見出し画像

オランダ語をやっておけばよかった。勉強しませんか?

 前回の記事で「もう記事なんて書かない」と宣言したあと、SNSを始めインターネットに触れないようにしていた。スマホを持ち歩かないで散歩するようにしてみたり、パソコンを書斎でのみ触るようにして寝室や居間ではネットをやらないようにしてみたり、重度のネット依存に対する自家療法を実践していたのである。進化論と認知科学の知見を組み合わせた認知行動療法は著効して、わずか数日で私は精神の安定と明晰な思考を取り戻した。

 ところが、その間にもSKのD作の死亡が発表されたり、ライシ師がサウジに訪問したりして、日本の戦後社会や世界の近代が大きく転換しているにも関わらず、市井の庶民は相変わらず「ちゃんと貯金しなきゃ」とか「老後が不安だ」とか抜かしている。あまつさえ私に対してNISAやiDecoを勧めてきたりする。「置き配と闘う」の記事でも書いたが、最近の私はこれまで世の中や他人から受けてきた仕打ちに対して沈黙を破って反抗・反撃するようになっている。その流れで一般人が愚かしいほどに金融に関して無知・無学・不勉強・バカであることに対しても闘争を仕掛けたのだが、この際に攻撃の支障となったのが具体的な事実関係のストックの不足であった。私はもはや身体感覚として体制の提供するものに対して懐疑を抱いているのだが、世の中にはそうではない人がほとんどである。事実や知識、なんらかの科学的な命題に対してもクオリアのようなものがあって、主観に対する認知の表れは個々人によってものすごく差があるというふうに私は考えているが、世界の金融システムに関する話題ではとくに一般的な感覚と差がありすぎるようである。

 それでも私は自分の感覚を説明するために世界で起こっている金融の事実をベースにしようと思ったのだが、ネットをあまり見ていないとその事実関係のストックが希薄になって、話に説得力が増さないのである。これは相手を説得できるかどうかということよりも、私自身が自分なりに説得力のある話をして満足できるかどうかという、主観的な経験に関わっていることなので、論争の勝敗にはある意味でどうでもいいことであるのだが、とにかくその武装の一環として、考えや見通しを補強する事実関係や記事などはちゃんとまとめてブログ(このnote)に保存しておき、必要に応じて参照できるようにしておくことが必要であると強く実感するに至ったのである。

 さて、今回の記事のタイトルは「オランダ語をやっておけばよかった」である。実は数日前から、コモディティ・トレーダーの界隈ではオランダの中央銀行が金本位制への準備を認めた、ということが話題になっていた。

Dutch Central Bank Admits It Has Prepared for a New Gold Standard

“If there is a financial crisis the gold price will skyrocket, and official gold reserves can be used to underpin a new gold standard, according to the central bank.”

https://twitter.com/JanGold_/status/1725813530232869034

 この記事はなんとなく流し読みしていたのだが、よくよく考えてみるとインタビューされている「オランダの中央銀行」の情報源がよくわからず、Google検索してみてもこの記事を引用した別の記事しか出てこない。ソースとして引用されているHet Financieele Dagbladのリンクをクリックしても、そのインタビューそのもののページにたどり着けず、オランダ語はよくわからないのでそのままにしていた。

 ところが今日になってゼロヘッジでも引用され始めたので、いちおう情報源をちゃんと照会しておくことにした。最近はちゃんとしたソースがないのに、複数のブログで自己参照が繰り返されることによってバイラルになっているかのように見せかける手口も横行しているので、少し慎重に調べたほうが良いのである。

 調べるともともとのポッドキャストのページは以下である。ポッドキャストページの説明書き(オランダ語)をGoogle翻訳したものを以下に付しておく。

『付加価値』では、ジャーナリストのアンナ・ダイクマンが経済学者と協力して経済の背後にある物語を探ります。

付加価値のこのエピソードはオランダの金についてです。何世紀にもわたって地球上で最も人気のある貴金属。しかし、私たちが長い間金貨で支払っていない今、私たちの経済における金の役割は何でしょうか?それは信頼という強固な拠り所でしょうか、それとも主に固まった恐怖の汗でしょうか?

この件については、オランダ銀行(DNB)の金融市場ディレクターであるエコノミスト、アールト・フーベン氏に話を聞きます。彼は私たちを、かつて何千もの金の延べ棒が保管されていた古い金の保管庫に連れて行きました。また、オランダがどのようにして金埋蔵量を獲得したのか、そしてなぜ貴金属が依然として本質的な価値を持っているのかについても説明します。

経済学者でジャーナリストのマタイス・ボウマン氏は異なる考えを持っています。同氏は、中央銀行の金政策が時代遅れである理由と、考えられる代替策は何かについて説明しています。

Lees het volledige artikel: https://fd.nl/economie/1491342/toegevoegde-waarde-waarom-ligt-er-nog-goud-bij-de-nederlandsche-bank

https://fd.nl/economie/1491342/toegevoegde-waarde-waarom-ligt-er-nog-goud-bij-de-nederlandsche-bank

 これを読むと、どうやらオランダの中央銀行が金本位制を準備しているという話もまったくのデマではないらしいことが推察される。しかし本編のインタビューはオランダ語である。私の耳には英語ともドイツ語ともつかない微妙な言語に聞こえるので苦手である。Het Financieele DagbladのDagbladはドイツ語のTagesblattなんだろうと何となく推定できるが、同じような単語でも全然別の意味になることもあるのでドイツ語の知識が却って邪魔になる。たとえば英語のlandは土地だが、ドイツ語のLandは国の意味もあるというようなものである。

 しかし歴史を振り返れば覇権国のはしりはスペイン・オランダであって、国際法の父グロチウスもオランダ出身の人間である(『戦争と平和の法』はラテン語で書かれたが)。いまからスペイン語やオランダ語を勉強するのも、覇権国家を考察するうえでは役に立つだろう。私はフランス語とドイツ語が邪魔なのでできません。誰か興味があったら勉強してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?