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各レンズの焦点距離を武器に例える

 ふと思ったもので。
 武器に例えるのは、ちょっときな臭いですが、要は被写体との距離感の話だと考えていただけたらと思います。

前提としての「無限の住人」

 単焦点レンズで比較をしています。それも基本ぼくが使ったことがある焦点距離です。ただ望遠や超広角はズームレンズです。また、フルサイズ換算です。

 たとえとして出すのは、江戸時代までの日本の武器です。最初は現代のそれも例えに出していたのですが、やはりきな臭いので。

 となるとふと思い出すのが、『アフタヌーン』掲載の『無限の住人』です。超絶な絵に加えて、どれだけ切られても突かれても切り離されても死なない侍が活躍する漫画です。万人におすすめはしませんが、とにかくね、出てくる出てくる珍妙な武器たち。
 それで敵倒せるの?
 そんなん振り回せるの?
 どこに普段しまっていたの?
 それ、野球のバット? 君は高校球児?
 それで三味線音鳴るの?
 ノコギリなの? 大工なの? 変態なの?
 まだ仕込み刃あったの? それ折れないの?
 (読者なら、なんとなく分かるはず)

 ストーリーは全体としては、あとから振り返れば見事にまとめたなあという感もありますが、一つのエピソードがとにかくすごいし、アクションシーンは圧巻です。アクションじゃなくても、はらはらさせる迫真の表現もあったりして(8巻あたりね)、とにかく見事な漫画です。
 ちなみに全体的なストーリーが見事にまとまっている漫画は「うしおととら」だと思うのですが、こちらも色んな武器が出てきます。こちらは絵柄さえ許せば万人にオススメだし、息子に読ませたい作品です。

 まあ、とにかく出てくる武器のユニークさ。この記事を書いている最中、もう、焦点距離別むげにんの武器、みたいなものにしてしまおうかと思ったくらいです。

 とはいえ流石にあまりに分かりづらい内容になってしまいますから、ここは無難にやっていきたいと思います。

焦点距離=武器、の分類

400mm超=火縄銃

X-pro2 tamron18-300
5D2 sigma100-400

 言わずもがな。遠距離を狙う。昔見た歴史漫画で火縄銃を使って交代しつつ遠方を狙い、近づいてきたら弓矢を使い、さらに近づいてきたら長い槍を使うという戦法に子どもながらになるほどと思ったものだった。
 学生のころに行きつけだった山形料理のお店のマスターは、若き頃ライフル射撃の選手で、今(当時)は年に一度海外に出て写真を撮りに行く人だった。通じるものがやはりあるのだ。

200mm=弓矢

6D 70-200
6D 70-200

 200mmは遠方を引き寄せて撮るというよりは、表現の選択として選ぶレンズだと思う。だからポートレートにもよく使われる焦点距離なのだろう。まさに天使の持つあのハートマークの矢尻のような。
 ただし、それで相手を射抜くつもりだろうが、射抜かれるのはたいていこちら側である。

135mm=槍

X-T5 xf90mm
X-T5 xf90mm

 弓と比べればまあ確かに接近戦だが、つまりスナップにも使えるが、刀ほど近接ではない。懐に入られるともうダメ。xf90みたいに60センチまで撮れるものもあるが。
 ちなみに薙刀とか槍とかは、技量的に刀で戦う人の3倍は有利だと聞いた(るろうに剣心情報)
 あと、再度書くが獣の槍という武器が出てくる『うしおととら』は子どもに見せたい漫画だ。トンネルって嫌だよなあ。でも、いつかは抜けるんだぜ。

85mm 90mm=ピストル

6d シグマ85mm
5D2 シグマ85mm

槍と逆じゃないの?と思うが、ピストルは近距離にこそその力を発揮すると聞いたことがある(多分シティハンター情報笑)それにこのくらいの焦点距離は薙刀や槍の距離感よりは短い気がする。いや、多分槍の届く範囲ならピストルも余裕で当たるだろうけど、こちらをピストルにしたのは、ワケがある。後述する。

江戸時代までの武器ということでピストルはどうなのよ、という話だが、坂本竜馬はこれで九死に一生を得ているし、無限の住人ではピストル型の火縄銃をいくつも持って連射するキャラがいた。重くないの?

50mm=打刀

6d ef50mm L
6D ef50mm L

名刀には名前がある。
陸奥守吉行とか菊一文字とか、虎徹とか(一発変換できた、すげえ)。
刀の名前のチョイスが幕末オンリーなのは察してください。
名レンズにも名前があって、ズミなんたらとかノクなんたら、とか。その辺も似ている。
小回りもきくし、汎用性もあるし、距離感としてもそんな感じだ。

ちなみに太刀と打刀は違うそうだ。太刀は標準的にも使える中望遠75mmあたりな気がしている。

35mm=小太刀

X100F
X100F

これを書くために脇差と小太刀の違いを調べてみたが、なるほどそういうことか、ならばここは脇差ではなく小太刀だな、とあいなった。
脇差も小太刀も実質的には違いはなさそうだが、時代と、その刀をサブとするかメインとするかで分けられているようだ。
35mmは狭い場所でも振り回せてとても小回りのきく小太刀の用途と似ているように思う。

28mm=懐刀

X-T5 xf18mm
X-T5 xf18mm

お姫様が追い詰められたときに懐から出すアレだ。当然これで打刀に向かっても負けるだけ。これで戦うには身のこなしとかが重要になる。いわんやスナップをや。(使い方が違うな…)28mmは35mmと同じくスナップに良いとされる焦点距離だが、個人的は被写体の間合に入り込む画角となるので、とても難しいと感じている。
ただスマホで慣らされた焦点距離でもあるし、スマホに搭載されているから、ちょっと気になってものをパッと撮るところも懐刀の存在と通ずるところがあるように思う。

21mm=クナイ

X-pro2 xf14mm
X-pro2 xf14mm

これで相手を瞬殺できるのであろうか。
でも、これで瞬殺できるのであれば、それは相当な手練である。
21mmはそんな印象だ。ぐっと対象に近づかないと、散漫な絵になる。その点では35mmも28mmもだが、そんな度胸も力量もない自分は、このパースを活かして、あおって撮るのが関の山、となりがちなところも、21mmの難しいところだ。

16mm以下(魚眼)=斧

トキナー10-17mm
シグマ12-24mm

ここまで広角だと、もはやそれは威力抜群の武器になる。それを例えるとしたら、斧かと。広い画角で目の前にある風景をぐわっと切り取る、そんな力は、斧の破壊力に通じるのではなかろうか。ちなみに無限の住人の中には斧で防御する刀ごと相手を叩き潰すシーンがあるが、まさにそれだ。

『無限の住人』の最強戦士の武器がね、ありえない。

 と、また漫画の話に戻るのですが、この漫画内最強の戦士(侍ではない)
が、乙橘槇絵です。おそらくNo.1か2でしょうが、もう一人はあまりにサブキャラなので、その実態はわかりませんので、現実としてはナンバー1でいいでしょう。
 華奢で、すらりとして、絶世の美女で、色気が凄い。(さすが多摩美出身、画力が半端ない)そして、陰のある女性。たぶんとんでもない拗らせキャラですが、子供の頃に野犬の群れをかるく切り倒し、返り血ひとつ浴びず、その強さはあっぱれものです。


 その彼女が持つ武器が、長めの三節棍のようなものの両端に長刀みたいな刃物がついたもので、どうみたって、その細腕では扱えそうにないのに、それをどんな場所でも見事に振り回すのです。不利なはずの狭いところでも、見事に使いこなす。
 得てして長モノは、懐中に入られたら終わりなはずですが、そこはエモノを上手に使い、膝蹴りを喰らわし、反則級の強さを見せつけます。懐に入った、もらったゼ!と意気込む敵が、逆にその色香あふるる膝蹴りをもらう、という、なんとも羨ま…ではなく、絶望的なまでの強さ。彼女も、主人公からしたら敵なのですが、彼女が登場するときは敵の敵は味方状態の時が多いので、いよっ!待ってました!となります。

武器に例えた訳として

 さて、今回焦点距離を武器に例えたのは、まさにこの乙橘槇絵の持つような長モノの武器にあります。すなわち135mmです。
 先日、兄から借りたXF90mm。とっても良いレンズなのですが、これを付けて実家から畑を散歩していたとき、兄の子、うちの子らと歩いていると、その影がビニールハウスに映って、とっても雰囲気が良かったのです。あ、これいい雰囲気!とファインダーを覗いて、うわッと思いました。あまりに寄りすぎているのです。自分が一歩か二歩引けば良い構図になる、ということもできないくらいに。違うよ。僕が欲しかったのはこのキリトリじゃない、と慌てましたが、子どもたちの影はそうこうしているうちにビニールハウスを過ぎて行ってしまいました。まさに懐に入られたらおしまい状態だったのです。
 その時カメラ一台だったので、カメラを替えてということは出来ず、また替えのレンズも、持っていなかったのですが、咄嗟のときにレンズ交換もできなかろうし、135mmというのは、まさに懐に入られたら終わりな焦点距離なんだなと改めて思った次第でした。

 それなのに、乙橘槇絵はそこを柔軟に対処する。そしてとにかく強い。まるでそれはF値の明るい広いレンジを持ったズームレンズのごときです。そういやCanonからそんなレンズが登場しましたね。24-105f2.8 最強じゃないですか。
 しかし乙橘槇絵はそこに、さらに素早さも有しています。そんな軽くて取り回しのいいレンズはなかなか出てこないでしょう。無双です。無双。

無双はできない。だからカメラ二台。

 だから単焦点レンズをつけて撮ろうとすると、ついカメラ二台を持ち歩きたくなるのでしょう。もちろん前回の記事のように、標準としての一本で歩けば、多少の前後移動で済む話かもしれません。けれども、135mmなど、自分の標準レンズの域に入りにくいものを使うとなったら、やはりそれを補うものは必要な訳です。言うたら乙橘槇絵は、24-105f2ではなく、135mm f2をつけたカメラがデジタルズームもするし、何故か広角側にもデジタルズームアウトしてくれて、その上で絞りは35mmf1.4のそれになる、みたいなものです。もはやチートです。
 我々はそんなカメラを持たないので、ならばと使いやすい焦点距離のレンズを別に持たねばなりません。そしてたとえばそれは、僕なら槍に合わせて持つとすれば打刀、あるいは懐刀と合わせるならそれも打刀がいいわけで、人によっては打刀と脇差(小太刀)の大小がいいとなり、クナイに槍という人もいるだろうし、ピストルと小太刀とか、弓と打刀がいいとかなるわけです。

重い…
瀬戸内の旅は三台体制だった。
換算50mmレンズばかりの図

ただ毎回本気で撮るわけじゃないんだからさ

 とはいえ、本気で撮影するっていうのならカメラ二台あってもいいのですが、登城するだけなのに、毎回長モノと打刀を、弓と小太刀をとそんな大袈裟な装備で出るわけにはいきません。侍の基本は大小を腰にさしますが、私たちは侍ではないわけで、そこは一本で気楽に出歩くのもいいものです。その時使いやすいのは打刀や小太刀、さらに気楽にっていうなら懐刀でしょうが、そこをクナイにしたり、槍にしても、まあ、違和感はあっても問題ないでしょう。それで被写体を取り逃がしてもしょうがない。ただ、そのエモノだからこそ撮れる写真がある。そうは思っています。

 どんな手練れでも、広角レンズで遠くの鳥は撮れないし、超望遠で街中スナップ近接戦はできません。そこには的確なレンズ選びが必要です。ただそれはそんなに難しい話じゃないでしょう。懐に入られたらどうするか? 間合いの外のものをどうするか? 写真を撮りに出かけるときにそんなエモノ選びをすることもまた、楽しみの一つだ、ということも申し添えておきたいと思います。色香あふるる御御足、もとい、強力な膝蹴りなんざ持てない自分への、つまりはカメラを複数持ってしまう自分への言い訳ってわけです。




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