〜やっぱりシティ戦だけだった?!サイドスカスカでトラオレ無双!!〜 21/8/22 《プレミアリーグ2021-22 第2節》 ウォルヴァーハンプトン vs トッテナム レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、2節でいきなりヌーノ監督の古巣対決となったウルヴズ戦です。
指揮官の勝手知ったる古巣を相手に、スパーズはどのように戦ったのでしょうか。
1. スタメン
ウルヴズは、直近のレスター戦からフーバーのみを代え、セメドを起用した3-4-3。
スパーズは、直近のパソス・デ・フェレイラ戦からはスタメン総入れ替え。プレミアリーグの前節シティ戦からは誰も変わらずの4-3-3。
2. 1st half
2-1. スパーズの守備とその穴
この試合、ヌーノ監督が選んだのはシティ戦と同じく4-3-3。3トップは中央へのパスコースを警戒した立ち位置を取ります。
左右のサイドで守備のやり方が異なっていたので、まずは右サイドから。ウルヴズの切込隊長、アダマ・トラオレのサイドです。
シティ戦では、シティの両SBが絞った2-3-5といった形でビルドアップをしてきてくれたので、シティのSBにボールが入った時も、基本的にIHの2人が縦スラで十分に対応することができていました。
しかし今回、ウルヴズのマルサルがしっかりと幅を取った立ち位置を取ることによって、ホイビュアが寄せるには距離が遠く、マルサルに対してなかなかプレッシャーにいくことができませんでした。シティ戦の時とは違い、ルーカス・モウラがサイドのマルサルまでアプローチにいくことも何回か見られましたが、中央へのパスコースを切るタスクと相手のサイドまで面倒を見るタスクはなかなか並行できるものではなく、マルサルのプレーを邪魔するほどのアタックはすることができません。
タンガンガはトラオレ番をしなければならず、縦スラでマルサルまでアプローチにいくことができないので、上図のように、マルサルには時間とスペースが与えられることになります。
それによってウルヴズ側がチャンスを作ったのが6分23秒のシーン。トラオレがタンガンガの前に入ろうとするチェックの動きから背中側を取り裏抜けし、そこにフリーのマルサルからのスルーパスが通り、トラオレはカットインからのシュート。最終的に、トラオレのシュートは枠外に終わったものの、SBをフリーにさせることによって、こういった質の高いボールが裏に出てくることがわかります。
続いて左サイド。
ウルヴズはセメドが高い位置を取り、トリンカオが内側ハーフスペースを取る形。
それに対してスパーズは、右サイドとは違いSBのレギロンがウルヴズのWBセメドに付き、デレ・アリはハーフスペースのトリンカオにボールが渡らないよう、パスコースを切ります。
セメドはポジショニングが高いせいで、降りながらキルマンのボールを受けることになり、レギロンからすると後ろ向きの相手に対しての前向きの守備なので、楽に対応できるシチュエーションとなっていました。
この前方向の守備への意識もあってか、レギロンがネヴェスの右サイドのセメドへのパスをカットしたところから、ベルフワイン→レギロン→裏にスルスルっと抜け出したデレ・アリと繋がり、GKのジョゼ・サーに倒され、PKを獲得し、9分のデレ・アリのPKで先制ゴールが生まれました。
左右で守備のやり方を変えていたのは、セメドが高い位置を取るのでレギロンが1番セメドに近かった、というのもあると思いますが、何より、タンガンガにトラオレをみさせたかったというのが大きいと思います。
タンガンガがマルサルまで出て行ってしまうと、その裏にボールを出された時は、サンチェスが釣り出され、トラオレとの勝負です。そこを抜かれて枚数の少ないボックス内にクロスでも入れられれば、ひとたまりもありません。
そうなることを避けるために、ヌーノ監督は、タンガンガにはとにかくトラオレへの対処を優先させたのでしょう。シティ戦に引き続き、監督からのタンガンガへの信頼が見て取れます。
それでも26分39秒のように、背負った状態から反転してタンガンガを置き去りにし、クロス→モウティーニョの落とし→ヒメネスのシュートという場面を独力で作ってしまうトラオレは本当に恐ろしかったですが。
2-2. 全くうまくいかないスパーズのビルドアップ
ボールを保持した際は、シティ戦とは違い、ある程度後ろから繋いで行こうとしていたスパーズ。
デレ・アリはあまりビルドアップには関わらず、ホイビュアがDFラインに加わり、スキップが相手の1stDFラインの後ろでボールを引き出そうとしますが、やはりなかなかうまくボールを運ぶことができません。ウルヴズは特にハイプレスを仕掛けてきているわけでもなかったのですが......
ホイビュアが落ちるのであれば、デレ・アリがボランチの位置まで降りてきてあげて2ボランチでウルヴズの3トップのギャップを狙うなど、構造的な修正点もあると思いますが、何より選手がボールを持つことに慣れてなさそうなのがとても気になります。
サンチェスはサイドやロングボールに逃げる前に、少し運んでスキップにつけたり、ルーカス・モウラへの縦パスを探っても良いと思います。
スキップは相手の斜め後ろに立ってCBからのボールを引き出すこともできていませんし、受けてからも縦パスを入れられそうな場面でも前を向かずバックパス。やっと縦パスを出したと思ったら、フリーの味方を見逃して敵が密集しているところに縦パスを出してしまったりと、ビルドアップ面での課題は多く見られました。
ここに関しては、ポチェッティーノ、モウリーニョともに、ボールを繋ぐということに対して細かい指導をしてこなかったことによる負の遺産であると思うので、ヌーノ監督がそこに着手し、トレーニングから取り組んでいくことでしか改善はできないでしょう。
2-3. 1st half まとめ
デレ・アリのゴールでリードはしているものの、上のスタッツの通り、ポゼッションでもウルヴズが上回り、タンガンガにもすでにイエローカードが出ており、トラオレのサイドからいつゴールを決められてもおかしくないという状況のスパーズ。
後半何かヌーノ監督の修正は入るのか...?!
3. 2nd half
HTは両チーム共に交代はなく、前半と同じように、スパーズがウルヴズの攻撃を受ける展開でゲームは進んでいきます。
ウルヴズは後半、トリンカオとセメドのサイドでのプレーに変化が見られました。2-2.で書いた通り、スパーズはレギロンがセメドに対して縦スラでアプローチにいきます。HTで指示があったのか、選手間でのやり取りがあったのかはわかりませんが、後半はトリンカオが、セメドに対して出ていくレギロンの裏のスペースをつくランニングの頻度を多くしていました。
そんなウルヴズの猛攻を、ロリスのトラオレとの1対1でのスーパーセーブや、DF陣の懸命なブロックなどもあり、なんとかギリギリで凌ぐスパーズ。自陣深くに押し込まれ、ピンチを凌いでも、すぐにウルヴズにボールを奪われ、自分たちの時間を作ることができません。
67分にルーカス・モウラに代えてロ・チェルソが投入された辺りから、WGが下がってウルヴズのWBへの守備対応に回るシーンが見られるようになりましたが、最初から守備ブロックに加わって4-4-2なり、4-5-1のブロックを作ってサイドのスペースを埋めると明確に決まっているわけではなく、前線に残っていることも多々あったので、ロ・チェルソとベルフワインが個人の判断で後ろを助けていただけのように、僕には見えました。
71分頃に、スパーズはソンに代えてケイン。
ウルヴズはモウティーニョに代えてデンドンケル。
ケインが入ると、ソンよりもラフなボールでも収めて繋げるプレーが上手いので、そこを起点にウルヴズ陣内に攻め込める場面も増えてきます。
ウルヴズは83分に、サイスとトリンカオに代えてファビオ・シウバとアイヌーリを投入して、なんとか点を取ろうと奮闘しますが、クロスやシュートといったファイナルサードでのプレーに精彩を欠き、得点できず、スパーズは90分にベルフワインとウィンクスの交代でしっかりと時間を使い、0-1、スパーズの勝利でゲーム終了となりました。
4. 総括、感想
最終的なxGはこちら↓(PKのゴール期待値は0.76固定のようなのでスパーズはそれでだいぶ数値が高くなっています。)
https://twitter.com/xGPhilosophy/status/1429457328131166216?s=20
スパーズ側が虎の子の一点を守り切り、なんとか勝ち点3を獲得しましたが、この試合を続けていれば、今後は危ういだろうと思わされた試合でした。
シティの2-3-5でのビルドアップに対しては、うまくいきましたが、やはりSBやWBに幅を取られると、今の4-3-3では厳しいことがよくわかりました。
攻守両面でこういった修正を加えなければ、かなり厳しいシーズンになるかと思われます。
デレ・アリの長い足を活かしたボール奪取でIHへの適応を見せたところや、ベルフワインの成長、ロリスのパントキックエデルソン化など、ポジティブ要素もあるだけに、チームとして、なんとか改善していってくれることを期待したいです。
5. おわりに
とにかく苦戦はしましたが、何より勝ち点3を取れたことは事実ですし、よかったです。
それにしてもトラオレは試合後に相手クラブへの移籍の噂がよくあがりますね笑(スパーズ、シティなど)
今の4-3-3にはぴったりの選手で、スカウティング的には正解なのでしょうが、この4-3-3を続けている限り、昨シーズンのように選手の運動量が持たなくなる時がやってくる可能性が高いと思うので、なんだかなあ、という気持ちです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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