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【詩】宵のゆりかご

ゆりかごのなかで眠れる静謐
あなたは
永遠とも呼べる宵と寄り添って
微笑みをそっと投げかけていた
ずっと幼子でいたいだろう
今や
恐るべき大人たちの影に埋没し
夢魔の差し出した無花果によって
楽園を追われてた群衆のなかで
あなたはまだゆりかごを出ずにいる
無機質たる孤独の輪郭に指先はあてがわれ
無言の赴く儘に甘やかな呼吸を繰り返す
繰り返す
夜が底をつくまで眠る
やわらかく被さるパイル地のうえに
星座を描く
星々になっていく
星々になっていく
やがてそれは灯火になる
モラトリアムを照らす優しさになる
今夜はまだ
ともにゆりかごを出ずにいよう

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