見出し画像

マレーシアに来て鬱病が治った話

 今回はちょっと昔を思い出したので、表題の話をします。何かのお役に立てれば。


■鬱病になった経緯

 その昔、東京で2年半働いていたことがありましたが、なぜか鬱病になったことがあります。症状は中程度。仕事や人間関係で問題はなかったのですが、あのすし詰めパックの電車での通勤が精神に来たようです。とにかく毎日悶々とし、好きなモーツァルトを聞いたりして心をハッピーにさせようとしていましたが、長期的にはあまり効果はなかった気がします。

 新宿の心療内科クリニックに行き、薬をもらい、しばらく経ってから症状が軽くなったので薬が減らされたのですが、その数日後に悪化。出社しようと思って山手線に乗ったら吐き気がひどくなってそのままクリニックに行ったこともありました。電車の揺れに立ってられなかったこともあります。

 鬱というのは、ほとんど自分ではコントロールができないようです。性格的な要素もあるのかもしれませんが、東京にいると特に物事を細かく深刻に考えてしまうようになるようで、周りの環境も症状を助長させてしまうのかもしれません。とにかくあの時期はとてもつらかったのですが、マレーシアの大学院に入るためにお金を貯めていたので、入学許可が出てから会社をすぐに辞めて(!)、マレーシアに飛びました。

■薬を絶ったこと

 鬱病のあの大量の薬を飲まなくて大丈夫だろうかと少し心配になっていたのですが、「なんとかなるだろう」程度で来てしまいました。もちろんマレーシアにも薬をもってきて、なくなるまで飲み続けていましたが、その後はなくなったので、完全に飲むのをやめてしまったのです。

 鬱病の薬は突然やめると危ないらしい。先にも書いたようにちょっと症状が軽くなって薬を減らしたとしてもまた症状が悪化することがあるので、これが当初は心配でした。

 ところが、薬をやめて1か月経ってからも症状は悪化しません。それどころか、鬱病らしき症状はまったく出なくなったんです。これには驚きました。

 どうもこれは「転地療法」というので効いたのかと今は思っています。

■転地療法という治療法

 コトバンクによると、転地療法とは「日常の生活空間とまったく異なった、空気の清浄な土地に比較的長期間滞在して、保養を行い、疾病をいやす手だてとすること」。

 これは何か喘息や肺炎の治療法として書かれているような気がしますが、僕の場合、生活環境がまったく変わったため、精神的に「ショック」を受けて症状が消えたのかもしれません。マレーシアに来たのは12月でしたが、半袖短パンでいられ、町は緑が多く、人は開放的で細かいことを気にしない。こういった環境で居心地がよくなって、鬱病が治ったのでしょう。そんなこんなであれからもう20年ほど経っていますが、まったく鬱病は再発せずにいます。

 転地療法は、人によって効くのだと思いますが、誰もがやって効くのかというとそうもいかないかもしれません。

 日本国内ならまだしも、海外に来るとまず少なくとも言語の壁が出てきます。かつてバンコクに住んでいたとき、当時はタイ語ができずに毎日がイライラしていた時期があります。言葉ができないとイライラがずっと続く可能性があり、人によっては治るどころか悪化する恐れもある。海外で転地療法をするのであれば、その国の言葉や文化を理解しているほうがずっと治療に役に立つと思います。

 また、どれだけ人に対して寛容になれるかというところもキーポイントではないでしょうか。完璧主義の人だと特にアジアで生活するのは難しい。何せいろんなことが緩いので、日常生活でも日本のようなキビキビした環境はありません(そんな日常生活の内容については僕のこのnote記事にいろいろ書いているのでご参考までに)。こういった環境を受け入れられるかどうか。逆にこういったことを刺激的に楽しめるかどうかというところが治療に役立つのかもしれません。

 上記のような条件をクリアし、不幸にも鬱病になっている方は、治療のために海外に一旦出てしまうことも検討してみるといいと思います。もちろん嫌な国に行く必要はなく、自分がのびのびとできるところならどこでもいいのです。そんな気力さえもないかもしれませんが、やはり周りの環境が自身の心に与える影響というのは大きく、その環境を大きく変えない限り、鬱病も克服するのはなかなか難しい気がします。薬だけに頼っていても、回復には時間はかかります。それに薬に依存するのは最も危険なこと。転地療法はある意味で「劇薬」ではあるのですが。
 
 人生は短く、時間の流れは早い。鬱病という無用な病気をいつまでも抱えている必要はありません。「前向きに考えてください」といってもなかなかそうはいかないのですが、こういった治療法もあるんだということはお見知りおきください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?