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線維筋痛症インタビューシリーズ

 中野愛美さんは、「ココダイバーシティエンターテイメント」という、障がい難病当事者専門の芸能プロダクションのレッスン生として、俳優をめざして、ボイストレーニング、トークなどのレッスンに励んでいます。時折行われるタレント投票の動画を拝見すると、痛みのひどい難病「線維筋痛症」を抱えているとは思えない愛美さんの優しい表情に癒されます。ほかにも、中学3年生でPTSDを患うという苦しみを経験しながら、愛美さんがどうして夢を諦めずに笑顔でいられるのか、お話しを聞いてみました。

―タレントを目指したきっかけと、どうやってレッスン生になったかを教えてください。
 もともと芸能界に興味があって、いろんなオーディションを受けてたんです。だけど、線維筋痛症で障害者になった時に、「あ〜もう芸能界なんて無理だ!」って諦めたんですよ。でもそんな時にココライフ女子部(現在はココダイバーシティエンターテイメントとは別会社になった女性向けのメディア部門)に出会い、タレント部ができるのを知って「チャンスだ!」って思いました。
 私みたいに夢を諦める方っていると思うんですよ。そういう方達に夢は諦めなければ叶うっていう姿を見せて勇気を与えたいとオーディションを受けました。                               ……でも、実はオーディションは最終審査で落ちたんです。その時、凄く悔しくて自分の力不足を実感しました。だから、レッスンを受けて勉強したいと思い、自分から希望してレッスン生になりました。

―線維筋痛症の発症時のことをお聞きしていいですか?
 発症は25歳の時で、仕事を辞めてフリーターをしていました。頭痛と手足移動する痛みが急に出てきて、少し様子を見てたら一気に痛みが全身に広がって痛み方も普通じゃないので、「これはおかしい」ってなりまして。それで父がいろいろ調べてくれて、「線維筋痛症っていう病気があるようだ。痛み方が似てるから病院で診てもらおう」ってことにりました。偶然にも住んでいる県内の病院に線維筋痛症科があったので、そこで診てもらいました。こんなに直ぐに辿り着けたのは運が良かったなぁと今でも思います。唯一困ったのは、予約が数ヶ月待ちだったことかな。その数ヶ月で一気に痛みも強くなったので……。

―何か発症の原因となったようなことは、思いあたりますか?
 フリーターだったころ、姉が第一子を出産して里帰りしてまして、その育児を手伝ったりしてたんです。でも、姉も初めてのことだし、お互いに分からないことばかりで……。医師からは、そのときのストレスと持病のPTSDが加わって線維筋痛症になったのではないかと言われました。                         

―発症から急激な悪化は、病名がわかっても不安でしたよね。
 初めての診察で、「これは治らないよ」って言われ、頭が真っ白になりました。「あ〜夢も諦めなくちゃだし、まだ20代だよ?何十年も付き合うなら死んだ方がマシ」と思い、両親に申し訳なくなって…「こんな娘でごめんね」って何回も思いました。
 当時付き合ってた彼氏とも線維筋痛症が原因で破局しましたし。

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リモートでレッスンを受ける愛美さん「レッスン場に通えるかが不安です」

―愛美さんが好きな役者さんや目標にしているタレントさんはいますか? 好きな役者さんは、女優の戸田恵梨香さんです。その作品の世界に入り込んだように錯覚させてくれる演技力に憧れています。
 目標は、先輩の村中智子さん(ココダイバーシティエンターテイメント所属タレント)です。すごく明るくて面倒見も良い愛されキャラの方です。何よりファンの方を楽しませる天才。尊敬してますし、目標でもあります。

―今後、どんな活動をしていきたいですか?
 日本だけではなく、いろんな国の人に私の演技を見てもらい、難病や障害で苦しんでる人の背中を押す俳優になりたいです。同時に、線維筋痛症の啓発活動にも力を入れて、「指定難病」を勝ち取りたいです!

―頑張っていきましょう!
最後になりましたが、線維筋痛症の患者さんたちへエールをお願いします。
皆さんの周りには、必ず支えてくれる仲間がいます。だから、夢がある人は怖がらず挑戦してほしいと思います!難病だから、障害者だからって、夢を諦める必要はないのです。
 人生楽しんだもん勝ち!皆さん楽しみましょう!

―愛美さんの活動はみんなの励みになっています。素敵な俳優さんになってくださいね!応援しています。ありがとうございました。

[インタビューを終えて]
 線維筋痛症は末期ガンレベルと言われる激痛を伴う難病ですが、国の「指定難病」に認定されていないため、患者の方々は充分な医療や福祉を受けられない状況にあります。女性に多い病気で、愛美さんと考え方や病状の違いはあれど、結婚や将来を不安に思うのは同じでしょう。
 愛美さんはこの病気の啓発のためになればと、質問に一つ一つ丁寧に答えてくださいました。わたしは彼女の柔らかな印象の中に、気遣いのできる聡明さと、芯のある強さを感じました。そしてこのインタビューの後、見事オーディションに合格され、レッスン生から研修生となり、所属タレントまであと一歩というところまで夢に近づいたとの知らせを聞いた時は本当に感動しました。
 困難な状況にあっても、不安に沈みこむのではなく、諦めなければ夢は叶うという希望をわたしたちに与えてくれる愛美さんの活躍を心から願います。


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