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芸能殺手! アラタメさん

 ガガGは少年の舞いを見る。刀演舞である。少年の服は地球産らしい作務衣だが、刀は銘刀だ。ガガGは録画モニターを確認しつつ少年から目を離さない。
「確か、そのスタイルは」
「検流(あらためりゅう)です」
 ガガGは演舞を見やる。いかにも戦いを想定した舞いだ。横薙ぎに相手を斬ると返す刀で反対を突き、足も戻して蹴り上げる。体勢を直して小手を打ちながら二連撃。奥の敵を突き伏せる。
 少年がガガGの事務所へやってきたのは十分前。銀河知性八十億が住まうセクターファイブといえど、殺手を売り出すのはここだけだ。体躯に似合わぬ刀はガガGの注意を引いた。
 五分間の芸当だが引き込まれた。終いに居合抜きを打った少年は、敵の首を刎ねて残心し、一礼した。
「じゃ、俺を雇うんだな?」少年の口調が変わったが、最初からこうだ。彼の礼は抜いている最中に宿る。「地球換算で百兆ドル稼ぎたい。ここならゴロゴロあるだろ」
「確かにVIPサービスはあるよ。じゃ、契約書」ガガGの書類に少年はサインする。が、見直していると顔が強張った。
「なんだこの、芸能プロダクションって!」
「知らなかったのか。ウチの表稼業は芸能だぞ。あの白竜にポヤ星人もウチから出た」
「そうじゃない! 俺は戦いたいんだ! 踊りたいわけじゃない!」
「踊りでも剣でも、カネはカネだろう。いいか坊主。お前の剣術はよく承知したが、お前の体は芸能向けだ」
「だからって、こんな……」顔色を失う少年にガガGは嘆息し、モニターで映像を呼び出した。羽が生えた少女たちが踊るが、客席にいるのは十五メートルを超えた巨人や生体建築物である。
「お前の剣は対人としては優秀だ。だが対巨人や建物ではない。ウチの裏稼業の相手も、それだ。アイドルとして売り出しながら、殺す方法を考えて、モノにしろ。それに芸能姿なら、客のガードはゼロだ。一ヶ月後、セクターフォアで穴埋め公演がある。取り分は十万ドル」

【続く】

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