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父と娘の日々

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認知症が進行していく、憎たらしく愛おしい父との、尊い日々の記録。
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2022年3月の記事一覧

ふつうの誕生日。

ふつうの誕生日。

今日は父の喜寿の誕生日。

朝起きてきたので
いくつになったの?と聞いたら
77歳!と即答していた。

ほとんど寝ていたけど
ケーキが食べたいがために
がんばってごはんも食べた。

ケーキのろうそくを吹き消す顔は
認知症ではなく
ふつうの父の顔だった。

ふつうの父と
ひっそりと
いつも通りの一日を過ごした。

寝てばかりだし
お風呂も全然入ってくれないけど
おやつのために
がんばってごはんを食べ

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それぞれに母を想う。

それぞれに母を想う。

これから毎年 この春の始まりに
いろんな気持ちが巡るのだろうか。

そういう想いの集結する時期が
春なのがそれらしくて。

母の写真は
またたくさんのお花に囲まれて
なんだかうれしそうに見えるけど。

最近はもう
お線香もあげていなかった。

弟の子供達がぐちゃぐちゃにするので
片付けたりまた出したりするのが
めんどくさかったから。

写真ももう
どこかに片付けてしまおうかと思ったり。

「写真に

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完全に癒やされている。

完全に癒やされている。

雨ばかりでどんよりしてて
散歩に出る気にもなれなくて。

でも3月は雨ばかりなのなら
雨が降ってないときには散歩に出ておかないと
全然外に出ないことになりそうなので
自分の怠け心をどうにか横に置き
外に出ると今時期は
小さな花たちと目が合う。

目が合った途端に
かわいいな
とこころが笑う。

癒されるって
こういう感じか
と思う。

ただ聴いているだけで
感動する音楽がある。

ほんとうはただ聴

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笑ってしまおう。

笑ってしまおう。

朝、父の様子を見に行くと父が言った。
「昨日は半分外で寝てたんだよ〜」と。

実際にはベッドでヌクヌク寝てるのに
気持ちは路上にいたのか〜。
なんともしんどそうな妄想だ。

昼寝をしてても
苦しそうにうなってる。

レビーの人が見る夢は
基本的に悪夢だとテレビで言っていた。

幻視モードの日は
幻視を見てる目が半分開いてても
つむって眠っていても
なにか恐ろしいものを見ているようで
般若みたいな顔

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江戸時代へタイムスリップ。

江戸時代へタイムスリップ。

うちの家族はみんな
不思議なくらいにケンチャンに協力的だ。

昨日もご機嫌だった父は
「ケンクンは真面目で、一番優秀」
と私に言ってきた。

多分部下か何かだと
思っている口ぶりだったけど。

今日の父は突然
江戸時代の厳しいお父さんに変身。

私がソファに足を組んで座っていると
「姿勢を正して座りなさい」
と言ってきてたり。

私がふざけて、「オラ、お風呂に入ってくるダ!」
と言ったら
「言葉遣

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家内ジプシー。

家内ジプシー。

父の寝床がまた代わり
リビングの隣の
元々母が寝ていた部屋になった。

これで三回目のプチ引っ越し。

一部屋目は電車のホームになっているようで
寝てるといろんな場所に連れていかれるので
疲れるから嫌だ、と移動。

二部屋目は虫とホコリの幻視がすごいらしく
気持ち悪くて寝てられない、と移動。

三部屋目は長続きしてくれるといいな。

父の新しい部屋は
リビングの音が筒抜けなので
父が寝てるときは

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開き直る。

開き直る。

山にいた頃は

ゆっくり鏡を見る時間もなく

鎌倉に帰ってきて

ようく自分の顔を見てみると

点々だらけで

すごいことになっている。

正確には

ようく鏡を見たのなんて

中学生以来くらいかもしれない。

自分の顔なんて

ようく覗き込んでこなかったから

人の顔もよく見ていなかった。

自分の顔のすごさと

人とを比べたことなどなかった。

もう手遅れなので

受け入れる方向しか選択肢にな

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儚い自信。

儚い自信。

月曜日

久しぶりに晴れてる海に行った。

今日は木曜日

雨が降ったり曇ったり

強風が吹いたと思ったら

お陽さまが差して。

久しぶりに父も

うろうろと歩き回る。

クッションに英語で話しかける。

今日はイギリス人のお客さんだそう。

出かけなきゃいけないと

着替えようとするので

お風呂に入ってからだよ!

と言ったら

出かけなくて良いように

クッションに一生懸命説得していた。

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痛くない距離。

痛くない距離。

今日は西からたくさんのやさしさが届き

自分がやさしさを忘れていたことに気づく。

というか

やさしさが湧いてこなくなっていた。

みんなのおかげで少し

やさしさを充電できた気がする。

春は芽吹きで

いろんな症状も吹き出てくるから

父も私も吹き出まくっている。

こんなときは無理をせずに

少し距離を置くことにしてみる。

トゲトゲが近づき合っても

痛いだけ。

久しぶりに

大好きな

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