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フィルムシミュレーションについて思うこと

フジフィルムのカメラには、フィルムシミュレーションがついている。
フィルムを変えるように、撮った写真の色味を変える機能だ。
X100が出たとき、その独自のファインダーに加え、この機能が話題となった。
実際はコンデジのころからついている機能らしいが、X100の登場のおかげでフジの目玉となる機能になった。
それ以来、X-T5には19のフィルムシミュレーションがついたそうだ。
こうなると、もう、どれを使うか分からない状態になる。自分の撮りたい絵がしっかりなければ迷いに迷うだろう。だが、それもまた楽しい。

フィルムシミュレーションのなかで、大きな変革があったのは、クラシッククロームだと思う。このシミュレーションが出たとき、それが搭載されたX100Tを比較的すぐに手に入れた。僕が欲しかったのはこれなんだよ!と興奮すらした。はたして実際に撮ってみて、もうスナップではこればかりを使った。自身でコントラストなどを調整できるのも良かった。
それからクラシックネガだろうか。これもまた大人気のシミュレーションだと聞く。クラシッククロームより渋めではないが、実にいい色だと思う。渋めの色合いが好きな自分にとっては、使ってみたいものだ。

ところで、フジフイルムの特徴の一つに、このフィルムシミュレーションを挙げる人が多い。特徴というよりむしろアイデンティティのようなポジションにあるとすら感じる。だが、ふと他メーカーを見てみると、オリンパスのアートフィルターなんかは、色味を変更できる機能の走りだし、これで人気を博した。ペンタックスにも同様の機能があるし、cannonのピクチャースタイルもなかなかいい機能だと思う。自分で色を作ることもできる、というのがいい。おそらくこのような機能はほとんどのメーカーで用意されているはずだ。

だが、フジフイルムのそれと比べて、この機能がわが社のカメラのアイデンティティだ!とまでは言えなさそうだ。それはなぜか、と考えると、以下のような理由が考えられる。

ひとつに、フィルムメーカーが作った色だ、ということ。
ひとつに、色の細かな調整ができる、ということ。
ひとつに、バリエーションに富んだ選択ができる、ということ。

一つ目は、フジフイルムが作った色だから、そりゃあいいに決まっている、という印象がある、ということだ。おまけに既存のフィルムの名前をつけることもできるし、そうでなくても、プリントされた写真の色味を再現する、という前提があるので、フィルムを交換するかのように、設定を変更できるのは、なかなかに面白い。フィルムメーカーが作った色、それも、それを再現するのはけっこう難しいとなれば、この機能のためにカメラを買ってしまいたくなる人がいるのは当然のことかもしれない。

二つ目については、アートフィルターに対しての利点になると思うが、自身でもうちょっと色味を、というときの変更がきく、ということ。これはやはり大きな魅力だと思う。僕はX100のころ、アスティアの色を最低に、コントラストはしっかり挙げて、という調整をしていた。すると金属が、ものすごく鈍く輝いてかっこよかった。人を撮ると、黒がつぶれやすかったが、意外と肌の色も悪くない。けっこう気に入った設定だった。このように、お仕着せになりがちな色設定を、自分の感覚で変えていける、これはカメラのなかで、暗室作業をしているような感覚にもなる。撮って出しで自分の色が出せる。

三つ目に、19のシミュレーション、どれを選んだらいいか分からないくらいの豊富さ、ということ。そのなかに鮮やかなもの、渋めのもの、コントラスト強めのもの、といろんな色がある。以前、カメラメーカーは、そのようなフィルターを嫌う傾向がある、それは、センサーやエンジンによって生み出される色をないがしろにしてしまうからだ、そんな話を聞いたことがあった。もしそういうことがあるのなら、その辺を飛び越えられたのはやはりフィルムメーカーゆえんのことだと思う。

僕のように自分で現像して調整をしない人にとって、フジフイルムのカメラは自由な色設定を赦してくれる、とてもいい機能だ。さすがに多すぎて、設定を追い込めないところもあるが、だからこそフジのカメラは飽きない。

とはいえ、ちょっとこれ、なんとかしてくれたらなあ、と思うこともある。

cannonのピクチャースタイルのように、ネット上でダウンロードすれば、どのカメラでの使える、という仕組みになっていないことだ。ノスタルジックネガを使いたいなら、中判を買え、という時期があった。フィルムシミュレーションのためにカメラなんか買えない、それなら自分で現像する、という考えがあっても然るべきだと思う。再現は難しいかもしれないが、写真をやる人にとって、大事なのはフィルムシミュレーションを再現することではなく、自分のいいなと思う色を作ることのはずだから。
とはいえ、エンジンの関係もあるから、なかなか難しいのだろうけど、ある程度同じ世代のものであるなら、後付けでもファームアップで搭載できるような柔軟性はあってほしいな、と思う。
フジのカメラの特徴ゆえに、過去の機種にも搭載するのは、買い替え促進にも支障があるとは思うけれど、でも、そんな太っ腹なことをしてくれたなら、僕は大喜びである。

さて、新型の中判で、新しいフィルムシミュレーションが出るとの噂が立っている。リアラらしい。一度使ったことがあるが、本当に一度だけなので、記憶に乏しい。かろうじて覚えているのは、透き通った鮮やかさ、という感じだろうか。超微粒子、忠実な色再現とあるので、鮮やかさは記憶として正しいかどうか怪しいが、透き通った、は的を射ているのかもしれない。なんにしても、リバーサルでなくてネガでこれが?!と感じたことは確かだ。

ぼくは渋めの色を好むので、まあ、搭載されなくてもいいか、とは考えているが、でもできることならファームウェアで搭載してもらいたい。次の機種から、なんてことは言わないでさ。供給不足が続く今、FUJIFILMやるじゃんっ!と叫ぶ日を待ちたい。

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