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APO-LANTHAR 50mm F2 VMを迎え入れてしまったと思ったら、ズミクロンに化けるかも知れない話

 それは年度替わりの忙しい折、それでもこれまでより気持ちの上では余裕のある日々だった。
 Instagramのストーリーズに、フォローしている方、というか写真仲間が、こんなことを書いていた。

意訳
 もう年もそこそこいったから、カメラの断捨離を行いたい。

 おいおい、と思った。
 数年前、突然入院されたことがあって、どうやら持病があるらしい。もしやそれが…、などと思ってメールをしてみた。

 あ、あのう、アポランターとかも放出ですか?(意訳)

 おい、体調心配しているんじゃないのかい?

 すると、こう返ってきた。

ライカに
集約、
しかしQ3
アポランター 50mm いかが?

 ある意味、病でした。

 でも、本当のところを言えば、どうしたんですか、急に、どこかお悪いのですか、と聞きたくとも聞けなかったわけで、それがアポランターどうですか?という質問に変換された、なんて誰も信じてくれないだろう。
 アポランター、欲しいなとは思っていたが、つい先日ズミルックス75mmを手に入れたばかりだったから、そうそう出費を続けるわけにはいかない。

 だが、口をついて出たからにはもう後には引けない状態。
 半ば本心、半ば逃げの口上で、いやいや、しかしQ3、しかし、って言うのなら、絶対m型欲しくなりますよ、と言ってみたりしつつ、しかし結局そこそこの安値で引き受けることにした。
 昨日調べてみたら、アポランター、少し以前より中古相場が下がっているようで、ちょうどそのくらいだった。今なら中古夜市のマップカメラの方が安い。以前だと同じくらい。お得感はあまりないが、使用していた人を知っていると言うのは安心感がある。ワンオーナーだし。それに彼があまりこのレンズを使っていないのも知っていたのでかなり状態はいいはずだ。

 さて、アポランターだが、実にこれはビシッと写る。しかしなんだろう、キレッキレというわけではない。柔らかさもある。
 だが他のレンズでの写真を拡大するとモヤっとする段階で、まだこのレンズはピシッとした描写をする。
 これはすごいな、と思いつつ、そういやシグマのアートはこんなレンズだったな、と思い出す。

 シグマが35mmを新規軸で発売したとき、そのコンセプトに惚れて、発売と同時に購入した。程度の良くないフィルターをかますと明らかに画質が低下しているのが分かるくらい、すごい描写だった。
 ただ、35mmはあまり使うシーンを見つけられなくて、そうしているうちにx100の方が街撮影に取り回しがよく、ちょっと不遇な存在でもあった。
 描写はキレキレ。だが目が痛いほどではなかったと思う。それでもある距離から撮った写真は立体感を感じるように撮れて面白い。

 アポランターも、F2という開放F値ながらも、どこかの距離感で、立体感を感じる写りをする。ズミルックス75mmやスピードマスター50mm f0.95のようなとにかく明るい安村…じゃなかった(彼、すごいですね。日本の裸芸で英国を沸き立たせましたね。)明るいレンズで被写体と背景を分離するのではなく、背景と被写体の境界の分離の在り方がちょっと違っていて、それで被写体が浮き上がってくる、そんな感じだろうか。撮っていて、お? と思う瞬間に出会うと、こりゃいいね、とニンマリしてしまう。

 さて、このアポランター、比較対象はライカ純正のアポズミクロンだと思うのだが、これを比較しようものなら、相当の出費を覚悟してしないといけない。
 それはできないので、ネットにある比較記事や動画を参考にするわけだが、どちらも描写としては素晴らしいと評されている。僅かにアポズミクロンかな、という結論に至るものが多いがそれで10倍の価格差があるのなら、流石に手は出せないかな、と考えてしまう。

 とはいえ、つい気絶してズミルックス75mmを手に入れた身としては、あれだけは近づかないようにしないとまずそうだ。
 それまで、僕は滲みのある描写が好きなのさ、と言っていたのに、こんな上善如水なレンズをうっかり手に入れてニンマリしちゃうんだから。近づいたらまた気絶しちゃう。今回は向こうから近づいてきたので、どうしようも抗えなかったけれど。

 さて、この記事をだらだら下書きにつぐ下書きをしながら2週間も費やしているうちに、くだんの機材を売っぱらった方は、Q3が出たら買う、と言いつつ、周囲に唆されてどうもM10Rをお買い上げなすったようだ。
かなり格安で手に入れたらしい。
 レンズはアポランター35mmをまだ持っているそうなので、それをしばらく使うとは言うものの、もしかするとこのレンズは返却することになるかもしれない。
 それはそれでまあ仕方ないかな、と思っているが、怖いのは、M10Rがあまり気に入らずに手放すなんてことになったら、真っ先に僕のところに声がかかるかも知らないと言うことだ。やめてくれよ。やめてくれよ。と言いつつ、その時はどうしようなんて考えているところが機材をバカの極みだなと、自分で自分が情けなくなってしまうのだった。

そんなわけで、アポランターで撮った写真をいくつかあげておこうと思う。

この浮き出る感じはF2でどうして出てくるのか。
立体感。
2000万画素程度ではアポランターの力を発揮できないかも。
手前の植物にピント。


ヘリアークラシックを比較で使ってみた。

同じ被写体で。

ヘリアークラシック。ハイライトが滲む。
アポランター。くっきり。どこまでも明確。




 そんなことを書いては消してを繰り返しているうちに、やっぱりきた。アポランター返却要請。
 そりゃあね。そうなるよね。
 先日、実機を見せてもらった際に、撮り比べてみたのだけれどカメラ側の液晶のせいか、いや、そもそものカメラの性能のせいなのか、僕のtyp240の液晶で最大に拡大すると流石にボヤける。最初それは、それがレンズの性能由来なのだろうと考えていた。それでも他のレンズよりはくっきりだしそれはそれでも素晴らしいと思っていた。
 ところがM10-Rだと、こいつが最大まで拡大してもくっきりしているのだ。液晶の問題か? いや、きっと画素数のせいなのでは?と考える。2千万程度の画素数ではアポランターを通ってきた光は処理できないのではないか。
そんなことがあるかどうか分からないし、単純に時代が違うから、カメラの電子的制御の問題かもしれない。M10-Rのポテンシャルを垣間見た。それから何よりシャッター音。この意識していないと聞こえないくらいの小さな音でコトリ、と切れる。これはスナップシューターとしては最大の特徴になる。

 薄くなったボディ(M3と比べると高さはまだ3ミリほど高い。)
 静かすぎるくらいのシャッター音、
 M typ240よりも使えるISO感度設定。
 感度設定ノブ。

 あと正面にMって型番が書いてない(笑)

 それだけでも充分魅力的で欲しくなる。いかん。

 目を背ける。


 そんな折にズミクロンを譲ってもいいよ、という話をいただく。2nd、以前狙っていたやつだ。
 50mm、ライカ、この組み合わせは良くない。CanonもFUJIFILMも、画角同じものは一つで良かったのに、そうさせてくれない。
 前はあんなに同じ画角を何本も持つなんて、と冷ややかに見ていたのに、なるほどこれが沼か…。


 でもこうなったらとことん考える。どこまでもくっきりなアポランターにするか、オールドの味も感じられるズミクロンにするか。多分これでライカのレンズ構成はとりあえず完成する。無理しちゃうが、あとはぎゅっとお財布の紐を結びたい。

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