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「どうやったら多様性を受け入れられるようになりますかね?何かアイデアありませんか?」への答え【#1】

我が家の息子(3歳)は去年、女の子たちと一緒に、先生に髪の毛を結んでもらったり、頭にリボンをつけてもらったりしていた。髪の毛を結ぶことが大変お気に召したようで、数カ月間、毎日前髪を結んでいた。

さらに毎日のように女の子たちと家族ごっこをしていて、決まって「お母さん役」をしていた。そして、好きな色は「赤」と「黄色」。

こうやって挙げてみると「女の子っぽい」感じがする。でも働く車も電車も好きで、本人はどうやら、自分のことを「男の子」と自認している。


頭にリボンをつけていた日の話に戻る。

お迎えに行くと、リボンをつけた息子が走って出てきた。「おぉ……プラレールの絵のトレーナーにラベンダー色のリボンとは、なかなかのインパクト……」と思っていると、先生が「Yちゃんたちと同じようにつけたいって言って、つけてるんです〜」と説明してくれた。本人も、とても満足気に見せてくれた。他の先生は、ニコニコしながら「Aちゃん(息子)、かわいいね〜」と言ってくれた。

息子の通う保育園は、本当に子どもたちがその時やりたいことを、やりたいようにやらせてくれる。お昼ごはんの時間になっても、先生が遊びを止めさせるのではなく「お昼ごはんの時間だよ〜」と、まずは声をかけるだけ。多少、他の子どもたちに遅れをとっても、本人が遊びをやめてご飯にする、と気持ちを切り替えるまで見守るような園だ。だから本当にのびのびと、好きなことを、とことん追求できる。


私はインタビューライターとして、毎月いろいろな方々をインタビューさせていただく。先日、産業領域での多様性、マイノリティ性といった文脈での活動をされている方にインタビューさせていただいた。

その時「どうやったら多様性を受け入れられるようになりますかね? 何かいいアイデアないですか?」と逆質問された。

私は、その場でパッと頭を回転させて自分の意見を言うことが得意ではないことも相まって、かなりトンチンカンな答えを返してしまった。先方もフォローできないような感じで、全く恥ずかしい限りだったのだけど、だからこそ、インタビュー後も「どうしたら多様性を受け入れられるようになるか?」という質問が、頭の片隅にいつづけた。

そうして思い至ったのは「息子の保育園のような世界観だったらいいな」ということ。

ありのままを受け入れてくれる。やりたいことを好きなようにやらせてくれる。「男の子なのに」「女の子なのに」と言う人がいない世界。

息子の通う保育園は、とても包み込んでくれる感じがある。園庭の大きな木々たちも、先生たちも。そして年長の子どもたちも、小さい子どもたちに優しい。「慈しみ」という言葉がぴったりする。

つまるところ、誰もが「慈しみ」の心を持って人に接することができれば、多様性を受け入れられるようになる……といっても、それが簡単ではない。

うーん、難しい。だけど、息子の保育園の世界観なら多様性を受け入れられるはず、というのは間違いない。

あ、そうか、難しい言葉をこねくり回すのではなく、もっとシンプルに考えよう。「慈しみ」とか難しい言葉を使うのではなく、保育園の先生たちの言葉を使おう。


「それもいいよね」

自分以外の人の言動、考え、好みに「自分はこっちがいいけど、それもいいよね」と言えたら、少しは多様性を受け入れる助けになるのでは、と思った。


ライター北森 悦(もりえつ)



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