小説版禍話02「黒い女の絵」
「黒い女の話、知ってる?」と言われた。
「黒い女?」
知らなかった。ただ、怖い話の類だろうということはわかる。そういった話が好きで集めていたら、頼まなくてもこうやってその手の話が持ち込まれるようになった。
「いや、俺もよく知らないんだ。あんまり深入りしたくなくて」
切り出しておきながらそんなことを言う。
その黒い女は、山の中にいるらしい。しかも、その山というのが、登山道などもなく、たとえば山中に発電所なんかがあって、そこの職員しか出入りしないような、そういう山だという。