22/3/20 《プレミアリーグ21-22 第30節》 トッテナム vs ウェストハム レビュー
こんにちは。えつしです。
今回は、プレミアリーグ21-22第30節、トッテナム対ウェストハムの試合をレビュー。
1. スタメン
・スパーズ
ロリス
ロメロ-ダイアー-デイビス
ドハティー-ホイビィア-ベンタンクール-レギロン
クルゼフスキ-ソン
ケイン
88’ レギロン⇄エメルソン
90’+2 クルゼフスキ⇄ベルフワイン、ソン⇄モウラ
直近のミッドウィーク、ブライトン戦からスタメン変更なしの〔3-4-2-1〕。
スキップ、セセニョンが怪我で欠場。長い間離脱していたタンガンガは結局膝の手術を受けることになり、今シーズン中の復帰はなし。
・ウェストハム
ファビアンスキ
ズマ-ドーソン-クレスウェル
ジョンソン-ソーチェク-ライス-マスアク
ベンラーマ-ランシーニ
アントニオ
56’ アントニオ⇄ヤルモレンコ、マスアク⇄フォルナルス
84’ ランシーニ⇄ヴラシッチ
直近のミッドウィーク、セビージャ戦からアレオラ、フォルナルスに代えてファビアンスキ、マスアクを起用した〔3-4-2-1〕。
2. 1st half
ヨーロッパ大会への出場権をかけ、負けられない6ポインターが再び。
ミッドウィークにセビージャとの延長戦を戦った後、無事勝利を収めたウェストハムでしたが、スパーズと比べて中日は1日少なく、120分を戦ったことを考えるとコンディション的にはなかなか厳しいものがあったと思います。
そんな中ウェストハムが選択したのは〔3-4-2-1〕。前回対戦時と同じくスパーズの〔3-4-2-1〕に対してミラーゲームを仕掛けました。
がっぷり四つとなる配置を利用し、スパーズはプレッシングでウェストハムにボールを捨てさせることをうまく行えていました。
〔3-4-3〕でセットしたところから、3バックに3トップ、2ボランチに2ボランチ、WBにはWBを当て、横パスやバックパスの移動中にしっかりとスプリントで寄せてスイッチを入れ、チーム全体を押し上げて穴を作ることなくプレスをかけていきます。
そして8分8秒という早い時間に、そのミドルプレスから先制点を奪いました。
ズマ→ジョンソンのパスにレギロンがスプリントで寄せ、ファビアンスキまで下げさせて全体を押し上げ、嵌っている状況でクレスウェルからマスアクにボールが出たところをドハティーがインターセプト。ライスのやや斜め後ろで受けたケインがドリブルで縦に運んでドーソンを剥がしてクロスを入れ、ソンに前に入られたズマが残した左足の膝にボールが当たってオウンゴールに。
ドーソンの余りにも簡単に剥がされてしまった様子を見ると、やはりELの疲労も関係しているのかなと思ったり。
ミラーゲームを仕掛けてきた相手に対して、試合序盤から逆にミラーとなっていることの利点を活かしてプレッシングから点を取ることができたスパーズ。
ボールを持ったときにはどのような振る舞いだったのか。
まずウェストハムの守備時のシステムですが、ここはもちろんわざわざスパーズの〔3-4-2-1〕に噛み合う形として選んだ〔3-4-3〕。押し込まれていないときは、3トップはサイドに降りてスパーズのWBをみることよりも3人でソーチェクとライスの2ボランチ前のスペースを管理します。スパーズのWBにボールが入ればWBが出て対応します。
スパーズと同じように、このミドルブロックから横パスやバックパスのボールの移動中にスイッチを入れてプレッシングに移行することができればシステムを噛み合わせてきた意味はあったはずでした。
しかし、スパーズとは違いウェストハムは、プレスのスイッチ、後方の押し上げを促すようなボールホルダーへのスプリントがほとんどなく、3トップの誰かがふわふわとスパーズのCBに寄っていったり、ミドルブロックで構えるとしても3トップが開きすぎていてスパーズのCBからボランチに入ったときに自由にプレーさせすぎてしまったり。
このプレッシャーをかけたいだろうけどもかけられない感じからも、セビージャ戦の疲労が感じられました。
ボランチ間のパスでライスやソーチェクを引きつけてワンタッチでライン間に刺す縦パスや、ボランチ経由でサイドを変えることでウェストハムを押し込む展開を作っていくスパーズ。
そんな中決まった2点目は23分40秒に生まれました。
ベンタンクールがダイアーの左脇に降りてデイビスを大外に押し出すビルドアップで、ベンラーマが少し高い位置を取るデイビスを気にしてソーチェクの横まで下がっている状態。ベンタンクール→デイビスのパスが出るもデイビスは下がったベンラーマの斜め前でボールを受けていて、ウェストハムの中盤ラインを越えることはできていません。
そこで左足のインサイドに引っ掛けて後ろ向き少し内側にドリブルしてベンラーマから逃げたデイビス。そのドリブルにプレスバックしていたアントニオが反応し、内側を切らないままベンラーマと共にデイビスを挟みに行ってしまいます。そこから内側にサポートしてパスコースを作ったベンタンクールで状況を打開し、ライスの脇に降りたケインへ。
ベンタンクールが前を向いたときに裏を狙ったクルゼフスキのおかげでクレスウェルが下がってDFラインにギャップが生まれており、そこに走ったソンへケインから極上のスルーパスが。
ソンは、右足で一度跨いで左アウトで縦に持っていくことでズマを剥がし、逆足であるはずの左足でファビアンスキの上を抜くシュートでゴール。
アントニオの守備のミスを、クルゼフスキの裏を狙う動き、ケインの流石のパス精度、両足ですばらしいシュートが打てるソンの技術で点に結びつけ、スパーズが2点リード。
その後、クレスウェルのフィードに対してドハティーが処理を誤って得たコーナーキックから、34分43秒にウェストハムは1点を返します。
ケインがニアストーンに立ち、レギロンはいつも通りニアストーンなのかアントニオのマークなのかよくわからない動き。
失点に繋がったドーソンへのマークについてですが、正直ドーソン、ズマ、ベンラーマに対してドハティー、デイビス、ソンの誰がどう付いていたかよくわかりません。
マンチェスター・ユナイテッド戦の失点のように相手が密集を作っていたためにマークに付けなかった訳ではなさそうですし、マンマークなのであればもっと人についていくべきではないかと思いますし、ゾーンにしてはそれぞれが持ち場を離れすぎだと思います。
いつも通りセットプレーの守備で脆さを見せて1点返されたスパーズでしたが、全体的な内容としては、ブライトン戦に引き続きメリハリのあるプレッシングからショートカウンター、ボールを保持して相手の中途半端な守備を利用してのビルドアップで危なげない試合運びを見せた前半でした。
3. 2nd half
ウェストハムはハーフタイムにアントニオをトップ、ベンラーマをトップ下、ランシーニを左IH、ソーチェクを右IHに置いた〔3-5-1-1〕に並びを変更。
ベンラーマがスパーズのボールサイドのボランチを抑え、アントニオがダイアーへのコースを切りながら左右のCBへ寄せていく形を取りますが、どうしてもスパーズのCBに余裕がある状態になり、ウェストハムのWBは裏へのボールを気にしなければならず、スパーズのWBに対しての寄せが遅くなります。
そうやって生まれた時間からレギロン→ケイン、レギロン→ソンといった斜めの楔が通ります。
〔3-5-1-1〕に修正するもうまくいかないウェストハムは、56分にアントニオ、マスアクに代えてヤルモレンコ、フォルナルスを投入し、〔4-3-3〕に変更。
これによって前半のようにプレッシングで嵌めやすい状況でなくなったスパーズは〔5-4-1〕での撤退守備の色を強め、ウェストハムがボールを持ち、スパーズがロングカウンターを狙うという構図に。
スパーズは、ケインのアンカーのライスを消す意識が低く、相手のCBがボールを持ったときにボランチが出ていく守備もほとんど行っていなかったのでウェストハムは5-4のブロックの前ではかなりボールを持てる状況。
しかし、ローブロックを崩すための配置の整理はなされておらず、一応SBが外、WGが内という立ち位置になっていたとしてもSBのポジショニングが低く、スパーズのSHが簡単に対応できてしまうような状況が多くなっていました。
プレスに関しても、イマイチスイッチが入らないことは続いており、IHはスパーズのボランチに対してマークしに出てくるものの、ボールホルダーへの寄せが甘いために逆にそこのマンマークを利用されてCBからシャドーへのパスコースを開けるように誘導されてしまっているような場面もありました。
スパーズ側としては、ホイビィアが内にずれることでソーチェクを釣り、ダイアーからソンへのパスコースを作った60分46秒のような場面は今まであまり見られなかったシーンであり、意図的であったのかは定かではありませんが、ホイビィアのビルドアップ面での成長が少し垣間見えた部分であったかもしれません。
87分52秒にロリスのパントキックからドーソンとズマがケインとの競り合いで被ってしまい、ケインが頭で後ろにそらしたボールにソンが抜け出し3点目。
スパーズも後半カウンターでのチャンスは何度もあったものの、終盤まで試合を決定づけることはできていませんでしたが、記者会見では現地記者から調子が悪いとの声も上がっていたソンが嬉しい2点目を決め、3-0、順位争いの上でも重要だったロンドンダービーをホームのスパーズが制することとなりました。
4. 感想、総括
今回はだいぶ前の試合でもあるので簡単に気になったところだけ。
この試合、ホイビィアとベンタンクールの2人の位置を今までの試合とは入れ替え、ホイビィアが右、ベンタンクールが左のボランチに入っていました。
理由として推測するのは、ダイアーの左脇にボランチが降りてデイビスを押し出すビルドアップの際に、ホイビィアよりもビルドアップ時の運ぶドリブルや細かなポジション取りに長けているベンタンクールを降ろしたかったからなのではないかと僕は考えました。
ホイビィアに列落ちさせるのではなくもっとファイナルサードで働いてもらうことで、昨夏のEUROのデンマーク代表でのプレーや、スパーズでも時折見せる敵陣での決定的なスルーパスやDFライン裏へのロブパス、自ら裏に抜けてニアゾーンからクロスを入れる動きなどの貢献も期待できると思います。
5. おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。