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血の繋がった優しいライオン

私には7つ離れた弟がいる。

最近久しぶりに彼に会った。

彼は高校を卒業後、家族の元を離れ、今は一人暮らしをしている。

まあまあ歳は離れているが、私たちは昔からとっても仲が良い。

そして、7つも年齢が離れているのだが、多分姉と弟という関係性はいつの日からかなくなって、今やどちらかというと弟の方が私の兄化している。

振り返るとちょっとびっくりする話なのだが、私が中学生になった頃から(いや、それより前からかもしれないが)、まだ幼い弟を連れてたった二人で良く色んな場所へ出かけた。飛行機で祖父母の家に遊びに行ったり、海外に単身赴任中の父の元を何度か訪れたり、遊園地に行ったり、本当に良く行動を共にしていた。

真ん中の弟(7つ離れた弟にとっては兄)には障害があるため、そして父はかなり仕事で忙しくしていたため、母と障害を持つ弟はお留守番、私と一番下の弟で出かけるということが日常茶飯事だった。

そういった家庭環境が影響をしているのかもしれないが、
末っ子の弟は昔からびっくりするくらいしっかりしていた。

彼がまだ小学校低学年だっただろうか、父の赴任先の海外で、私と弟とカフェへお昼ご飯を食べに行ったのだが、そこで彼がいきなり店員さんに「このサンドイッチに自分がアレルギーのサーモンは入っているか?」と聞き、その後も店員との会話に盛り上がっている時には、この子は天才なのではないかと思った。そしてその後、「なんでそんな英語が喋れるの?」と弟に問うた時に、「え?うーん、のりだよ(笑)そんなことはいいから、お父さんの家までの帰り道なんとなく覚えているから付いて来て」みたいなことを言われた時、とんでもない子供だなと思った。

大学の受験勉強で分からない問題があると、弟に聞いていた。
彼は全部とは言わないまでも、8割方は分かっているようで、とても分かりやすく教えてくれていた。当時中学受験の勉強中であった彼だが、もう大学受けたら良いじゃんと私は本気で思い、その時も、「この人はやはり天才なんじゃないか」と思っていた。

彼は本当におもしろい。

数年前に半年間ほどインドを訪れて、なんだかよく分からないが、インドのなんとか山に登り、その山の主という白いひげをボーボーにはやした仙人とずっと一緒にいたらしい。

彼は大学を入学した瞬間、毎日同じ時間に大学に行くことが億劫になったらしく、休学をしてひたすら本を読んで音楽を作るということをしていたらしい。

先日お腹を壊して相当辛かったらしいが、理由を聞くと、豚肉をほぼ焼かずに食べたとのこと。彼は豚肉を生でも食べられると思っていたらしい。

もしかしたら、私の知っているいわゆる若者の中で、一番面白い人かもしれない。

私は、彼の生き方や考え方がとっても好きだ。

自分をしっかりと持っていて、誰からどう見られようと思われようと
自分の好きなように生きていて、そもそも自分のワクワクする瞬間を熟知していて、ただ単純にかっこいいなと思う。

大学を卒業して、企業に就職をして、結婚をして、
わりと真っ当というか、良い意味で道からそれていないというか、
それが何だかつまらなくないのだけれど平凡な気もして、そんな気持ちがどこか心の奥底につっかえているのかもしれない私からすると、弟の生き様というものはなんだかユニークで突拍子もなくて輝かしく映っているのかもしれない。

そんな彼が今年社会人となった。「毎日同じ時間に働くことは自分にはあっていない」となんとも彼らしいなということを言い、大学時代からやっている音楽活動を続けながら、知り合いと事業を立ち上げたらしい。

「正社員にならないなんてもっての他だ」と言わんばかりのThe 昭和時代の父をいとも簡単に論理的に上手に説得をして、さすがだなとも思った。

彼は、明日何が起こるか分からないから、1日1日を精一杯生きているといつも言っている。

最近の久々の再会を経て、「私たちって姉弟なのに、なんだかタイプの違う人間が出来上がったものだね」と笑いながら私は弟に言っていた。同じ家庭で育ってきたのに、同じ親から産まれたのに、どうしてこんなにも人間が違うようになるのか弟と話していたふとした瞬間私は不思議に思ったのだ。

そんな私の言葉にすかさず、「え?お姉ちゃんと僕、似てない?」と言った。私は平凡で弟は天才肌で、私の生き方はユニークでなく彼の生き方はストーリー性がある、なんだかそういう物差しで二人の人生を測っていたのは私だけだったようだ。

「そもそも、今のお姉ちゃんの置かれている状況って真っ当でもないかもだし、普通でもないかもだし、ユニークだし、突拍子もないんじゃん?やるやん」と最後に言われ、よく分からないけど褒められた。そして、それが冗談であることは100も承知だし、褒めてくれているわけでもないけれど、でも何だか心がほっこりした。

弟にはなんかやっぱり敵わないな。


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