22/4/3 《プレミアリーグ21-22 第31節》 トッテナム vs ニューカッスル レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、プレミアリーグ21-22第31節トッテナム対ニューカッスルの試合をレビュー。
冬の移籍市場を経て、着実に戦力を拡充し、降格圏を脱したニューカッスル。順位表を見ても降格の可能性はかなり少なくなったように思えるとはいえ、リーグ戦の直近2試合ではどちらも1-0と敗れているため、スパーズを相手に勝ち点を手にして再び連勝の流れに乗りたいはず。
一方のスパーズは、CL出場権獲得に向けてリヴァプール戦を除くと一つも勝ち星を落としたくはない状況。
監督のコンテ、マネージングダイレクターのパラティチ共にシーズン終了まで全ての試合が決勝戦だ、と意気込む中迎えるニューカッスル戦である。
1月後半からのニューカッスルの勢いを見るに、残りの対戦カードの中では比較的難しい対戦相手になるであろうチームを前に、果たしてホームで勝ち点3を獲得することができたのか?!
1. スタメン
・スパーズ
ロリス
ロメロ-ダイアー-デイビス
エメルソン-ベンタンクール-ホイビィア-ドハティー
クルゼフスキ-ソン
ケイン
75’ ベンタンクール⇄ウィンクス
76’ クルゼフスキ⇄モウラ
81’ エメルソン⇄ベルフワイン
代表ウィーク前、直近のウェストハム戦からレギロンに代えてエメルソンを起用した〔3-4-2-1〕。
スキップ、セセニョン、タンガンガに加えてレギロンが怪我で欠場し、ドハティーを左WBに回してエメルソンを右WBに。
・ニューカッスル
ドゥブラフカ
マンキージョ-シェア-バーン-ターゲット
ウィロック-シェルヴィー-ジョエリントン
フレイザー-ウッド-サン=マクシマン
59’ ジョエリントン⇄マーフィー、マンキージョ⇄ギマラインス
70’ ウッド⇄ラッセルズ
代表ウィーク前、直近のエヴァートン戦からクラフト、ギマラインス、アルミロンに代えてマンキージョ、シェルヴィー、サン=マクシマンを起用した〔4-3-3〕。
2. 1st half
・ミドルブロック時のWGの立ち位置
試合は前半の始めからニューカッスルのミドルブロックに対してスパーズがボールを持つ展開に。
ニューカッスルは〔4-5-1〕のミドルブロックを敷き、バックパスなどを起点に前線がスイッチを入れるとミドルプレスを開始。
いつも通り後ろからボールを繋いでいく姿勢を見せたスパーズがうまくボールを前進させられていたのはニューカッスルが〔4-5-1〕のブロックを組んでいるとき。
彼らの〔4-5-1〕ブロックは、〔4-3-3〕とまではいかないもののWGがスパーズの左右のCBに対してWBへのパスコースを切る立ち方でIHとの距離を空けがち。プレスをかけていないブロック守備の段階でこの立ち方をするので、ボールホルダーのスパーズCBはロングレンジのパスもドリブルも選択できる状況。そうなるとニューカッスルのIHは縦パスを入れさせないために下記のような動き(ディアゴナーレ)でWGの背後をカバーしなければならなくなる。
ウィロックがディアゴナーレでフレイザーの背後をカバーすることでホイビィアがフリーになり、結局CB→ボランチ→WBのルートでフレイザー-ウィロック間を通されてしまう。
このニューカッスルのミドルブロック時のWGの立ち位置によって、スパーズは左右ともに中盤ラインを越えてWBにボールを渡すことができており、WBに入った後は、ニューカッスルのSBが出てくる裏にシャドーのクルゼフスキやソンが走ってシンプルにそこを使うorニューカッスルのIHが走ったシャドーについて行ってできたスペースに降りてくるケインを使うという風にシャドー2人が効果的なオフザボールの動きを見せることができていた。
また、ニューカッスルが中盤ラインがもっとフラットな〔4-5-1〕でWGが完全にサイドのスペースを埋めるブロックを組んだときも、左右のCBの運びにIHが出てきたところをCB→ボランチ→シャドーといった形でニューカッスルのアンカーとIHの門を通すパスでライン間にボールを届けることもあった。
・ホイビィアの列落ちとソンのポジション取りの遅さ
上記のような前進ルートがあり、ゾーン3での崩しに関してもシャドーのオフザボールの動きが今までよりも効果的に行えていたのに前半スパーズが流れからの得点を取れなかった原因は、ホイビィアの列落ちとソンのポジション取りの遅さである。
まず、ホイビィアの列落ちというのはご存じの通りホイビィアがダイアーの左脇に降りてデイビスを大外に押し出す形でのビルドアップのこと。
降りるホイビィアに対してはウィロックがIHの位置からプレスに出てきて、フレイザーは張ったデイビスにつく。
〔4-5-1〕の並びからウィロックが出てくるということはアンカーのシェルヴィーの脇が空くということであり、右サイドから左のホイビィアに素早く持って来れば、ニューカッスルの3センターはスライドはスライドしている最中であり、やや内からホイビィアに出てくるウィロックと張ったデイビスをみるフレイザーの間を通してホイビィアからソンへのパスが通せるはず。
しかし、ソンの顔を出すタイミングが遅く、むしろホイビィアが落ちることによってビルドアップが停滞することに。
前の項で書いたCBでニューカッスルのIHを釣り出してCB→ボランチ→シャドーのルートでライン間のシャドーにボールを届ける前進方法でも、ソンは前を向ける場面にも関わらずファーストタッチでターンすることができないことがあり、スペースの狭いライン間でプレーする上で必要な周辺状況の認知、次のプレーの判断の精度、スピードの部分でやはり今のタスクに適していないなと感じてしまう……
ホイビィアが落ちることによってボランチはベンタンクール1人になり、サン=マクシマンが不用意に外切りの立ち位置を取り、前の項で述べたCB→ボランチ→WBのルートでニューカッスルのWGとIHの間を通す前進ができるチャンスがあったときも、ベンタンクールがウッドとサン=マクシマンの間に立てておらず、ロメロにボランチへのパスという選択肢を与えられていないシーンもあった。
・1st halfまとめ
ニューカッスルの守備に対してうまくボールを運ぶことができることも多かったものの、自らの可変でうまくいかないパターンを作ってしまっていたスパーズ。
ニューカッスルはミドルプレスの際もIHの押し上げが遅く、ウッドがまずダイアーにプレッシングしてその後左右のCBにパスが出たときに、ボランチを使われないようにウッド自身がプレスバックしてダイアーを空けてしまうという場面が散見され、プレスの整備は足りてない様子だったので、スパーズがボールを持つ時間はかなり多かったが、なかなか点に結びつけることができない。
36分、ロメロとダイアーがロリスを挟むように立ち、左肩上がりの4バックのような形でビルドアップするスパーズに対して、ニューカッスルはサン=マクシマンが外切りでロメロに寄せ、ボールサイドボランチのベンタンクールにはジョエリントンがつく。ここでロメロがさすがの配球力を活かしてサン=マクシマンとジョエリントンの間を通してクルゼフスキへ。クルゼフスキがレイオフでエメルソンに落とし、前向きの選手を作ることができていればよかったが、ここでクルゼフスキへのボールをターゲットがカットし、その流れでウィロックがペナルティエリア前の良い位置でフリーキックをゲット。
シェアのデイビスとソンの間を抜くキックで38分35秒にニューカッスルが先制点を決めた。
絶対に落とせない一戦で籠城には慣れているであろう相手に先制され、不穏な空気が流れ始めたところだったが、直後にニューカッスルのプレスに対してロリスから浮いているドハティーへの正確なロブパスでひっくり返し、スペースを得たソンのさすがの運びでコーナーを得る。
そのコーナーの流れからソンのすばらしいインカーブクロスにデイビスが見事にヘディングですらして42分13秒に同点。
大きすぎる即座の同点弾、スパーズが前半で追いついて試合を振り出しに戻す。
得点後、そのままの勢いでニューカッスルを押し潰そうとスパーズはハイプレスでボールを捨てさせる。この得点直後のプレスがとても良かった。すぐに点を返されて嫌なムードのニューカッスルの気持ちを上向きにさせない前からの守備。これこそコンテの求めている試合運びだ。
終盤にスパーズが得点&ハイプレスでボールを奪う姿勢を見せて良い形で後半を迎えることに。
3. 2nd half
スパーズはハーフタイムにホイビィアとベンタンクールの位置を入れ替えて後半スタート。
これで前半停滞の原因となっていたホイビィアが降りるビルドアップをやらなくなり、2ボランチがしっかりと空いて3トップの間の門に顔を出すように。
シェアのサイドチェンジのミスからのカウンターでケインのクロスにファーでドハティーが詰めて47分22秒にスパーズは勝ち越し。
相手のミスを見逃さなかったスパーズだったが、勢いそのままプレッシングを敢行しようとするも少しの間ジョエリントンと位置を入れ替わっていたサン=マクシマンにライン間でスペースを与えたくなかったからか、ボランチがアンカーのシェルヴィーを抑えに行けずにプレスが空転。
得点と共にニューカッスルの戦意を削ぐハイプレスはかけられなかったものの、逆に今度は逆転されて焦るニューカッスルの雑なプレスを利用して得点することに。
IHが押し上げられていない状況でウッドがロリスまでプレッシング。ロリスが空いているホイビィアを使ってダイアーが前向きでレイオフを受ける。ホイビィア→クルゼフスキ→ケインと繋ぎ、ポストからすぐ動き出してエメルソンに縦スライドしていたターゲットの裏に走ったクルゼフスキへ。逆足の右でのクロスもしっかりとゴール前のソンに届け、ソンが落ち着いたトラップからのシュートで53分38秒に3点目。
59分にジョエリントン、マンキージョに代えてマーフィー、ギマラインスを投入したニューカッスルは、並びを〔3-4-3〕へ変更。ビハインドの状況をどうにかするべく、スパーズに噛み合わせる形で前からのプレッシングを敢行しようとする。
しかし、スパーズの3点目のときのようにボランチが押し上げられていなかったり、3トップのプレッシングも速さ、連動性共に足りず、中途半端にボランチが縦ずれした裏のスペースでスパーズのシャドーにボールを受けられる場面も何度も見られた。
さらにうまくボールを奪えたときもその後の保持でうまく振る舞えず。〔5-4-1〕での撤退守備の色を強めるスパーズに対して、サン=マクシマンのサイドに寄せてからボランチ経由で右サイドに持っていく形は見られたものの、逆に持って行ってからの崩しができず。
62分58秒には押し込まれたところからスパーズのバックパスに対する押し上げで前と後ろの意思疎通ができずに、またボランチのホイビィアをフリーにしてしまったところからドハティーのクロスをエメルソンに触られる形での失点を喰らう。
その後もうまくプレスが機能したときも個々の判断が遅く、ショートカウンターを成立させられない場面が続く。
スパーズは、75分にベンタンクールに代えてウィンクス、76分にクルゼフスキに代えてモウラを投入し、81分のエメルソンからベルフワインへの交代で〔4-2-3-1〕に。
シェアの縦パスにサン=マクシマンのトラップが浮いたところをダイアーが奪い、ソンからモウラに繋いで彼得意のドリブルでバーン、ラッセルズの2人を抜いてベルフワインのゴールをお膳立て。82分52秒に5点目を追加。
後半、ニューカッスルのミスから勝ち越し、焦って出てくる相手を見事にかわすビルドアップで主導権を渡さなかったスパーズが大事な勝ち点3をゲット。5-1と代表ウィーク明けを気持ちの良いスコアでスタートさせた。
4. 感想、総括
スパーズ側としては、ニューカッスルの人為的なミスや中途半端なプレスもあって比較的ゲームコントロールがしやすい試合ではあったと思う。
ただ相手のボランチの奥を見てパスが出せるロメロ、タイミングよくWGとIH、シャドーとボランチの間に顔を出すクルゼフスキは相変わらずすばらしかったし、後半にドハティーとソンが位置を入れ替え、ソンが大外高い位置でマーフィーをピン留めして、ドハティーがフレイザーとウィロックの間に顔を出してソンが作ったスペースを享受して間受けできていたシーンもすごく良かった。
どうせニューカッスルのWGが外切りするなら大外は高い位置で張っとこ!的な考えでやったことなのかなんなのかわからないが、ソンに苦手なライン間でのプレーをさせずに高い位置に張らせ、WBに間受けをさせても一応こなせていたのはドハティー左起用のおもしろさだなと。
後半はソンがフレイザーとウィロックの間に顔を出すのが早くなったとも感じたし、左サイドについてはハーフタイムに何か指示があったのかも。
ハーフタイムの指示というと、ボランチの左右を入れ替えてボランチを最終ラインに落とさなくなった修正も見逃せないが、今まで何度もホイビィアの列落ちでリズムが作れないという試合はしてきているし、初めからホイビィア右、ベンタンクール左でいいのでは?とは思う。
反省点は前半のホイビィア列落ちビルドアップと後半の得点後にプレッシングにいくのかいかないのかやや曖昧な時間があったこと。
ニューカッスルがやらかしたのを利用してスパーズが得点したように、中盤がプッシュアップしていない状況で前だけがプレッシングをかけて間延びしてしまうことは、相手のレベルが上がれば致命傷になりかねないので、プレスにいくときといかないときはしっかりと前と後ろで共通認識を持ってもらいたい。
ニューカッスルはブロック守備もミドルプレスもビルドアップも穴を埋めきれていないなあという印象だった。
個人的なMOMはデイビス。
ロメロやクルゼフスキなど試合を通じて圧巻のパフォーマンスを見せた選手はいるものの、あの失点直後の同点弾は大きすぎた。
あれが決まっていなくてニューカッスルの前に出る姿勢が強くなり、チーム全体でハイプレスに移行してきていたらと思うとゾッとする。
5. おわりに
いかがだったでしょうか。
これまで長い期間投稿が遅れる日々が続いており申し訳ありませんでした!
今回は、代表ウィークを経て久しぶりに次節が始まる前に投稿し、クオリティも少しは戻ったかなと思います😅
2週間の休みをもらい、やっと記者会見など最新のスパーズの情報に追いついてきたので、これからはなんとか以前のように遅れずに投稿していきたいと考えております。
感想やご質問などお待ちしておりますので、ぜひコメントやTwitterの引リツ、DMなどでよろしくお願いします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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