「かすり傷も痛かった」を読んで感じた「利確」の難しさについて
幻冬舎の編集者にしてインフルエンサーでもある箕輪厚介さんの「かすり傷も痛かった」を読んだ。きっかけは、箕輪さんが出ていた街録chがめちゃくちゃ面白かったからだ。
私が箕輪さんに初めてお会いしたのは、実は(あまりにも昔のことでご本人は覚えていないだろうけども)箕輪さんが今の箕輪さんになる前のことだった。とあるインフルエンサーが主催する編集者向けのイベントがあり、その時にたまたま同じテーブルになったのが箕輪さんだった。確か、まだ双葉社にいらっしゃった頃で、与沢翼のネオヒルズ・ジャパンを出すか出さないかくらいの頃だったのではないかと思う。当時の箕輪さんは、至って真面目な出版人という印象だった。
次に箕輪さんを認識したのは、格闘家の青木真也さんの書籍を出した頃だった。私はこの書籍で青木さんを知ったのだけど、手にとったきっかけは、「空気を読んではいけない」という刺激的なタイトルと、一見してインパクトのある装丁だった。
本の内容もとても良かった。この頃もまだ、SNSでPRを活発にやっている熱量の高い編集者という印象だった。
それからも何度か、共通の知人が主催する飲み会だとか、いろんな場所でお見かけする機会があったのだが、3度目か4度目にお会いしたときは、ネットのインフルエンサーという枠を超えて、テレビにもよく出る著名人になっていた。
そんな箕輪さんが「死ぬこと以外かすり傷」という本を出版し、その後文春砲を受け、大半の仕事を失って、それからまた復活して出したのが今回の「かすり傷も痛かった」という本だ。
この本がユニークなのは、前著「死ぬこと以外かすり傷」の内容を添削する形で書き進められている点だ。たとえば、こんな感じだ。
イケイケだった頃の自身の発言を一部訂正する形で、人生のどん底を味わった後の心境の変化を書き連ねている。回顧録として、これ以上わかりやすい形はない。
ちなみに、本書で一点ものすごく感心したのが、この「かすり傷も痛かった」というタイトルを考えたのが、秋元康さんだったということだ。
箕輪さんは当初「歪のまま生きる」というタイトルで本を出そうと思っていたそうなのだが、その話を秋元さんにしたところ「そんな世間に中指立てるようなことしたって、どんどん世界が狭くなっちゃうだけだよ。「かすり傷も痛かった」っていうエッセイを書けば、箕輪もかわいいところあるじゃんってなるんだよ」と言われ、当初は受け入れられなかったが、よくよく考えて、その路線で行くことにしたらしい。
結果、本はヒットしているし、それまで箕輪さんのファンではなかった層の人にも好意的に受け入れられているのだから、やっぱり稀代のヒットメーカーは凄いと言わざるを得ない。
「爆上がり」したものは容易く「暴落」する
そして私がもう1人「この人はやっぱり凄い」と感心したのは、サイバーエージェントの藤田社長である。
箕輪さんがイケイケだった頃、藤田さんは真顔で箕輪さんにこう言ったのだ。
箕輪さんもこの言葉を聞いたとき、言いたいことはわかったそうだ。要は、知名度も上がりきったことだし、ここらで壇上から降りて地に足をつけたほうがいいということだろう、と。
しかし藤田さんが言うように、人気絶頂の頃にこの判断をするのはとても難しい。毎日ストップ高を記録する株を手放せるかというと、普通の人にはなかなかできないだろう。それと同じことである。
ここからは個人的な話も混じるので、読者限定で🙏
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