)。実務家向けのとても有名な本です。

登壇者紹介

しろしinc. CEO&しろし法律事務所 代表弁護士  山田 邦明やまだ くにあきさん
京都大学法科大学院を卒業後、スタートアップ向け法律事務所で弁護士として活動。知的財産や資金調達に関する契約業務などに従事。その後、株式会社アカツキにジョイン。管理部門の立ち上げ、IPO業務の主担当として、上場に貢献。岡山県に帰郷後、会社の設立、事業を大企業に売却、岡山市との連携など、地域に資する業務を中心的に行う。自身がアート/クリエイティブに救われたことから、クリエイターのパートナー事業をおこなう「しろしinc.」を設立。そして2022年1月には、クリエイターに特化した弁護士事務所「しろし法律事務所」を設立。特に好きな創作は、マンガ。
note / Twitter

※2022年5月27日発売予定の『クリエイター1年目のビジネススキル図鑑』(KADOKAWA)の創作秘話を山田さんのnoteで公開されています。くわしくは以下のマガジンをごらんください。

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text by 望月リサ



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