22/3/12 《プレミアリーグ21-22 第29節》 マンチェスター・ユナイテッド vs トッテナム レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、プレミアリーグ21-22第29節、マンチェスター・ユナイテッド対トッテナムの試合をレビュー。
4位以内を目指す上でお互いに負けられない6ポイントゲーム。
今シーズン一度目の対戦では、スパーズが負けたことによってヌーノが解任され、結果的にユナイテッドに就任する噂があったコンテがスパーズに就任することになりました。
その後ユナイテッドもスールシャールを解任し、両者共に新たな指揮官の元で数ヶ月を過ごして臨むこの一戦。
果たしてどのような結末に終わったのでしょうか。
1. スタメン
・ユナイテッド
デ・ヘア
ダロト-ヴァラン-マグワイア-テレス
マティッチ-フレッジ
ラッシュフォード-ポグバ-サンチョ
ロナウド
68’ ラッシュフォード⇄エランガ
80’ マティッチ⇄カバーニ
83’ ロナウド⇄リンデロフ
直近のマンチェスター・シティ戦からワン=ビサカ、リンデロフ、マクトミネイ、エランガ、ブルーノ・フェルナンデスに代えてダロト、ヴァラン、マティッチ、ラッシュフォード、ロナウドを起用した〔4-2-3-1〕。
ロナウドとカバーニが怪我、ヴァランがコロナウイルスでの欠場から復帰。
ショー、ブルーノ・フェルナンデスはコロナウイルスの影響、マクトミネイは怪我で欠場。
・スパーズ
ロリス
ロメロ-ダイアー-デイビス
ドハティー-ベンタンクール-ホイビィア-レギロン
クルゼフスキ-ソン
ケイン
78’ クルゼフスキ⇄モウラ
87’ デイビス⇄ベルフワイン
88’ ベンタンクール⇄ウィンクス
直近のエヴァートン戦からセセニョンに代えてレギロンを起用した〔3-4-2-1〕。
セセニョンはエヴァートン戦でのハムストリングの負傷、スキップとタンガンガは引き続き怪我で欠場。
2. 1st half
まずはスパーズのボール保持の局面から。
〔3-4-2-1〕でビルドアップするスパーズに対してユナイテッドは〔4-2-3-1〕のミドルブロック。トップ下のポグバがスパーズのボールサイドのボランチをマークする形。
ポグバがボールサイドのボランチをマークするということは、もう1人のボランチが空いてくるということです。
スパーズとしては左右のCBから空いてくるボランチを使うという前進のルートは狙い目であり、デイビスからベンタンクールへのパスは多く見られました。
ベンタンクールにパスが出ると同時に、フレッジはポジションを上げて前を向かせないようにベンタンクールに寄せていきます。
フレッジはあくまでもベンタンクールにパスが出てから寄せにいくので、ポグバにベタ付きされているホイビィアと比べればベンタンクールはフレッジがどれだけ寄せてきているかによっては前を向ける場面もあるはず。
しかし、フレッジが寄せ切れていないときもベンタンクールが自ら前を向くことができず。
スパーズは、この噛み合わせ的に空いてくるボランチのところはもう少しうまく使いたかったなという印象です。
ボランチの2人は左右のCBが運んだときに動き直してパスコースを作る動きが少ないという問題点もありました。
ユナイテッドの守り方は、ポグバがボールサイドのボランチをマークするというある程度のルールは決まっているもののマークの厳しさは正直甘く、全くボールを受けられないという程ではあらず、ロナウドとポグバという決して守備での貢献が大きくはない2人が相手なので、もっとうまく中央を使った前進ができないものかとモヤモヤするボール保持となっていました。
先制点を奪われ、次第にホイビィアが列落ちしてのビルドアップが多くなったスパーズ。
ホイビィアがダイアーの左脇に降りてデイビスを大外に押し出す形ですが、このビルドアップにも問題があり、うまくいっていませんでした。
その問題とは何かというと、ホイビィアのポジショニングです。
ホイビィアが幅を取らずにダイアーと近い距離でボールを受けることによって、大外に張ったデイビスへのパスを通すためにはデイビスが低い位置(ユナイテッドのSHに近い位置)でボールを受けなければならず、ダイアー→デイビスのパスが通ったとしてもユナイテッドのSHのプレスバックで対応されてしまいます。
さらにホイビィアがもっと運んでユナイテッドのSHを引きつけることも必要だと思います。ただ運んでSHを引きつけるためには幅を取っていることが必要なので、とにかく最初にダイアーからのパスを受ける位置を改善するべきでしょう。
そして、デイビスに相手のSHより高い位置でボールを受けさせるためにはシャドーのソンの動きも重要で、左サイドにボールが回ってきたときに相手のSH-ボランチ間にタイミングよく顔を出し、SHにそのパスコースを気にさせて大外のデイビスへのパスコースを切りに行きづらい状況を作らなければいけません。
以前から言っていますが、ソンはこのライン間、ハーフスペースの狭いスペースで受けるタスクがとても苦手です。
そのスペースでボールを受けにくるときも、動きにメリハリがなくダラダラと降りてきてしまうので、出し手はパスを出しても後ろからついてきているマーカーに潰されてしまうと考えますし、そこまでタイトにマークされていなかったとしてもタイミングが取りづらくパスは出しにくくなってしまいます。
ボールを受けてからのトラップ、ターンの技術に関してもタスクに合った水準であるとは言い難く、背中のマーカーがどこまでタイトに寄せてきているのかといったことを首振りなどで認知することも不足しているので前を向ける場面でバックパスを選択してしまったり、逆にワンタッチで落とすべき場面でトラップしてしまってボールロストしたり。
この試合でも2分57秒という早い時間に前を向けずにトラップも浮かしてしまう場面があり、心なしか前半を通してデイビスやホイビィアがソンに出せるときでも大外へのパスを選択しているように見えました。
一方、ユナイテッドのボール保持はというと、こちらもうまくいっているとは言えない感じで、マティッチがアンカー気味に振る舞うこと以外はかなり流動的。
スパーズの〔5-4-1〕ブロックを作ってユナイテッドのCBがボールを持つとボールサイドのボランチが出ていく守備をなかなか崩すことができません。
ポグバやフレッジがマティッチの脇に降りてくるも、後ろ向きの状態の彼らに対してホイビィアやベンタンクールが出ていくため、そこから前を向いてプレーすることはできないです。ロナウドもボールを触るためにブロックの外まで受けに来ますが、スパーズからすればゴール前にいられると1番怖い選手が自らゴールから離れてくれている訳なのでむしろありがたいくらい。
そんなこんなでユナイテッドがボールを持ったときも停滞気味であった試合ですが、11分55秒にホームチームが先制します。
ボールホルダーのマグワイアにベンタンクールがプレス。マグワイアはヴァランにパスを出し、ヴァランがドリブルで持ち運びます。運ぶヴァランにホイビィアが出たところでホイビィアとベンタンクールのギャップにフレッジが顔を出し、ヴァランがそこにパス。フレッジがそのパスをフリックでベンタンクール-クルゼフスキ間に降りていたロナウドに繋ぎ、バイタルエリアでフリーとなったロナウドがとんでもないミドルシュートでゴラッソ。
スパーズ側の反省点としては、ベンタンクールのスライドが間に合っていないのに出過ぎてしまったホイビィアや、スライドを怠ってベンタンクールとの間を空けすぎてしまったクルゼフスキ、裏に抜けるフレッジが気になったとはいえロナウドに寄せず中途半端な対応となってしまったダイアーなどいくつかあります。
しかし、必要以上にボールに触らずボールを流してホイビィアを引きつけて前の動き出しを待ったヴァラン、寄せてくるベンタンクールをフリックでかわしたフレッジのアイデア、そして何よりもロナウドのシュートがすごかった。これに尽きると思います。
33分、ダイアーのFKの跳ね返りを拾ったクルゼフスキの個人突破からテレスのハンドを誘いスパーズがPK獲得。34分35秒にケインのさすがのキックで同点に追いつきます。
しかしそのすぐ後、マティッチのフィードに抜け出したサンチョからのクロスで再びロナウドが得点。ユナイテッドが勝ち越します。
この場面、DFラインを上げてサンチョをオフサイドにかけようとしたものの結果的にレギロンの足が残ってしまって失点に繋がってしまいました。
5バックでDFラインを揃えるのは簡単なことではないでしょうし、特に瞬間的にラインを上げてオフサイドを取ろうとするのはリスクの伴うプレーでもあります。
デイビスが「ロナウド見とけよ」的なことをレギロンに伝えている隙を突かれて左サイドの2人が置いていかれる形の失点であり、今までこのような形でオフサイドを取ることができていた場面もあったので悔やまれる失点です。
そして試合はユナイテッドの1点リードで試合を折り返すことになります。
3. 2nd half
後半、スパーズはユナイテッドのバックパスをスイッチにプレスをかけ、ケインとソンで2CBに寄せ、レギロンがダロトまで縦スライドする形で前半と比べて明らかにボールを奪いにいくように。
ユナイテッドのゴールキックでもこのようにレギロンをダロトまで出して嵌めにいき、ボールを握る時間が増えたスパーズでしたが、前半同様ビルドアップの問題は続いており、なかなか得点のチャンスを作ることができません。
試合が動いたのは71分15秒。
ベンタンクールへのパスを気にしたのか、マティッチがフレッジとの間を不用意に空けて右にステップ。そこでロメロからフワッと浮かせたパスがケインへ。腕を使ってヴァランを背負う体制を整えていたケインがヴァランからボールをキープしながらプレスバックに来るマティッチをかわし、上がってきたロメロへ。ロメロが横パスでソンへと繋ぎ、ソンからPAくらいの幅を取っているレギロンにパス。ゴールエリアまで上がったロメロを狙ったクロスはマグワイアに当たってオウンゴールに。
後半長い間ボールを握っていたスパーズがやっと追いつきます。
78分にクルゼフスキに代えてモウラ。80分にマティッチに代えてカバーニとお互い勝利を目指した交代。カバーニの投入でユナイテッドは〔4-4-2〕に。
順位表を見ても、せめて勝ち点1は持ち帰りたいスパーズでしたが、双方共にうまくいっているとは言えないこの試合を個人のスーパーな活躍で決めてしまえるのがユナイテッド。
ポグバが鬼キープでベンタンクールと入れ替わる形で前を向き、右サイドへのサイドチェンジ。サンチョのすばらしいトラップからのクロスはレギロンに当たってユナイテッドにコーナーキックが与えられます。
ゴールエリアにはカバーニのみが入って他はゴールから離れたところで密集を作り、スパーズはマンマークで付きづらい状況に。
テレスのキックに合わせたのはまたしてもロナウド。千両役者がハットトリックを決め、再びホームチームが勝ち越しです。
この失点に関して。
ニアストーンにレギロンとケインが立ち、残りはいつも通りマンマークなはずなので、密集したユナイテッドのどの選手に誰が付くかはテレスのキックの前に決めているとは思うのですが、ロナウドのマーカーであるはずのドハティーが、テレスがコーナーキックを蹴った後に一度ボールから目を切って後ろを確認しており、その結果ロナウドと競ることができずにヘディングを叩き込まれています。
この一度ボールから目を切る動作には一体どういう意味があったのか、そもそも密集を作るユナイテッドに対してきちんとそれぞれのマークを決めることができていたのかはすごく気になりました。
ユナイテッドの3点目が入った後、ロナウドに代えてリンデロフ。デイビスとベンタンクールに代えてベルフワインとウィンクスをそれぞれ交代し、ユナイテッドは〔5-4-1〕で試合をクローズしに。スパーズは〔4-2-3-1〕に変更して攻勢に出ますが、ゴールに迫ることはできず。
3-2、オールド・トラッフォードでの打ち合いはユナイテッドが制し、ヨーロッパ大会への出場に向けて大きい勝ち点3を手にすることとなりました。
4. おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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