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「脱ドル化」と平和な社会へ KENさんの週刊国際経済解説 令和5年8月29日号


BRICS第15回サミットについて


 8月22日から24日にかけて、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで第15回BRICSサミットが開催された。界隈では8月22日からすべてが変わる!ということが言われていて、「8月22日」という日付が象徴的な意味を持つかの観を呈していたが、まさにこのサミットは経済史に残り語り継がれるイベントとなるであろう。しかし今のところそういう感じはない。

 界隈では、このサミット上でBRICSが共通通貨を発表して、いま進展している脱ドル化の決定的な瞬間が訪れる、というストーリーが語られていた。実際にはまだ共通通貨は発表されておらず、ドルは崩壊していない。ではサミットには意味がなかったのか?そんなことはない。前述のとおり間違いなく歴史に残る出来事になったのだが、そのことを理解するためにはいまドルが崩壊するとか株価がどうなっているとか、そういうわかりやすい指標の変化よりも深く歴史的な経緯を知らなければならない。そういうことを知らない人でもわかるような、映画的な決定的な出来事はきっと起こらない。覇権の委譲、世界経済構造の転換はもっとわかりにくい、歴史や経済を知らないとわからないように起こっている。

 そもそも日本のマスコミでは、ヨハネスブルグでサミットが行われていることすらほとんど報じられていない。試しに「ヨハネスブルグ」で検索してみると、Arab Newsと中国のニュースサイトである人民網の日本語版だけが、BRICSサミットの開催について報じた記事を配信している。それ以外はヨハネスブルグで爆発事故があったとか、いかにも治安の悪さを演出するかのごとき記事しか出てこなかった。ブルームバーグの英語版ではさすがに取り上げられていたが、アルゼンチンの大統領候補者がBRICSを批判したとか、南アフリカの財務大臣がBRICSでは共通通貨の話なんかなかった、というように、わかりやすいストーリーが起こらなかったことを強調するような記事が出ている。別に共通通貨なんかなくても世界経済構造の転換は進んでいるが、それがわかるためにはそもそもドルの基軸通貨性とは何なのかが分からなくてはならない。今回の記事は、これから毎週火曜日に配信していく予定の「KENさんの週刊国際経済解説」の第一回目として、経済学部を出ていなくとも世界経済の構造がわかるような解説を行っていく。

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