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僕は知らない。

 物書きをしている人には、概ね2通りある。書き終わったものに執着する人としない人。執着しない人は、同じことをまた書くことがある。故・中島らもさんがそれにあたる。らもさんは同じネタを何度も書く。編集など担当者に言われてそれに気が付く。僕も一度書いて印刷されたものは、基本的には保存していない。しかし、最近は、ライブハウスのホームページなどからそれを拾いあげることができることもあり、それはそれで良いかとも思う。もちろん、論文やノンフィクション、レポなど、「すべては筆者の責にあります。」と書いたものや、著作権を放棄していない限りは、必要に応じて手直しをすることもある。

 季節柄、以前にとあるライブハウスのフライヤー用として書いたのを思い出したので以下に再掲する。なにかと殺伐とした時代の中でふっとひと息。お勧めしたいアーティストの中のひと組に充分すぎるほど値する。ちょうどこのアルバムのリリースに併せてのツアーだったかと思う。

 かつてディランは「時代は変わる」と歌ったけど、10年の間にそのゆるく心に優しい音楽がここまで人気爆発してしまうとは少々驚きの栗コーダーカルテット。そんな中、肝心の彼らといえば、当夜の宿泊先の予約を入れ忘れ、1部と2部の間に慌てて入れるというマイペースぶり。それでもツアー初日の緊張感も手伝ってか、若干いつものゆるさの栗コーダーとは違い、栗原氏のつぶやきMCも少なめにクリスマスソングを立て続けに披露し、場内を神聖な雰囲気に変えていく。リコーダーをはじめ、様々な楽器を持ち替えての手を変え品を変えの演奏は、相変わらず素晴らしく、栗コーダーから演奏のクリスマスプレゼントがみんなの心に配られていく様はとっても心地が良い。おまけに今回のツアーには、pedal steel gで駒沢裕城氏が加わっており、いつも以上に音の厚みを感じさせ、ふと目を閉じれば、聖夜の教会のステンドグラスとその前で歌っている聖歌隊が見えてくるほど素敵。簡単な事を難しそうに演奏する人達は意外に多いけど、難しい事をいとも簡単にこなすこの玄人集団の演奏力はやはり唯一無二の存在感で、引く手数多なのもうなづける。みんなに教えたいけど、あまり教えたくないちょっぴり意地悪な気持ちさえ感じてしまう彼らの音楽をこれからもそっと見守っていきたい。



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