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マレーシア就職の方 EPF入ってますか

 マレーシアには従業員積立基金(EPF)というのがあります。これは55歳に支給される年金で、マレーシア人の加入は義務付けられています。外国人は任意制ですが、入っておいたほうが何かとお得です。


■EPFとは何?

 EPFは英語名でEmployees' Provident Fundの略です。ローカルもEPFとよく呼びますが、マレー語でKWSPと略されています。

 マレーシアにはもともと退職金という概念がなく、定年を迎えると自分でコツコツ貯金以外何もないという状況を憂慮してか、この組織が1951年に作られました。つまり、1957年のマラヤ連邦の独立以前に英国が作り上げたもので、それが今も綿々と利用されているわけです。

 積立金は従業員が給与の11%、雇用主が12%ほどを毎月EPFの口座に振り込んで、積み立てていきます。例えば、1万リンギ(約26万円)の給与であれば、毎月従業員は1100リンギ入れ、雇用主は1200リンギ振り込んでいくことになります。つまり、毎月口座には2300リンギ分(約7万6000円)が入っていくわけです。これが1年もすれば、結構な額が積み上がっていくのです。

 口座は今年5月11日以降は3つに分かれました。以前のアカウント1は従業員が積み立てた金額、アカウント2は雇用主が積み立てた金額になっていたのですが、現在は3つに分かれ、全積立額のアカウント1と2で90%、アカウント3が10%と割り振られました(アカウントの名称は変わっています)。この3は何なのかというと生活に困ってお金が必要となったときに引き出せるアカウントなのです。

 新型コロナのパンデミック時に失業して、多くの人がお金がなくなってEPFから引き出し最高額の30%分を引き出してしまった人が続出。全加入者のうち大半の老後の資金が1万リンギ(26万円)以下という事態にまでなってしまい、政府はアカウントの再構築を迫られたのです。その結果、3つに分けられるようになったのですが、さて、うまくいくかはわかりません。

 積立金は年金として位置づけられており、原則的に法定定年の55歳以降に引き落とすことができますが、アカウント3は単なる銀行口座のような意味合いにもなってしまったのかもしれません。この積立金は雇用主側が支払う分も含まれますが、これはある意味で退職金という意味合いがあるのです。

■EPFは入れるのであれば入ったほうがオトク

 EPFはマレーシア人向けではあるのですが、外国人も任意で加入することができます。赴任で2~3年しかマレーシアにいなくても大丈夫です。その期間中は積み立てておいて帰任が決まったら全額を引き出すか、そのまま残しておくことも可能です。

 ただ、そのまま残しておく場合は55歳まで置いておくことになりますが、何らかの事情で途中で全額引き出すことも外国人は可能のようです。

 さて、EPFに加入すると何がオトクかというと「配当」です。

 積み立て年金に「配当?」と思われるかもしれませんが、EPFにはそれが毎年支給されます。日本の年金はもはや破綻して、積み立ててもすべての金額が戻ってくることはないようで、大損する年金制度。しかし、EPFは毎年配当という名の利息を支給します。その利率がなんと年率5%以上なのです。

 2023年の配当率は5.50%でした。これは積み立て総額の5.50%が支給されるのですが、僕も結構な額をいただけました。この配当率は2000年以降は平均5%で、1983年~87年の5年間は毎年8.5%という驚異的な配当率を支給していました。直近では2017年の6.90%が最も高かったのです。積み立てておけば、複利が複利を呼んでだるま式にお金が増えるということなのです。

  EPFはおそらく積み立てられたお金の運用の仕方がいいのでしょう。政府直下というのもありますが、どこかの年金にならない年金制度より断然に運用がうまい。海外の株式にも相当投資しているようですが、かなり利益をあげているからこんなに配当がいいということになるのでしょう。

 引き出しは55歳以降になりますが、これは日本とは異なり、EPFは一気に支払われます。日本だとちびちび毎月数万円ほど支払われますが、こちらはそんなことはしません。

 一気に払って「あとは自分で運用してください」という年を取ってからの自己責任が課せられます。これはいいのか悪いのかよくわかりませんが、55歳になって突然大きな金額が来て、すべて使ってしまう人もいるかもしれませんが、そこはもう自己責任なのです。

 先ほど外国人もEPFには任意で入れると述べました。ただ、会社によっては日本人含む外国人に対して入れないところもあります。特に中小企業だと企業側の積立金が多額になるため、負担が大きい。そのため、マレーシアの日系中小企業は積み立てを渋る会社もあります。その会社に就職する場合、そこは聞いておく必要があります。もしその会社に長年働いた場合の退職金があるのであれば、EPFはいらないかもしれませんが、それでも配当がEPFにはあるので、やはり入れるのであれば入っておいたほうが後々嬉しくなります。

■入れないのであれば

 マレーシアで今働いている会社でEPFに加入できないのであれば、それでも大丈夫です。民間銀行の退職スキームに加入すればいいのです。就労ビザがあれば、登録することは可能です。

 投資銀行であれば、どこでもこのスキームはあります。 ただ、CIMB系の投資銀行は外国人を対象にしていないところもあります。このスキームはPrivate Retirement Schemeといって略称PRSといいますが、毎月100リンギ以上から積み立てられる銀行もあり、年間3000リンギまで積み立てたとすれば、所得税の控除の対象にもなります。ただ、一旦お金を入れてしまうと55歳までは引き出せません。
 
 PRSの投信に積み立て、つまり投資ということになります。そのため、EPFは丸投げしておいても5%以上の配当が毎年得られますが、投資銀行の場合はPRS関連の投信にお金をいれることになるので、投信の知識が必要になります。ここがEPFとは異なるところです。

 PRSは毎年1株あたり◯◯セントという形で配当が付きます。総積立額の割合ではなく、1株あたりということになりますので、投信はご自分でどれにするかを選ぶ必要があります。投資銀行の中でもPublic Mutual bankは豊富なファンドを持っていることで有名で、こちらにも多くのPRSがあります。

 申し込みたい場合は投資銀行に行きましょう。中にはホームページ上のみで申し込みができるところもありますが、できるだけその銀行の担当者とあったほうが安心もします。

 いずれにしても、マレーシアで就職した場合、お金を貯めることは得策です。小さな金額でもコツコツ貯めれば、大きな金額になっていきます。将来日本に帰るとしてもそういったコツコツ精神が嬉しい金額になって返ってくるのです。


 

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