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人生もランダムウォーク

人生は予測通りに進んでいくものではありません。思わぬ回り道をしたり,偶然の出会いがあったり,落とし穴にはまったり,なかなか予測できないものです。あっちへいったりこっちへきたり,酔っぱらいが歩くような様子であることから酔歩といいます。別名は,ランダムウォークです。

読んでみると考え方が変わる本というのはいくつもあると思いますが,この本もそのひとつだと思います。本のタイトルは『ウォール街のランダムウォーカー』です。ランダムに変動するものに対して,どのような対処が可能かということを考えさせられる良い本だと思います。

この本,投資をしようとする人にとっては定番のようですが,私が読んだのは何年も前のことですし,自分が投資をするために読んだというわけでもないのです。別の本を読んでいて紹介されており,面白そうだと思って読んだ本のなかの一冊です。


分散投資

基本的な考え方としては,資産を投資するときにはひとつの種類の投資先ではなく,できるだけ分散させるというものです。

投資先の分散のしかたは,互いに無関連であるほどよいとされます。それは,ある投資先に問題が生じても別の投資先にその影響があまり波及しないことが,資産の保護に役立つからです。高いに関連があると,ある投資先のダメージが別の投資先にも波及して全体が一気に下がってしまいます。

まあ,実際には完全に無関連な投資先を探すこと自体が難しいことなのですけれども。

時間的分散

またその分散には,時間的な分散も含まれます。ひとつの時期に一気に投資をすると,ある日に大幅な価格低下が生じてしまうかもしれません。月に一度,週に一度,毎日少しずつなど,投資をするときは時間的にも分散させるのがリスクの回避に役立つという話です。これはドルコスト平均法とよばれる方法ですね。

人生の多面化

この考え方は,人生そのものにも当てはまります。

仕事の中で少し幅を広げて,新しくそれまでとは違ったスキルを身につけてみようと思って行動することは,人生の方向性を多角的にします。趣味でもいいですし語学でもいいですし,プログラミングでもゲームでも習い事でも,手を広げてみることは人生の確率を変動させるような意味をもつのではないかと思います。

他の表現をすると,引っ掛かりを多くすると言えばいいでしょうか,幅を広げることで何かが生活の流れの中で自分自身に引っかかってくるようなイメージです。投げる釣竿を増やすでもいいですし,網を大きくするという比喩でも良いのかもしれません。

そして,そのように手を広げて行動を多面的にすると,何か自分の得意なこと,得意だと「思える」ことが増えていきます。そしてそういう得意ポイントを重ねると,自分で自分の評価も安定してくるように思います。何かがダメでも別のものがあると思えるからです。

このように考えてくると,まるで投資先を分散させることのように見えてきます。

研究の分散

そして,この話は投資だけではなく他の領域についてもあてはめることができると思います。自分の研究については以前も,自分の活動領域を広げようと考えてきた話を書いたことがあります。

研究という活動は,予想通りうまくいくかどうかがわかりません。そして国全体で考えれば,研究というのはどこで誰が「当てる」かがわからないものです。ですから,できるだけ分散して広く投資をすることで,どこかで誰かが当てる(すごい研究を成し遂げる)ことを期待するというやり方を取るのが,戦略的によいように思うのです。選択と集中は,「どこで当たるかわからない」というギャンブル性をますます高めてしまう,研究活動を考えるとあまりよくない戦略のように思います。

ことわざの両面

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