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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2020年6月の記事一覧

禍話リライト『崖の黒い女』

会社の休みで……休日と言っても他の人の休日ではないっていうか。平日に休み取って、昼間ぐらいに山登ってたらしいんですよ、九州のどっかの山。若干パワハラ気味な先輩と一緒に山登ってたらしいんですよ。服装とかちゃんと準備して。 登っていたら、ものすごい軽装だなこいつって女が前を歩いてたんですって。 髪の長い、黒い服着た女で、もう完全に山に登る格好じゃないっていうの。 まぁそんなにすごい山じゃないらしいんだけど、でもちょっと準備が要るぞぐらいの山なんですって。散歩気分で行く山ではないと

【禍話リライト】ひび割れた家

※読んだ人の所に「来る」可能性のあるお話です。閲覧は自己責任でお願いします。 **** テナントビルだったらしいんです。3階が塾で。 塾って窓に、中が見えないように「進学率○%」とか貼ってあるじゃないですか。だから、オープン時にはこう威勢よく貼ったんだろうなみたいな。 その貼ってあるシールだか何だか知りませんけど、ああいうのって、風雪に晒されるというか、経年劣化でビリビリにヒビが入ってくるんですよ。替えるじゃないですか新しいのに。替えない。で、ひび割れてるように見えるわけ

【禍話リライト】出来心の子

祟りってあるんだなって話なんだけど。祟りっていうか、罰っていうか。 急に何だお前って話なんだけど、今さ、40代とかでも結構そういうの信じない馬鹿な人って多いじゃないですか。信じろとは言わないですけど。悪いことしたら何かあるんですよ。 そこでやれカルマだ因縁だって言うつもりはないんですけど、あるんですよ。それは。 と、いうのは。これ、俺の割と近しい奴であった話なんだけど。 結婚して子供がいた人なんですけど。子供が熱出すようになったと。 それこそ、「七つまでは神のうち」じゃな

禍話リライト「人足りの葬式」

 頼まれて葬式に行くとろくなことがない。そんな話である。  Nさんは既に独り立ちをしていたが、独身で実家の近くに住んでいたため、ちょくちょく親元に顔を出していた。  その日もNさんは実家に帰っていたのだが、両親から「悪いんだけど、今度お葬式に行ってもらえないかな」と頼まれたのだという。 「えっ、誰か亡くなったの?」と聞くと、遠い親戚のおじさんの名前を出された。Nさんの記憶では、子どものときに2、3回会ったかどうか、くらいの間柄だ。 「その人のお葬式、なんで行かなきゃい

【禍話リライト11】藁の家

困った先輩というのはいるものだ。 N先輩もそんな一人だった。オラオラ系というのか、とにかくいつもいつも肩肘張っていて、すべてに対してむやみに攻撃的なのだ。 その妙な気負いはオカルトに対しても発揮され、毎年夏になると「幽霊退治だ!」なんて言って、痛ましい交通事故現場やいわくつきのトンネルなんかに突撃していく。 そしてスプレーでデカデカと低俗な落書きをして「退治した」ことにするのだ。そんな悪行をあちこちでやっていた。 「近隣住民にも迷惑だろうし、遺族も嫌なんじゃないですか」 後