〜守備の曖昧さと持ってる男が生み出したドラマ〜 22/1/19 《プレミアリーグ21-22 第17節》 レスター vs トッテナム レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、プレミアリーグ21-22第17節、レスター対トッテナムの試合をレビュー。
本来ならば12月に開催されているはずだったこのゲーム。レスター側のコロナウイルスの影響で延期となっていたものが、今回開催されることとなりましたが、またしてもレスターの台所事情は苦しい状況です。
両リーム直近のリーグ戦が延期となり、いつもより準備時間は多かったであろうこの試合、果たしてどのような様相を呈したのでしょうか。
1. スタメン
・レスター
シュマイケル
チョードリー-ソユンジュ-ヴェスターゴーア
オルブライトン-マディソン-ティーレマンス-デューズバリー=ホール-トーマス
ダカ-ルックマン
53’ トーマス⇄マディソン
75’ ダカ⇄バーンズ
88’ デューズバリー=ホール⇄スマレ
レスターは、直近のFA杯ワトフォード戦からウォード、デイリー・キャンベル、ブラント、アヨセ・ぺレス、バーンズに代えてシュマイケル、ヴェスターゴーア、デューズバリー=ホール、トーマス、ダカを起用した〔3-5-2〕。
あまりにも数が多すぎるのでそれぞれの理由は割愛しますが、エヴァンズ、フォファナ、アマーティ、カスターニュ、リカルド・ペレイラ、バートランド、エンディデイ、ナンパリス・メンディ、イヘアナチョ、ヴァーディが欠場😅
週末のバーンリー戦が延期となり、中10日でこの試合を迎えます。
・スパーズ
ロリス
タンガンガ-サンチェス-デイビス
エメルソン-スキップ-ウィンクス-ホイビュア-レギロン
モウラ-ケイン
46’ エメルソン⇄ドハティー
74’ ウィンクス⇄ロ・チェルソ
79’ レギロン⇄ベルフワイン
スパーズは、直近のカラバオ杯チェルシー戦からゴッリーニ、ロ・チェルソ、ドハティーに代えてロリス、スキップ、レギロンを起用した〔3-5-2〕。
ロメロ、ダイアー、ソンが負傷欠場、ベルフワインがベンチに復帰。
ロメロはトレーニングには戻っているものの、まだ大事を取ってベンチ外。ベルフワインは週末のアーセナルが開催されていたとしてもメンバー入りすることはできたみたいです。
週末のアーセナル戦が延期となり、中6日でこの試合を迎えます。
2. 1st half
2-1. レスターの2通りのビルドアップに対するスパーズの曖昧な守備
欠場者続出でチームの核となる選手を複数欠いているレスターでしたが、この試合に勝利するために、たっぷりあった中日を使ってしっかり準備してきました。
基本となるフォーメーションは〔3-5-2〕。そこからゾーン1でのビルドアップの際にはチョードリーが右に開いてオルブライトンを押し出してGKのシュマイケル+4バックでビルドアップ。
ゾーン2になると基本の3バックに戻してのビルドアップ。
まずはレスターが用意してきたこのビルドアップについて考えていきます。
試合開始から間もない3分46秒のシーン。レスターは4バックでビルドアップ。ヴェスターゴーアからのロブパスがチョードリーへ届き、そこから並行のパスを受けたティーレマンス、スキップとウィンクスの間に受けにきたマディソンと繋がれ、逆サイドのトーマスへ展開し、最終的にデューバリー=ホールのクロスにダカがニアで合わせるところまでいかれてしまいます。
この日のレスターの前進のキー、そしてスパーズがいかに対応するかを困っていたのはこのティーレマンスのところ。
レスターの4バックでのビルドアップに対してスパーズはSBの位置にいるチョードリーとトーマスに基本的にはIHのスライドで対応。
ここでチョードリーやトーマスからティーレマンスへの並行のパスを誰がケアするのかがポイントになってきます。
スパーズの2トップはCBがボールを持っているときは2人でティーレマンスを挟むような立ち位置でアンカーを消し、内側からティーレマンスを消しながらCBに寄せてボールを外に誘導。
そうやってレスターのSB(4バックでビルドアップする際のチョードリーとトーマス)にボールを出させた際のティーレマンスのサポートが秀逸で、献身的にモウラやケインの後ろのスペースを左右に動き回り、ビルドアップを円滑に進めます。
そのティーレマンスの動きに対し、スパーズはCBに寄せた方じゃないもう片方のCFがついていくのか、アンカーのウィンクスが出ていくのかというところが曖昧に見えました。
その曖昧さををついてレスターはティーレマンスからハーフスペースのマディソンへのワンタッチでの縦パスや、スパーズの3センターの前を横切るサイドチェンジで前進。ティーレマンスの速いサイドチェンジからスパーズの陣形を押し下げてサイドに流れたルックマンがタンガンガと対峙するシーンは何度も見られましたし、左サイドにスパーズの3センターが寄っている中PA前で虎視眈々とミドルシュートでの得点を狙うマディソンには怖いものがありました。
ただスパーズも全くプレッシングが通用していなかったわけではなく、ホイビュアのサイドはホイビュアがカバーシャドーでティーレマンスを消しながらチョードリーに寄せ、レギロンがオルブライトン、デイビスがマディソンについていくことによってプレスを成立させることができているときもありました。
スパーズは、レスターの3バックでのビルドアップに対しては4バックのときと変わらず2トップでアンカーを監視、WBがWBまで縦スラで出ていき、左右のCBにボールが出たときはIHが縦に出ていく守備。IHをCBまで出すものの、2トップの優先順位はCBへのプレスよりもアンカーへの縦パスを入れられないことであり、前から奪いにいこうという意思はあまり感じられませんでした。
左右のCBにボールが出たときに3センターのスライドが間に合わない場合はボールサイドのCFが運びを牽制するために寄せていきます。その場合、どうしてもCFが内から寄せていく形では左右のCBに余裕を与えてしまうことにはなるのですが、レスターのCB、特にヴェスターゴーアに自ら運んで1stDFラインを越えるプレーがなかったことに救われていました。
ルックマンがサイドに流れてエメルソンをピン留めすることによってエメルソンがトーマスまで縦スラできず、スキップがヴェスターゴーアに出ていけないようなシーンもありましたが、フリーのヴェスターゴーアが運ぶわけでも高精度のロングフィードを持っているわけでもなく、むしろ無理に縦パスをつけようとして引っ掛けてしまうことも多々ありました。
2-2. タンガンガを張らせるスパーズのビルドアップ
続いてスパーズのボール保持について。
プレッシングの曖昧さは気になったスパーズでしたが、勇気を出してウィンクスを中心とする中盤がティーレマンスを捕まえにいけたときはボールを奪うこともできており、保持の時間がないわけではありませんでした。
そしてその保持時のビルドアップについてですが、スキップやウィンクスがタンガンガの位置に降り、タンガンガを押し出して右に張らせる形を多用していました。
しかし、タンガンガがデューズバリー=ホールより高い位置でボールを受けることによってトーマスを引き出すことが何回かできていたのものの、基本トーマスの少し内側にポジションを取っていたエメルソンが斜めのランニングでその裏のスペースを使えず。
タンガンガ自身もボールを受ける前の首振りができておらず、出し手へのパスの要求にばかり頭が持っていかれているように見えました。それによってボールを受けてからの素早いプレーの実行ができていないので、トーマスが出てこずフリーでボールが持てたときもパスミスしてしまい、レスターの3センターがスパーズの中盤を潰すために前に出ていてライン間にスペースがあるうちに斜めのボールをケインに届けるというようなことができていませんでした。
次はレスターの2トップに対してタンガンガを含めた3バックで数的優位を作って左右のCBが運ぶというビルドアップのパターン。
レスターの2トップの間が空いており間に顔を出すウィンクスにつけられそうな場面でもつけなかったり、デイビスが運んで1stDFラインを越えてから並行のウィンクスを使えばライン間にボールが届けられそうな場面でも使わなかったりで、IHはIH、WBはWBと人への意識強く守備をしていたレスターに対して空いてくるアンカーを使えずにうまく前進できません。
運んだCBからうまくウィンクスを使えたのが序盤の2分台のシーン。
デイビスが運んで1stDFラインを突破し、並行サポートのウィンクス、3センター脇のスキップ、エメルソンと繋いでサイドチェンジ。最終的にはスキップのチャンネルランからのクロスでコーナーキックを得ました。
2-3. 1st halfまとめ
GKを含めるビルドアップと4バックでのビルドアップの2種類でボールを前進させようとするレスターに対してスパーズは対応に曖昧さがあり、ホイビュアがウィンクスにプレスに来いと怒っている場面もありました。
そんな曖昧さがあったからか、レスターが4バックでビルドアップしている際にスキップとエメルソンの2人でトーマスへプレスにいってしまい、ルックマンのレイオフでデューズバリーを使われ、降りてからすぐにスプリントしたルックマンにライン間でボールが渡り、2トップのコンビネーションで崩されてダカに先制ゴールを奪われてしまいました。
このシーン以外でレスターが4バックでビルドアップしているときにはIHのスライドでSBに対応していたので、ここはエメルソンが出ていってはいけないところだったと思います。
プレッシングに曖昧さはあるものの、中盤が勇気を持って前に出れたりヴェスターゴーアが無理な縦パスを引っ掛けたりした際にはショートカウンターで何度もチャンスを作れていたスパーズ。
ヴェスターゴーアのデューズバリー=ホールへの縦パスをスキップがカットし、ヴェスターゴーアの裏に抜けたケインへウィンクスが素早くロブパスを送り込み、切り返しでソユンジュを完全に出し抜いてケインが37分33秒に同点弾を決め、同点で試合を折り返します。
3. 2nd half
スパーズは、ハーフタイムに判断ミスで失点の原因となってしまったエメルソンをドハティーに代え、前半よりもはっきりとチーム全体で陣形を押し上げるように。前半ティーレマンスをどう抑えるかが曖昧で、彼を使われてレスターにうまく前進されていたのをウィンクスがしっかり出ていくことによって改善。
さらに、降りるマディソンにはデイビス、デューズバリー=ホールにはドハティーとDFラインの面々が降りていくレスターの選手を捕まえにはっきりついていき、ウィンクスの縦スラが間に合わないときにはケインやモウラがプレスバックしてティーレマンスを消すように。
これによって守備を修正し、ボール保持の時間を増やします。
しかし、ボール保持の時間は増えたものの前半のチャンスの多くはショートカウンターからのものであった通り後ろから効果的にボールを運んで決定機を作れていたわけではなかったので、チャンスの数が増えるわけではないまま時間が過ぎていきます。
そして後半もあと15分程になったとき、レスターの2点目が生まれます。
モウラがチョードリーに剥がされ、ティーレマンスのがホイビュアとスキップの間に顔を出すマディソンに縦パス。パスが向かってくる間に身体の向きを作り、右足で引っ掛けてダイレクトでバーンズに繋ぐマディソンのとんでもプレーが飛び出し、そのままボールを受け直して75分2秒にゴール。
前半から散々ティーレマンスからの縦パスを引き出し、ミドルシュートでスパーズゴールを脅かしてきたマディソンがファイナルサードでも輝けることを見せつけ、レスターが勝ち越します。
得点の直前にダカに代わってバーンズを投入していたレスターは陣形を〔5-4-1〕に変更。1点のリードを守り切る姿勢。
それをみてスパーズも79分にレギロンに代えてベルフワインを投入し、ケインとベルフワインの2トップの〔4-4-2〕のような形に変更。
システムを変更し、交代で入ったベルフワインもすばらしいポストプレーを見せるものの、なかなかレスターゴールに迫るチャンスを作ることができないままアディショナルタイムに突入。
そして与えられた5分の追加時間も終わろうとしていたとき、シュマイケルのゴールキックをサンチェスがクリアした流れからフリーのホイビュアにボールが渡ります。そして裏に抜けるドハティーを一瞥したホイビュアからDFライン裏へのすばらしいロブパスが出て、ドハティーがトラップしてソユンジュ、ドハティーと数回跳ね返ってこぼれたボールは詰めていたベルフワインの元に。ベルフワインが力強く蹴り込んで値千金の同点ゴール。
それを見て、苦しみはしたもののなんとか最後に勝ち点1を得ることができた、そう思っていたところ、さらなるドラマがスパーズサポーターを待っていました。
レスターボールでの試合再開。バーンズからボールを受けたティーレマンスがベルフワインをかわして少し運んだところから縦パスを狙います。
それをホイビュアがカットし、間延びしたライン間に位置するケインへ。CBが寄せてきていないことを察知したケインは反転からすばらしい質のスルーパス。そこに抜け出していたのはまたしてもベルフワイン。出てきたシュマイケルをかわしてやや角度がないところからのシュートでしたが、こけるほどしっかり腰を捻って打ったシュートはカバーに入ったソユンジュを嘲笑うかのように転がってファーポストへ。途中出場の持ってる男、ベルフワインがあまりにも劇的な2点目を決め、アムステルダム以来のとんでもない逆転劇で最終スコアは2-3、スパーズが勝ち点3を手にすることとなりました。
4. 感想、総括
試合中は誰も想像していなかったアディショナルタイムの出来事に全て持って行かれましたが、冷静に振り返ってみるとチームとしての守備時の曖昧さとビルドアップにも課題が見られた試合でした。
失点に繋がったエメルソンの判断ミスのようにチームとしての守備のやり方が共有できていないことや、ボール扱い、パスの判断、精度がイマイチなタンガンガを右に押し出すビルドアップ、レスターのように外→内のパスでアンカーのウィンクスを有効活用できていなかったことは要改善です。
後半に行っていた、中盤がプレスに出られない場合は2トップがプレスバックして相手のSBからアンカーへの外→内のパスを遮断することは今後とも必要となってくると思いました。
わかりやすく、残り少ない移籍期間でフロントスペースを動き回ってもっとビルドアップに貢献できるアンカーの選手を獲得してくるのか、それとも既存のCB、中盤の選手の意識を改善してビルドアップでの中盤の関わり方を変えていくのか。。
5. おわりに
もちろん改善点はあった試合でしたが、フットボールが生み出す最高の熱狂を味わえたことが何よりもうれしいことです。
アヤックスへの移籍の噂も絶えなかったベルフワインですが、ゴール以外にもすばらしいポストプレーで起点となることが十分にできていたのでこれからは今までよりも出場機会が増えることも大いに考えられます。
この移籍市場でケインの控えストライカーを獲得するのはまたしても叶いそうにありませんが、自らの活躍でスパーズでの未来を勝ち取ったと思われるベルフワインが、その役割を含めて後半戦の重要なピースになってくれることに期待しましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事が良かったと思ったら、投げ銭お願いします。 全力でお礼にいきます!!!