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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2021年1月の記事一覧

禍話リライト:庭と蝋燭と子供

A君がまだ小学校にあがる前ぐらいに、父方か母方か忘れたが、とある田舎のおじいちゃんの家に両親と一緒に行ったことがある。幼いながらにわかったのは、お父さんもお母さんもあまり行きたく無さそうだったということ。2人とも、向かっている途中の車内で、 「○○さんのとこ、嫌だなあ。行きたくない、気が重いなあ。」 というようなことを話していたのを、うっすら覚えている。 到着したその家はずいぶん山奥にあった。両親は「ご無沙汰してました~」と明るく振舞っていたが、幼少のA君にもわかるほど必死

禍話「あかねこ」

 これは、サクラさんがあるマンションに住んでいた時の話である。  サクラさんの住む部屋の隣には、仲のいい家族が住んでいた。  父親と母親と、お姉ちゃんと弟。いつでもにこやかで、休日には家族そろって出かけるくらい仲のいい一家だった。サクラさんは一人暮らしだったので、見かけるたびに羨ましいなと思っていたという。  そのマンションでは、定期的に清掃作業などのイベントが催され、住人どうしの繋がりは強かった。誰もが見知り合いといった感じで、サクラさんも隣のその家族とはそれなりに親

禍話リライト「ばらばらの山」

 どこの地域かは分からないが、とある小高い山であった話だという。  そこは車の通る道も整備されており、中腹までは民家も点在するような、ごく普通の山だったそうだ。  当時大学生だったAさんは、サークルの仲間が運転する車でドライブに行った帰り道、たまたまその周辺を通りかかった。  単調な道が続いていて飽きたのだろう、ドライバーが 「ちょっと気分転換にさ、久しぶりにこの山通っていい?」 と聞いてきたのだという。  Aさんたちには特に断る理由もないため「おう、お前の好きにしろよ」と

【怖い話】 母と子のビル 【「禍話」リライト 49】

 不確かなウワサを元に、妙な場所へ行かない方がいい、というお話である。 「俺が大学時代の話なんですけどね。えーと、まぁ、そのー。そこの廃ビルなんですが、んー、なんて言うんですかねぇ~」  やけに口の重い彼の話をかいつまんで言うと、 「その廃ビルでは夜になると、カップルがやってきて、人目を忍んでコトに及んでいる」  というウワサがあったそうである。   そんな馬鹿馬鹿しい話はない。  愛し合う二人が何故そんな場所でイチャつくのか。  お金がないにしても、もっと別の方法があ