雨止んで色変る道に濡れ落葉

　雨が止む頃を見計らって、散歩に出た。雨で濡れたアスファルトの道の色が変わっている。いつもと匂いが違うのか、犬は気もそぞろで落ち着かない。それでも、粘り強く、止まる場所では必ず立止させ、対向車（者）が来れば、停座させる。次の訓練競技会までは、多くの時間はない。その上、実際の競技会は、リードなしで行う必要がある。

　しばらくそれらを続けながら歩いたところ、ある家で連れ歩く我が犬の姿を迎える笑顔を見つけた。すかざす会釈をすると中からおばさんが出てきて、しばし足を止める。

　経験上こう言う人は、犬や猫が好きな人に多い。そして、話をしていると、私も、以前は、犬を飼っていたんだけと、亡くなってしまった。もう一度飼いたいんだけど、もう失くすのは嫌だし、自分も高齢だ。それでも諦めきれず、現在は迷い猫を飼っている。でも、本当はやっぱり犬が好きなのよと。

　実は以前にもこう言うおばさんと出会った。犬種は同じラブラドールだそうで、もうあの大型犬の大変さは、高齢者には負担なの。でも見るのは好きだから、また来てねと。

　それからは、そこを散歩の休止スポットのひとつに加えている。毎日同じ時間、同じ道を散歩している訳では無いので、いつも会えるとは限らないが、見かけると必ず声をかけてくれる。こう言う嬉しい出会いは時知れずして訪れる。今日出会ったおばさんもやはり同じで、また来てねと言われて、薄暮の冷たい風に明かりが灯る。そして僕は帰りの道すがら、散歩道に新たな休止スポットを付け加えることを決めた。