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デザート・ネクロ

 人間でなくなったロジャーが遺跡から抜けると、ラクダの子どもが座り込んでいた。嫌がるラクダを拾うとオアシスに向かう。遊牧民がロジャーを見て不思議そうな顔をする。

「すまないが水をもらえないか」

 うまく飲まない。水でなくミルクが欲しいようだ。ロジャーが遊牧民を見ると、彼は長銃をこちらに向けた。

「この前奴隷が死んでな。代わりを補充したい」

「俺はもう人間じゃない。やめたほうがいい」

 遊牧民が撃つとラクダが吹っ飛んだ。遊牧民がリロードしている間にロジャーはラクダにしゃがみ込み、死体を撫でた。

「まだ死ぬ予定でないのに」

 もう一発放たれたが、それはロジャーの前で砂に落ちた。

「は?」という遊牧民に向き直ったロジャーは彼の耳に指を突っ込んだ。暴れる遊牧民が萎れ、砂になった。ロジャーは水めいた液体まみれの手のひらをラクダに塗る。ラクダは眼を覚ました。子どもはロジャーを嫌がったが、なんとか抱えられた。

「親を探そう」


【続く】

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