「私は重度訪問介護の広告塔になる」――強い思いと勇気が叶えた、鹿児島への帰省とお墓参り【後編】
まずはぜひこちらの前編をご覧ください!
「人の目が怖い」と、2年間一歩も外へ出なかった利用者様が、強い思いと勇気を持って叶えた鹿児島旅行。後編では、2日目のお墓参り以降をお届けします。
記憶をめぐる旅。ついに叶えた「お墓参り」の夢。
2日目は、窓の外に広がる桜島の景色からはじまりました。スケジュールは、お墓参り、ご実家への訪問、おみやげの購入、昼食、動物園です。
まずはお墓参りへ、利用者様の思い出深い景色のなか向かいました。お寺へ到着後、利用者様とご主人は涙ながらにお墓参りをされました。
私も、この旅の最大の目標の達成に感激しながら、利用者様の手を取り一緒に手を合わさせていただきました。
難病と闘いながら、片道1,200キロもの道のりを乗り越えてのお墓参りは、なんてすばらしい親孝行でしょうか。また、私自身も「トラベルヘルパーとして旅行支援をする」という夢を叶えた瞬間でした。
その後、現在は誰も住んでおられないご実家を訪れ、生まれ育った家をしばらく眺め、涙を流されていました。
次に、おみやげの購入です。実は、「関わっているすべてのスタッフ全員に、鹿児島のおみやげを渡したい」という利用者様の思いがありました。「かるかん」という鹿児島の銘菓を知覧茶とともにいただきました。私は人生ではじめて食べました!
昼食も、利用者様が「車内で経管栄養を注入している間にみんなに食べてほしい」とおっしゃってくださり、昔よく行かれたというお蕎麦屋さん(「そば茶屋吹上庵」様)で、イチオシの「黒豚しゃぶ蕎麦」をいただきました。これまで食べたお蕎麦の中で、一番おいしかったです!
最後に、動物園へ。たくさんの動物がいる広場をみんなで眺めましたが、実は利用者様にとって特別な場所であることが、後日判明します。
ホテルに戻り、貸切温泉に入られました。呼吸器や吸引など物理的な制約があるなかでも、地元のボランティアの方々のサポートを受けて、利用可能な物品すべてを駆使することで、入浴が叶いました。
「かけがえのない思い出」とともにご帰宅。日常へ。
3日目、往路と同様の手段で帰路につきました。ご自宅までの介護タクシーの中で流れた「サライ」の「愛の故郷への帰還」「夢を捨てない決意」という歌詞が、今回の旅行を表すようで、皆思わず涙しました。
旅行を終え帰宅したとき、利用者様は涙ながらに「これを見て」とLINEでのやり取りを見せてくださいました。そこには、玄関に置かれた赤いサンダルの写真と「無事に帰ってきたね」というご主人からのメッセージ。赤いサンダルは、今回の旅行を共にした利用者様の「相棒」です。普段は寡黙なご主人からの一言にも深く感動されていたのでした。
後日、利用者様があらためて感想を送ってくださいました。原文をそのまま掲載させていただきます。
「すべての必要な人に、必要なケアを届ける。」
私は今回の経験を通して、重度訪問介護が日常生活を支えることの重要性と、その先にある夢を叶えるお手伝いのすばらしさを再認識しました。これからも多くの人々の日常を支え、安定した環境を提供することにより一層の力を注いでいこうと心に決めました。
利用者様の「新しい夢」は内緒と言われているので、ここには書けませんが、今後もまたその夢に向かって一緒に努力していきたいと思っています。そして、もしほかの方が「旅行したい」とおっしゃったときには、胸を張って「行きましょう!」と言いたいです。