〜ボール保持をボール保持で崩す〜 21/12/22 《21-22カラバオ杯準々決勝》 トッテナム vs ウェストハム
こんにちは。えつしです。
今回は、21-22カラバオ杯準々決勝、トッテナム対ウェストハムの試合をレビュー。
1. スタメン
・スパーズ
ロリス
サンチェス-ダイアー-デイビス
ドハティー-スキップ-ホイビュア-レギロン
モウラ-ベルフワイン
ケイン
61’ ベルフワイン⇄ソン、モウラ⇄ウィンクス
77’ スキップ⇄デレ・アリ
83’ レギロン⇄エメルソン、ドハティー⇄タンガンガ
スパーズは、直近のリヴァプール戦からエメルソン、エンドンベレ、ウィンクス、デレ・アリ、セセニョン、ソンに代えてドハティー、スキップ、ホイビュア、レギロン、モウラ、ベルフワインを起用した〔3-4-2-1〕。
リヴァプール戦の〔3-5-2〕ではなくここまで基本フォーメーションとして使ってきた〔3-4-2-1〕を選択。
・ウェストハム
アレオラ
ジョンソン-ドーソン-ディオプ
アシュビー-ソーチェク-ライス-マスアク
ヴラシッチ-ランシーニ
ボーウェン
68’ ヴラシッチ⇄ベンラーマ、ランシーニ⇄フォルナルス
80’ アシュビー⇄ヤルモレンコ
ウェストハムは、直近のアーセナル戦からファビアンスキ、ツォウファル、フォルナルス、アントニオに代えてアレオラ、ジョンソン、アシュビー、ヴラシッチを起用した〔3-4-2-1〕。
ツォウファルがアーセナル戦での退場によって出場停止。
2. 1st half
2-1.ウェストハムの5-2-3の守備、スパーズの左右のCBからの組み立て、ボランチの並行サポート
ゾーン1では前線の3枚でスパーズのボランチを消しつつ、トップのボーウェンがダイアーに寄せて、ダイアーから左右のCBに入ったときにはシャドーのヴラシッチとランシーニがボランチへのパスコースを消しながら内から寄せる形のウェストハム。
FWラインを突破されて逆サイドに展開されたりして押し込まれた後は〔5-4-1〕の守備ブロックに移行し、シャドーの2人もブロック形成に加わる形に。
対するスパーズは〔3-4-2-1〕でのビルドアップでゴールキックのときも基本は繋いでいきます。
ウェストハムは2ボランチに対して2ボランチを当ててくることはせず、あくまでも前線3枚の立ち位置と寄せ方でボランチを消す形だったので、シャドーが内から寄せてくる間にスパーズの左右のCBは運ぶ余裕があります。
左右のCBが運んでウェストハムの陣形を押し下げ、幅を取ったWBからのクロスやボランチの攻撃参加で厚みをつける形や、左右のCBからボランチのスライドが間に合わない内にシャドーにボールをつけ、モウラのフリックなどのダイレクトプレーで崩す形でウェストハムを攻略していこうとするスパーズ。
さらにソーチェクとライスがスパーズの両シャドーへのパスを警戒して2人の間の距離が空いた場合には、ダイアーが積極的に2人の間にできた門を通して一気にケインにつける縦パスを狙ったり、左右のCBからWBにボールが入った際もタイミングよくスキップやホイビュアが並行のサポートを作って逆サイドに展開していきます。
このWBに入ったときの両ボランチのサポートは、コンテ体制になって試合を重ねるにつれてしっかりできるようになってきているように思います。
2-2. スパーズの5-2-3ミドルブロック
スパーズはボール非保持の局面では〔5-2-3〕のミドルブロックを作ってウェストハムと同様にまずは前線の3枚は相手のボランチを使わせないように。そこからCBにプレスに出ていく頻度はウェストハムと比べると少なかったです。
それに対してウェストハムはライスを左下に降ろしてマスアクを押し出すような形にし、スパーズの2-3の五角形の外でボールを引き出しますが、そこには懸命にスキップがスライドして前進を許しません。
28分9秒、サンチェスの運びでウェストハムを押し下げ、モウラのパスがカットされるも再びスキップのすばらしいボール奪取からウェストハムを押し込み、パスを受ける前からドーソンに体をつけて腰を落として下に潜り込むような形でのベルフワインのポストプレーから、パス&ゴーで走ったホイビュアに繋いでPA深いところからのクロスにベルフワインが合わせてスパーズが先制。
その後31分27秒、2-1.で先述したダイアーからウェストハムの2ボランチの間を通してケインに通すパスを、ゴールキックの流れから2ボランチの間が空いていないにも関わらず狙ってしまい、カットされてショートカウンターでウェストハムが同点とします。
しかし、これまたそのわずか数分後、ウェストハムを押し込んだ状況でベルフワインが右PA角付近でランシーニに正対し、懐にボールを置いて揺さぶり、足を出してきたところでボールを突いて突破。後ろから必死に食らいつこうとするランシーニに身体を当てられても倒れないフィジカルを見せ、33分52秒にベルフワインのクロスからモウラが得点します。
足元にあるボールを扱うベルフワインの技術と、一瞬の隙を見逃さず身体を先に相手の前に入れられるアジリティ、当たられても耐えうる強さが詰まった良いゴールでスパーズが再び1点リード。2-1で試合を折り返します。
3. 2nd half
後半、スパーズはプレスの勢いを強めます。
しかし、ウェストハムも前半全くと言っていいほどうまくいっていなかったボール保持を改善。
ライスとソーチェクがスパーズの3トップの脇のスペースに降り、さらにランシーニが降りて並行のサポートを作ることでポゼッションを安定させ、どんどんスパーズの守備陣形を揺さぶっていきます。
前半とは違い、ライスだけでなくソーチェク、さらにはランシーニが並行サポートではなく自らこのアクションを行うこともあったので、スパーズもさすがにボランチがスライドするわけにはいかず、両シャドーのスライドで対応することになっていました。
しかし、前半と比べて圧倒的にボール保持は安定したものの逃げ口となったランシーニが受けてからやや単純過ぎるようにも見えるフィードを前線に蹴ってしまったり、揺さぶって大外で1対1の局面を作っても右サイドは11月に20歳になったばかりの若手のアシュビー、左のマスアクはクロスの精度がイマイチだったりしてゴールに迫ることはなかなかできません。
ウェストハムの修正をみたスパーズは61分にベルフワインに代えてソン、モウラに代えてウィンクスを投入し、〔3-5-2〕に変更。ミドルプレスの際のプレッシングは2トップ+ボールサイドのIHがCBまで出て、ウェストハムの降りる動きにはシャドーではなくIHのスライドで、対応しやすい形に。
この修正でフロントスペースを使って簡単に揺さぶられることはなくなりましたが、68分にヴラシッチに代わって出てきたベンラーマが細かな動き直しとワンタッチでの捌き、低い位置で受けてからの推進力のある運びを見せ、ウェストハムの攻撃を牽引。
スパーズの選手の人数は揃っていても、ベンラーマ、マスアク、さらにライスが加わってくるコンビネーションで左サイドからスパーズゴールに迫ります。
最終的にはベンラーマの奮闘は虚しく、スパーズが守り勝って2-1のままゲーム終了しましたが、狭いスペースでも何度も動き直してボールを受け、受ける前に繰り返していた首振りでしっかり周囲の状況を把握できているからこそできる少ないタッチでの味方とのコンビネーションは圧巻でした。
4. 総括、感想
スパーズ側は、いつも通りコンテの修正力の高さが見られたゲームとなりましたが、後半は長い時間ウェストハムにボールを保持され、あまりチャンスを作れなかったのも事実です。さすがにスキップなどのここまで出場機会が多い選手、さらにコンテが試合後の記者会見で言及していた通り、コロナからの復帰間もないホイビュアなどには疲れが見えました。
ウェストハムの後半の修正、さらにベンラーマのこの力には驚かされました。
今回の後半のような相手のプレッシングの圧力が強まる展開では、スパーズにもランシーニや特にベンラーマのように降りて後ろを助けられる選手が欲しいところです。
ダイアーが運んで消されているアンカーのウィンクスへのパスコースを作ってパスを出すシーンが見られたり、最近アヤックスが狙っているとの噂もあるベルフワインがすばらしいポストプレーでコンテの言う通りCFでの起用の可能性を見せたりと着実にチームは良い方向に向かっているので、ロ・チェルソ辺りがスパーズのベンラーマになってくれれば最高だなと勝手に思っています。
試合全体としては、スパーズの保持での優位を後半からウェストハムが自分たちがボールを保持することによって崩した良いゲームでした。
5. おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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