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〜ついに崩壊3失点、スキップの新たな弱点〜 21/9/11 《プレミアリーグ2021-22 第4節》 クリスタル・パレス vs トッテナム レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、代表ウィーク明け初めての試合、プレミアリーグ第4節クリスタル・パレス戦です。
スパーズは、代表ウィーク中に南米勢のゴタゴタや、ソン、ベルフワイン、さらにスキップやセセニョンの怪我があり、出場できない選手が大量にいる状況でこの試合を戦うことに。首位で中断期間を迎えたところから一転して窮地に立たされることとなりました。
そんな中、土曜日のランチタイムキックオフで始まった試合は、どのような展開になったのか?レビューしていきたいと思います。
1. スタメン
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パレスは、直近のウェストハム戦からスタメンの変更はなしの4-3-3。
スパーズは、直近のワトフォード戦からサンチェス、ベルフワイン、ソンに代え、移籍市場終盤に来た新加入のエメルソン、ウィンクス、ルーカス・モウラを起用した4-3-1-2。
代表ウィーク中に怪我を負ったスキップはなんとかこの試合に間に合いました。ベンチには、今シーズン初めてエンドンベレが入り、主力を多く欠く中、オモレ、スカーレット、マーカンディなどの若手の姿も。
2. 1st half
試合開始後、なかなか落ち着く時間が見られない中、12分にダイアーが負傷し、代表ウィーク中に怪我から復帰したロドンに交代して、試合開始早々スパーズは交代枠を1枚CBに使うことに。
パレスはヴィエラ監督になって、従来のザハやエゼなどのタレントを活かした堅守速攻から、ボールを握っていくスタイルにチャレンジしていると聞いていた通り、最終ラインからボールを繋いでいく姿勢が見られましたが、ビルドアップで詰まるとシンプルに前線のベンテケを使ってプレス回避。
逃げ所にある程度アバウトなボールでもしっかり収められるベンテケがいるのは、パレスが新しいスタイルに挑戦する上での保険として、大きいなと思いました。
基本的に、パレスはビルドアップ時に目立った可変はなくボールを繋ぎます。
それに対するスパーズの守備ですが、これまでの4-3-3同様、相手に中央突破をさせず、外回りのビルドアップを強いるやり方を採用。相手のSBにはIHがスライドして対応します。
しかし、この試合では今まで以上にこの中盤3センターでの守備が機能しませんでした。
ここで先日、日本代表相手に同じ4-3-1-2を使い、日本を苦しめ、最終的に勝利したオマーン代表を参考に、3センターでの守備について考察してみます。
オマーン代表は、相手のSBにボールが渡った際の3センターのスライドがもっと速く、2トップとトップ下の3枚もスライドして相手の中盤へパスを出させず、簡単にサイドチェンジをさせないようにしていました。さらにCB経由でサイドチェンジされた場合も、相手のSBに対して無闇にSBを出して背後のスペースを空けるのではなく、我慢して3センターのスライドを待つ、という対策をしっかり用意。
背後のスペースを空けない意識と、中央の6枚の献身的なスライドが徹底されていました。
それに対して今回のスパーズですが、スライドが遅く、3センターのギャップが大きく空いていますし、2トップとトップ下の3枚での相手の中盤への制限もできていないので簡単にサイドチェンジをされてしまいます。何よりオマーンと大きく違ったのが、DFラインの背後のスペースの管理です。
14分43秒のサイドの張った位置で受けたギャラガーから、CBとSBの間を抜けるチャンネルランの動きで裏に抜けたアイェウにボールが出たシーン。ウィンクスは途中でアイェウに付いていくのをやめ、レギロンも視野外から飛び出してくるアイェウに気付いていません。この時点で疑問に思っていましたが、次のシーンはもっとわかりやすく問題点が表れていました。
18分34秒、先程言及した相手の中盤への制限ができていない中、左サイドからクヤテを使って簡単にサイドチェンジされ、右の大外に張ったアイェウにボールが渡り、レギロンが釣り出されます。アイェウはウォードにボールを戻し、レギロン裏のスペースにギャラガーがチャンネルラン。そのランニングに対し、ウィンクスとロドンがお互い「付いていけ」と指示を出しているように見えます。結局どっちつかずでウィンクスはだらだらと下がり、ロドンも少し外に釣り出されます。さらにスキップはロドンが出て空いたスペースを埋めるために最終ラインに吸収され、ホイビュアも全然スライドしてきていないので、DFラインの前のスペースはガラ空きに。結局ウォードはそのスペースに向かってフリーでドリブルすることができました。ウィンクスとロドン、どちらがいくか迷った結果、どちらも中途半端に対応し、そのまま裏に走ったギャラガーを使われてもおかしくない場面でしたし、最終的にボールホルダーがどフリーでバイタルに侵入していくことになった驚きのシーンでした。
このように、この試合パレスが多用していたチャンネルラン、背後へのランニングに対し、どう対応するか何も決まっていないように見えました。
昨シーズンの第9節、シティ戦で勝利した時はシティのIHのチャンネルランに対してボランチのシソコが付いていく役割をこなしていましたし、ここは守備の原則としてチームで共有しておくべきところであると思います。
そんな感じで、左サイドはギャラガーのランニングなどを中心に攻められ、右サイドはエメルソンがザハにボコボコにされる始末。左SBのミッチェルからの浮き球を受けたザハをいとも簡単に前を向かせたり、背負われたところからあまりにも簡単に反転されたりと、普段タンガンガをみていたというのもありますが、予想以上に対人守備の脆さを露呈してしまったエメルソンでした。
スパーズは、ビルドアップに関してもいつも通りうまくいかず、ウィンクスが入ったことでいつも以上に後ろに重たい様相に。ボールがうまくライン間に入ったのは、13分27秒にルーカス・モウラが相手を引きつけてホイビュアに落とし、相手の陣形が崩れている間にライン間のデレに縦パスが入った時や、30分25秒にギャラガーのウィンクスへの寄せが遅れ、ウィンクス→スキップとボールが繋がってライン間のルーカス・モウラにボールが入った時だけでした。
30分25秒に良い形でボールを受けられた後のルーカス・モウラのプレー選択に関しても、パレスの選手とは大きく異なりました。ギャラガーやミッチェルがチャンネルランを繰り返し、サイドでボールを持った味方を助ける動きをしていたのに対し、ルーカス・モウラは大外のエメルソンにボールを渡した後、ゴール前に上がっていき、エメルソンがサポートの全くない状況でサイドで1対1をすることに。結局エメルソンは苦し紛れに誰もいないハーフスペースにボールを蹴り込み、GKのグアイタに回収されます。
A big 45 minutes ahead.
— Tottenham Hotspur (@SpursOfficial) September 11, 2021
Come on lads! 👊
🦅 0-0 ⚪️ (46’)
上のツイートの通りシュート数0で前半を終えたスパーズ。果たして後半は何か改善が見られたのか......?
3. 2nd half
後半開始直後、相手のクリアボールを拾ったホイビュアがルーカス・モウラに繋ぎ、なんとか独力でシュートまで持っていくも、逆足でのシュートは虚しくグアイタの正面に。それ以降、ゲームはより一層パレス優勢に傾くことになります。
49分44秒にまたもやギャラガーのチャンネルランの動きにウィンクスとスキップの2人が釣られ、アイェウにカットインできるスペースを与えてしまい、そのせいでデレが下がらざるを得なくなり、空いたクヤテにボールを渡されてザハにサイドチェンジ。ザハのクロスにベンテケと同時に合わせるような形でギャラガーがシュート。ここはなんとかレギロンとロドンの決死のブロックで守りますが、ギャラガーのランニングに対する修正は後半もなく、早々にチャンスを作られます。
そして51分38秒、スパーズの悪い癖であるセルフジャッジからカウンターを受け、タンガンガがザハを倒し、取っ組み合いに。そこで1枚目のイエローカードをもらい、その約6分後にアイェウへのファールで2枚目をもらってしまい、退場となります。それを受けて、60分にウィンクスに代えてデイビスを入れ、左CBにデイビス入った4-3-2に変更。その後はパレスの攻撃をひたすらスパーズが耐える展開に。パレスは67分にクヤテに代えてミリヴォイェヴィッチを投入し、繋ぎのスムーズさを増しにかかります。
スパーズも粘っていましたが、73分45秒、前半から散々繰り返していたギャラガーのチャンネルランからクロス。それをデイビスがハンドの判定でパレスにPKが与えられます。それをザハが決めて1点目。そこから、スパーズは点を取るために前に出ますが、84分にベンテケに代わって出てきたエドゥアルドに、ザハからのクロスでデビュー戦ゴールを決められ、さらに87分にアイェウに代わって出てきたオリーセ→ギャラガーと繋がれ、最後はまたしてもエドゥアルドという形で終了間際の92分2秒にも3点目を決められゲームセット。
CBに負傷者&出場停止を出した上、0-3での敗戦となりました。
4. 総括、感想
C Palace (3.07) 3-0 (0.08) Spurs
— The xG Philosophy (@xGPhilosophy) September 11, 2021
最終的なxGは0.08と絶望的な結果となったスパーズ。欠場者が多かったとは言え、あまりにも内容が酷かったです。
ここまで3試合クリーンシートを続けてきましたが、パレスの徹底された裏へのランニングへの対処は最後までできず、中盤や前線の運動量も足りず、早くも中盤3枚のスライドに頼ったこの守備の限界が見えた一戦となりました。ソンやベルフワインがいない中、頼みの綱のカウンターでも全くチャンスを生み出せないまま、ビルドアップもまともにできませんでした。
ヌーノ監督は試合後の記者会見で、前半は試合をコントロールできていたと言っていたので、仮に、パレスにボールを握られ、シュートを1本も打てなかったことが狙い通りだったとしても、そのように守備からチームを作っていいっているのに、パレスが繰り返し行なっていたチャンネルランに対して誰が付くか全く決まっておらず、後半になってもそれが修正されていなかったのは不思議です。
スキップは課題であるビルドアップ面に加えて、守備面でも新たな課題が見えてきました。あれだけ相手が狙いを持って行っていた動きに対し、チームとしてマークが定まっていなかったのはスキップの問題ではありませんが、どこが1番空けてはならないエリアか、味方はどこにいるのかを見てポジショニングを取る判断の部分は改善しなければいけません。このスキップのポジショニングの守備時の問題やスパーズのギャラガーのチャンネルランに対するマークの曖昧さは2.で挙げた時間の映像を観ていただくとよくわかると思うので、ぜひDAZNの見逃し視聴ができる間に皆さんにも確認していただきたいです。
新加入のエメルソンも攻守共に良い場面を作れず、特に対人守備に関して大きな不安を残す結果に。
この試合唯一のポジティブな要素はロリスの相手の頭上を通すSBへのキックです。
スパーズのビルドアップの局面が少なかったのでパレスの守備に関して何も言及してませんでしたが、WGも高い位置でSBへのパスコースを切りながらCBへのプレスを行なっていました。22分15秒の様にロリスまでWGがプレスに来ることもあり、それに対しロリスはそのプレスを無効化するロブパスをSBのレギロンに蹴っていました。この相手の頭の上を越すGKからSBへのパスはゴールキックの際に前からハメに来る相手や、今回のようにSBへのパスコースを切りながら寄せて来る相手をやっつける方法として、有効な手段として知られています。
まだその精度に課題はあるものの、昨シーズンまではこれをやってほしい場面でもなかなかロリスがこのプレーにチャレンジすることはなかったと記憶しているので、カウンター時の高精度のパントキックに加え、キックの面において、今シーズン明らかにロリスの進化が見て取れると思います。
しかし、攻守両面で大幅に改良を加えない限り、このままでは昨シーズン同様ケインとソンの個に頼った試合が続き、順位は目指すところから大きく離れていくでしょう。
この敗戦を機に何か変えようと考えてくれることを願うばかりです......
5. おわりに
ダイアーが怪我、ロメロとサンチェスが使えない中迎えるレンヌ戦はロドンとタンガンガの2CBになるのでしょうか。フランスへの遠征メンバーを見る限り、パソス・デ・フェレイラとのアウェイ戦程戦力を落とすことはなさそうですが、レンヌは侮れる相手ではないので、今のチーム状況なら、アウェイでなんとか勝ち点1でも拾ってきてくれれば、という気持ちです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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