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タイムマシンについて考えてたら、AIアシスタントも悪くない気がしてきた。

新作ドラマ『時をかけるな、恋人たち』が始まった。

毎週火曜夜11時よりフジテレビで放送中

このドラマは映画『サマータイムマシーンブルース』を手掛けた劇団ヨーロッパ企画の上田誠さんが脚本を手掛けている。ちなみに『サマータイムマシーンブルース』は"タイムマシーンに乗って壊れる前の(クーラーの)リモコンを取りに行く"という超脱力系のSFコメディなのだが、過去を変えたことで未来のつじつまが合わなくなる奇想天外な展開が魅力の作品で、私の大好きな映画の一つでもある。新作ドラマも"上田誠の手がけたタイムマシンもの"として期待大なので、興味のある方は是非見てほしい。

ところで「タイムマシンもの」といったら何を思い浮かべるだろう?私は仕事柄キャラクタの対話について考えることが多いので自然と『ドラえもん』にたどり着いた。これを機にドラえもんについて改めて振り返る中で様々な矛盾点や気づきがあったので、今回はそんな話をしたいと思う。

ドラえもんとのび太はなぜ出会ったか?

まず、ドラえもんはタイムマシーンで未来から来たネコ型ロボットである。でもどうして未来から来たのだろう?それは、のび太の残した借金に悩まされた孫の孫セワシが、のび太に子守ロボットであるドラえもんを送ることで未来を好転させようと考えたからだ。そして具体的には、のび太がジャイ子とではなく、しずかちゃんと結婚すれば未来はよくなると考えたようだ。

余談) 過去(ドラえもんがいない時)ののび太は、その後どこにも就職が決まらず、自ら起業をしたものの倒産をし、大借金を抱えてしまうのだった。またジャイ子と結婚をしてたくさんの子供を授かり、のちにセワシが生まれる。

のび太、セワシと出会う
ドラえもんのいないのび太の人生

『ドラえもん』の過去-未来の矛盾。

だが、ここで一つ疑問が生じる。冒頭でも説明した過去を変えると未来が変わる理論を持ち出すと、のび太がしずかちゃんと結婚すると、(のび太とジャイ子との孫の孫である)セワシは生まれてこないのではないか。自分が生まれない未来を望むなんて、そんな悲しいことがあるのだろうか。しかし、『ドラえもん』の設定ではどうもそうではないらしい笑。

どうなってもセワシが生まれることは変わらない不思議

そして私が感じた最大の疑問は、ドラえもんは未来を知っているのに決定的な過去を変えない点である。もし未来を知っていたら、バックトゥザフューチャーのようにスポーツの結果予測で大儲けできるだろうし、他にも成功する術は沢山あるはずだ。しずかちゃんと結婚できるXデーだって知っているはずだろう。つまり他のSF作品と同様に、過去の重要なタイミングだけに登場し、過去を塗り替えてしまえばいいと思うのだ。しかし、『ドラえもん』はただ寄り添う存在であり続けている。なんと尊い存在なのだろう。

未来予知できる対話AIは、もはやドラえもん

昨今ChatGPTをはじめとして、対話アシスタントが私たちの生活の一部になる未来が現実味を帯びてきた。どんなAIも未来を知る術はないが、過去のビッグデータから高精度に予知できる存在にはなるだろう。そう考えると、未来から来たドラえもんと極めて近い存在と考えてよいかもしれない。

もし対話アシスタントが将来を高精度に予測できるようになった時、私たちは素直にそれを知りたいだろうか。気付いたら対話アシスタントが考える「良い人生」を私たちがなぞるように生きてしまわないだろうか。そんなことを考え始めると対話アシスタントに対して気後れしてしまう。だからせめてドラえもんのような、未来がわかってもそれを伝えず、寄り添ってくれる存在がいてくれたらいいなと思う

(余談) もともとドラえもんは量産型ロボットではじめは黄色だったらしい。しかし、ネズミに耳をかじられ大泣きしたことにより、表面の素材が涙で溶けてしまい青くなったようだ。その後その青いドラえもんをセワシが家に迎え入れたというエピソードがあるらしい。結果的にドラえもんが量産型ロボットの一つではなく、個性的な唯一無二の存在である点が『ドラえもん』をより興味深くしている要素であるとも思った。

将来の子孫の幸せを見据えた、対話アシスタントの存在

ここまでドラえもんが未来から来た理由、のび太との関わり方について振り返ってきたが、最後に自分が興味深かった点について触れたい。それは、ドラえもんをのび太に送ったのが孫の孫のセワシという点である。これは、私たちの日々の選択が少なからず今後生まれるかもしれない子孫に影響を与えている、という気付きを与えてくれる。もしかするとこの瞬間が案外重要なのかもしれないし、親心として極力間違った選択はしたくないと思えてくるものだ。こうした将来を生きる自分の子孫にも幸せになってほしいという視座が、対話アシスタントを導入してもいいかもと思わせる理由になるのではないだろうか。動機は人それぞれかもしれないが、藤子不二雄先生が与えてくれたそんな視座が自分には最も腑に落ちたのだった。

おわりに

今回は、気になる新作ドラマの話をきっかけに、タイムマシン→ドラえもん→AIアシスタントへと流れ着いた。自分がAIアシスタント分野に関わっていながらも、その存在に対して全てポジティブになりきれない中で、将来いてもいいと思えるAIアシスタントの未来が『ドラえもん』を通して少し拓けた気がする。きっとこんな存在が身近にいたら、若者から見える世界はもう少し明るく映るのかもしれない。そんなことを"いただき女子りりちゃん"の件で思ったのであった。(おわり)


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