抗がん剤の治療で髪が抜けた母を笑顔にしてくれた帽子
私が帽子の学校に通っているときのことです。
当時50代半ばの母に、癌が見つかりました。
母は、長年ひとりで美容院を経営していました。
店を閉じてからは、人生後半を自由に謳歌しようとしていた矢先の癌宣告だったため、母の落ち込みようは相当のものでした。
抗がん剤の治療で髪の毛がすっかりなくなってしまった母に、ウィッグと帽子が必要になりました。
当時、私は帽子作りを習っていたものの、母や母と同じ病気の方のリクエストに答えられるような帽子を制作する技術力はまだありませんでした。
だから、母のために、病気だと気づかれないようなブリム(つば)が下向きで、できるだけ顔まわりに近いクロッシェタイプの帽子や、病室で寝たり起きたりしているときに邪魔にならない肌に優しい素材の帽子を探しまわりました。
当時は、今のようにネット社会が発達していなかったので歩き回って探すしかなく、大変だったことを覚えています。
それでも、見つけた帽子や、未熟ながらも私が作った帽子を被った母は、人生で初めて帽子でオシャレをする楽しさに目覚め、表情もどんどん明るくなっていきました。
帽子が、自分以外の誰かの力になることを、この目で確信した出来事でした。
母は、亡くなるまで帽子のオシャレを楽しんでいました。
今の私なら、どんなリクエストにでも答えてあげられるのにと残念に思います。
今は、ネットを見ると病気や治療で髪を無くされた方のために、機能性もあり、とても素敵なお帽子が沢山ありますね!
私も、私のつくる帽子でお役に立てたら幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました😊
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