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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2019年12月の記事一覧

禍話リライト『開かない押し入れの部屋』

飲み会で意気投合したからといって、そいつの家にいくのは危ないっていう話ですよ。 男女間でもそうですけど、男同士だってそうですよ。 *** Aさんから聞いた話だ。 複数の大学のサークルが集まる規模の大きな飲み会があったのだという。 そこで飲んでいるうちに意気投合して、「じゃあウチで飲みなおしますか?」などとAさんに声をかけてきた男がいた。結構な美青年で、人当たりもいい。 Aさんを含め何人かでその男の家に向かうことになったのだが、道中のコンビニでも男が全部お金を出して

禍話リライト「洗面器」

 人によって恐怖の対象は様々だ。  霊が怖い。  人の狂気が怖い。  まんじゅう怖い。  ……洗面器が怖い、という人がいる。  Aさんは就職を機に上京した女性だ。二か月くらい経った頃の飲み会でたまたま家賃の話になり、自宅の家賃がかなり安いことを知った。地元を基準に考えていたAさんは家賃が高いと感じていたが、都心に近い割には安いようだ。 「おトクだね、Aはいいとこ見つけたね」 「事故物件とかじゃないの~?」 「事故物件だったらもっと安いでしょ」 「でもさ、事故物件の隣でも安

【怖い話】 猫をはねた話 【「禍話」リライト28】

「どうも、つじつまが合うような合わないような話なんですけどね」  Iさんはそう語ってくれた。  大学を卒業し、地元の会社に就職した。  同じ学部だった4人が、久しぶりに会おうということになった。  せっかくなので、通っていた大学を待ち合わせ場所にしたそうである。  ひとりやけに早く着いてしまったIさんは、暇潰しに校舎を見て回った。せいぜい半年しか経ってないが、やけに懐かしい。それだけ会社の新人生活がハードで過密なのだろう。  そのうちに残りの3人がやって来た。Iさんはお

小説版禍話03「赤い女のビラは探すな」

 赤い女、という話がある。  おそらく、赤い服を着た女をモチーフにした怖い話は古今東西に様々なパターンが存在するだろうが、私達の間で話題になっているのは「赤い女に気をつけてください」という内容のビラがポストに投函される、という話だった。 「そのビラ、実在すると思います?」  サークルの飲み会で、その赤い女の話をしていたら、ひとつ下の山口という男子がヘラヘラとそう言った。 「いやーどうだろうね、でもエリア的にはこの辺って話なんでしょ?」  山口の同級生の、たしか高橋さんという女

小説版禍話02「黒い女の絵」

「黒い女の話、知ってる?」と言われた。 「黒い女?」  知らなかった。ただ、怖い話の類だろうということはわかる。そういった話が好きで集めていたら、頼まなくてもこうやってその手の話が持ち込まれるようになった。 「いや、俺もよく知らないんだ。あんまり深入りしたくなくて」  切り出しておきながらそんなことを言う。  その黒い女は、山の中にいるらしい。しかも、その山というのが、登山道などもなく、たとえば山中に発電所なんかがあって、そこの職員しか出入りしないような、そういう山だという。