ファミリア・ファイアリング・ファミリィ
ペネンタには姉が八人、妹が一人いる。各国の要人である姉たちと連絡を取っているが、今回は通信網にハッカーが紛れ込んだ。
「"###88-@」
処分はすぐだろう。その日の夜、自室に戻った彼女の前に男がいた。男は銃口を向けられても動じない。
「取引しよう。俺は悪を暴いた栄誉と賞が欲しい。お前は妹を助け、姉の不正を暴け。お前の姉らは共謀してアニラを殺そうとしている」
ペネンタの眉が動いた。妹――アニラは他人の世話好きで、パン屋を切り盛りしたいと言う。姉のチカやツバサにはそれが気に食わない。先日も大喧嘩したばかりだ。
「だからって殺す?」
「妹さんはギャングや崩れにパンを与えている。単なる福祉のつもりだろうが、姉からすれば取引に等しく、家の名を汚す」
「失せろ」
「犯行はモンデール中央通り。午後九時以降。さっきのハックで特定できたのはそこまでだ」
撃つかどうか迷う。ペネンタは毒づくと部屋を出た。走る。
【続く】
頂いたサポートは本の購入・取材・他記事サポートに使用します。