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薬中心?リハ中心?患者さんに合わせた調整を

製薬企業様向けマーケティング支援を行う株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

病院薬剤師T様のコラム第5話は、「リハビリテーション薬剤」についてです。


リハビリテーション薬剤とは

こんにちは。病院薬剤師のTです。
今回は、高齢化社会で重要な考え方の一つ、リハビリテーション薬剤(以下、リハ薬剤)について書きたいと思います。

リハは筋力の弱った患者に対して筋トレを行うイメージがありますよね。
もちろんそうなのですが、他にも、残った機能で出来ることを増やす訓練や、食事ができるようになる訓練など様々なものがあります。

リハは、身体機能や認知機能が低下した高齢者や障害のある方に対して、身体的・精神的・社会的なものすべてを含む生活機能を高め、Quality of life(QOL)を高めるために行うものです。

これは患者さんの予後に大きなプラスの影響をもたらします。
ただその効果を最大限発揮するためには、使用する薬剤とリハビリの計画を最適化することが重要となります。

え?クスリってリハにも影響するの?と思われるかもしれません。
臨床現場では、薬の副作用が発現した影響で、身体的・精神的・社会的機能が大きく低下している患者さんは少なくありません。

薬の副作用の影響が大きい場合、どんなに機能訓練を頑張ったとしたとしても生活機能は改善しません。
そこでリハと薬剤を調整することが必要になってくるのです。この調整を行うことをリハ薬剤といいます。

リハビリテーション薬剤のアプローチ方法

リハ薬剤には2つの考え方があります。

1つは、リハに影響の出ている原因の薬を調整してリハの効果を最大限にするという考え方です。
そしてもう一つは、中止することのできない薬の副作用でリハに悪影響が出ている場合、薬を服用している状態でも実施できるよう、リハ側を調整をするという考え方です。

患者さんの状況に応じて、「薬中心」「リハ中心」いずれかを検討する必要があります。

例えば、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の副作用で筋肉に力が入らなくなるものもあるので、影響がでていれば中止する必要があります。

また、ACE 阻害薬は骨格筋量増加作用が報告されています。この作用だけを狙って追加することはほぼ無いとは思いますが、他の血圧を下げる薬からの切り替えは考えられます。
リハ薬剤では、薬は減らすだけでなく増やす可能性もあります。要は処方の最適化ということです。

リハビリテーション実施にあたり注意が必要な薬剤の例

上記以外にも、リハに関係する薬の副作用とリハ実施時の注意点を、いくつか例としてご紹介します。
※河野健一『薬物療法中の心疾患患者に対して理学療法を行う際の注意点』より

■ドパミン
投与量により活動量が規定される。低用量投与の場合、利尿効果を目的としているため、リハ前後の尿量の推移を確認する。投与にも関わらず尿量が減少しているときは、身体負荷が腎血流増加を阻害している可能性があり、離床を進めずリハの負荷強度を低くするなどの対応をとる。高容量の場合は、副作用の頻脈性変化に注意する。

■Ca拮抗薬
低血圧、徐脈や房室ブロックなどの新たな不整脈の出現に注意が必要。

■ACE阻害薬
低血圧の出現に注意が必要。また、服用患者の15%に上気道刺激や乾性咳が出現するとされる。

■利尿薬
利尿を促進し過ぎた場合は脱水が生じ、低血圧や頻脈、カリウム異常に伴う不整脈が出現することがある。
また、ループ利尿薬が静注投与されている場合は、肺うっ血の存在を疑い、理学療法施行中の酸素化能の悪化に注意する。
利尿薬の効果や副作用を予測するため、尿量を中心と した水分のインアウトバランスや体重の推移, 電解質の値を確認することが重要。

■β遮断薬
運動負荷に伴う心拍数や血圧の上昇を抑制する点に留意する。
運動処方の際に負荷強度の設定に使用される年齢と最大心拍数の公式は、β遮断薬の服用者には適応できない。
そのため、呼気ガス分析装置を使用した心肺運動負荷試験の結果に基づいて運動処方を行う必要がある。
心肺運動負荷試験ができない場合、運動中の主観的運動強度や息切れの出現有無、運動前後の尿量や体重の変化といった症状を総合的に判断し、負荷量を調整する。

これらのリハに関連するリスクの発見と適切な対応のためには、常にカルテのチェックや患者さんからのヒアリングが欠かせません
理学療法士さんが薬物療法の全てを理解することは難しいため、薬剤師側からの確認する姿勢やコミュニケーションが必要と言えます。

次回は、脱水症と電解質輸液についてお話します。
今回もありがとうございました。


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