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MRが医師と同じ枠組みで患者像を捉えるために必要な視点とは?

株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

弊社とシミック・アッシュフィールド株式会社で共催したWEBセミナー「MRは患者像を描けているか ~トレーニングに活用できるカルテデータ~」の模様を3回シリーズでお伝えします。

シミック・アッシュフィールド様は製薬企業様向けにCSO事業などを展開されています。弊社ではMR教育用の資材として電子カルテデータベースから抽出した症例情報を提供するなどの形で、これまでパートナーシップを築いて参りました。

本セミナーは、同社に所属する看護師の有本様MR出身の小久保様のお二人が、ユカリアの保有する電子カルテデータベースの中から選んだ実際の症例を読み解くことを通じて、「MRが患者さんを軸とした対話により医師との信頼関係を構築する方法」を考察するものです。

有本様は、大学病院、地域基幹病院、クリニックで臨床看護師として豊富な経験を積まれたのち、現在は同社のCSO事業部門でMRの人材開発に取り組まれています。

今回のPart.1では「カルテとSOAP」について、
次回のPart.2では「カルテの読み解き」について、
最終回のPart3. では「患者さん軸での対話のために」をご紹介します。


MRがカルテを知りトレーニングに活かす意味は?

今の営業活動の中では、MRが直接医師のパソコンを覗き込んでカルテを読むという機会はまず無いと思います。
では、MRがカルテのことを知り、それを使って営業トレーニングをする意味はどこにあるのでしょうか?

それは、医師の思考の仕方を理解し、結果として医師との間に信頼関係を築くことができるからです。

弊社がさまざまな調査プロジェクトの中で医師にインタビューを行うと、たびたび「MRは患者さんのことをよく分かっていない」という発言を聞くことがあります。

昨今、製薬業界においてはPatient Centricityが重視されており、MRの間でも患者さん中心の医療に対する意識は高まっているのではないでしょうか。

それでも医師とMRの間での患者理解の溝が埋まらないのはなぜなのでしょう。
その理由の一端を、電子カルテの構造から見ていきます。

カルテの概要

カルテは、対象となる患者さん一人ひとりに対して作成され、医師のみならず、看護師・薬剤師・理学療法士などの医療従事者間での情報共有のために使われています。

その内容は、SOAPという項目毎に整理されています。
S=Subjectiveは「主観的情報」、O=Objectiveは「客観的情報」、A=Assessmentは「評価」、P=Planは「計画」です。

重要なポイントとして、この4つの項目は単なる並列の概念ではなく、流れと順序があります。

必ず最初はS「主観的情報」から始まります。O「客観的な情報」だけでアセスメントを行うことはありません。

患者さんの主観的な発言を組み入れて初めてアセスメントを考え、プラン作りへと進んでいきます。
患者さんによって訴えは異なるため、SとOが両方あって初めて、患者さん個別の治療が行えるわけです。

MRには見えにくい患者像

MRは通常、実際のカルテの内容を見ることができないので、医師から比較的聞きやすい検査データなどの限られた情報を切り口に、処方対象となる患者像を考えます。
これは主にO「客観的情報」です。

一方で医師は、S・O・Aを総合的に俯瞰して捉え、P「治療計画」を決めています。
そのため、医師から見ると「MRは患者さんのことが分かっていない」と見えてしまうのです。

MRが

  • S「主観的情報」が治療計画の起点であること

  • 医師がS「主観的情報」を重要視していること

を意識し、対象疾患の患者における、S「主観的情報」がどのようなものなのかを具体的に知ることができたならば、医師と同じ視点で患者を捉えた会話が可能になるのではないでしょうか。

カルテに書かれている情報とは

電子カルテの中には、検査結果や医師の所見以外にも、さまざまな情報が記載されています。
以下が、一人ひとりの患者さんに関して記録されている代表的な情報です。

どの項目も重要ではありますが、医療従事者が着目する大事な情報の一つに「生活歴」があります。例えば、

  • タバコやお酒がやめられない、といった嗜好に関すること

  • 甘いものや油っこいものを大量に食べる、などの食事に関すること

  • 何時に起きて何時に寝る、どこでどんな仕事をしている、といった一日の生活パターン

などの情報が含まれます。

また、「3か月後の孫の結婚式までにはどうしても治しておきたい」といった患者の具体的な治療への要望、「もう治療に疲れてしまった」といったメンタリティに関する情報などもあります。

患者は医師には言いづらいことや弱音を看護師に話すことも多く、看護師は看護記録の中で、そういった患者さんの表情や声のトーンまで克明に記載していたりします。

医師はそういった広範な情報にくまなく目を通して患者を理解し、そのうえで治療方針を立てます。検査データやガイドラインが全てではないのです。

今回のPart.1では、
患者がどう感じていて、何をしたいのかというS「主観的情報」が医師の治療方針検討の起点になる重要な観点であること、また、患者のことをとても幅広く・深く見てプランを立てているということをご紹介しました。

次回のPart.2では、ある胃がん患者さんの具体的な電子カルテをもとに、看護師の有本様が医師の視点も意識しながら具体的な読み解きを行った様子をお伝えします。


ユカリアでは、
独自の電子カルテデータベースと専門家(医療従事者・アカデミア)ネットワークを強みとした、製薬企業様のマーケティング・営業活動をご支援する調査・コンサルティングを行っています。
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株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部
お問合せ窓口:pharma.biz@eucalia.jp


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