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「面白い」は正義

Netflixを開くたびにトップの「おすすめ」に表示され、気になっていた「サンクチュアリ〜聖域〜」を観た。きっかけは、弊クラブの岩本GMの「とにかく面白いから見て」の一言だった。

岩本さんがそこまで言うんだから面白いんだろうなと思いつつも、お相撲あんまり詳しくないし、男性が「面白い」っていう作品ってあんまりハマらなかったりするしなぁ…と、半信半疑な気持ちで見始めたが、なんと一晩で全8話を完走してしまった。

今の私の気持ちは岩本さんと同じで「いいから今すぐ見ろ」の一言である。

ストーリーは、家庭環境に恵まれなかった九州出身の不良少年が、お金欲しさに角界に入門し、さまざまな困難を乗り越えながら自分らしいやり方で横綱を目指していくというものである。「スポーツど素人の不良少年が周囲の人々に支えられながら高みに上り詰める」というストーリーは、スラムダンクやルーキーズ、スクールウォーズといった、王道スポーツドラマ(漫画)のお約束のパターンである。面白くないはずがない。

しかし、サンクチュアリが一味違うのは、少年向けではなく「大人向け」の味付けになっているところだ。「金・名声・女」といったプロスポーツ界の光と闇を余すことなく描いており、現在スポーツ業界に身を置く立場としてもリアリティを感じながら見ることができた。

これは記憶が新しいうちに感想を書こうと思って今2周目を見ているのだが、2周目を見るとさらに細かい部分に気づいて、感想がまとまらなくなってきたので、自分の心が動いたポイントを箇条書きで記しておきたい。

オープニングがかっこいい

Netflix作品全般に言えるのだが、オープニングのムービーがとにかくかっこいい。「相撲ってめっちゃクールやな!」と思った。「かっこいい」というより、外国語の「クール」という表現がしっくりくるのだ。おそらくこれは、Netflixが最初からグローバル展開を視野に入れて制作しているためではないかと思う。「相撲」といより「SUMO」なのだ。

相撲って格好良い!格式高い角界を舞台にしたルーザーたちの番狂わせ。ミステリアスなベールに包まれた“相撲”をロックに描く『サンクチュアリ -聖域-』の熱気感じるOP。 #サンクチュアリ聖域 #Sanctuary #ドラマ #drama #ネットフリックス #ネトフリ #netflix

Posted by Netflix on Thursday, May 4, 2023

実際に、50以上の国と地域で「今日のトップ10」入りをしたということなので、グローバルでもウケているということだろう。私も本作品を見て、「相撲を生で観たい!」と思ったので、世界中から外国人が日本に相撲を見に来るかもしれない。

相撲界の「不都合な現実」も描かれている

相撲界は「一般常識とは異なる常識が存在する世界」というイメージがあるが、ドラマの中ではそうした部分もストレートに描かれている。たとえば八百長問題、親子力士の葛藤や家庭不和(どうしても私の世代だと花田家を連想してしまう)、弟子に対する暴力(過去には死者が出る事件も発生している)、タニマチとの付き合い、女性問題、おかみさんの暗躍etc.といったネタなのだが、いまだかつてここまでストレートに相撲界の暗部を描いた物語はなかったと思う。

それもそのはずで、この作品は日本相撲協会の協力を得ていないのだ。こちらの対談を読んでクレジットを見てみたが、確かに撮影協力に相撲協会の名前はなかった。

なるほど、確かにもし相撲協会の撮影協力があったら、冒頭の激しい「しごき」のシーンなどはOKが出なかったのではないかと思う。

キャスティングが神

主演の一ノ瀬ワタル(小瀬清=猿桜役)は、この作品が初主演である。力士映画ということで、若手の人気俳優では務まらなかっただけなのかもしれないが、この大抜擢は大当たりだった。一ノ瀬氏は撮影時35歳か36歳だったはずだが、まったく違和感なく未成年の荒くれ者を演じきっている。ドラマの中では「ブスゴリラ」と呼ばれるほどイカつい見た目なのだが、物語の終盤でマゲを結った姿は痺れるほどかっこよかった。

また、主人公の相撲部屋の親方を務めるピエール瀧も最高に良かった。ピエール瀧は4年くらい前に薬物関係で逮捕されていたので、最初に出てきたときは「あれ?もう出ていいの?」と思ったのだが、見終わったあとは「この人じゃなかったら全然違う作品になっていたかも」と思った。そのくらい、重要な役柄だった。

上記のようなキャスティングは、地上波のテレビドラマではなかなか難しいのではないかと思う。

私はかれこれ10年以上地上波のテレビドラマを見ていないのだが、その最大の理由はキャスティングへの違和感が拭えないからだ。別に大手事務所所属のアイドル俳優が悪いというわけではないが、主役級については「え、さすがにその役柄は無理があるのでは」と思うような、違和感のあるキャスティングが少なくないように感じている。

そこにはさまざまな「思惑」や「事情」があることは容易に推測されるが、それが作品の質にいくらか影響を与えていることは間違いないだろう。

サンクチュアリに限らずだが、Netflix作品の強みは、このような「裏の事情」や「各方面への配慮」なく、ただただ「面白いものを作る」というところにコミットしていることにあると思う。なぜなら、Netflixは視聴者から直接お金をいただくモデルなので、視聴者に「つまらない」と思われたらビジネスそのものが立ち行かなくなるからだ。

AbemaTVが始まった2016年あたりは、ネット配信について懐疑的な意見が多かった。当時の配信番組は、地上波のコンテンツに比べると質が劣るということで、直接視聴者からお金をいただくモデルは難しいのではないかという見立てをする人が多数派を占めていたと思う。

しかし、それから8年ほどの年月が流れ、潮目が完全に変わった。生き残るのは「面白いもの」を世に出せるプラットフォームだ。コンテンツビジネスは、長い目で見ればそれしかあり得ない。

「面白い」は正義なのだ。


以下、余談。

ところで、私が個人的に一番感情移入したキャラクターについても書いておこうと思う。それは誰なのかというと、

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