【詩】灰の降る夜に
くちのない物質に口付けをする日々には憂いが後光のように刺す
煙草の遺灰が鈍色の塔を築いていく
澱みの中で揺らいでいく脆い自意識が
あ、
すべて
まっさらにして
終わりたい
と
唇から漏れた独白が粉々の硝子のような灰になって降り注ぐ私たちの住む墓地のような街に
傘など無い
歩く
サラリーマンたちは傘を差す
が
私には無い
ああ
と漏れたため息は雑踏にざりざりと掻き消され潰れて色を失う
喪に服そう
喪に服そう
喪に服そう
この街でまた
葬列、葬列
灰が積もりつつある道路を往く足取りはひたひたとしずかに
漏れだしたオイルのようにしたたる悲哀
孤独すら温かく根差したこころに刺さるものはない
蘇生を繰り返す精神の皮膜は柔らかく
生きる意志から遠ざかる
すべてたわごとだったよと慰めてくれないか
現実と名付けられた悪性腫瘍に呑まれる前に
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