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レンジでチン。予熱でドン。

 まあ、けっきょくはワタシの言葉が足りなかったんだろうな。
 久しぶりに外で原稿を描いた。自宅アトリエでがんばったがぜんぜん進まず、環境を変えることにしたのだ。
 緑色のコーヒーショップと、その近くの喫茶店をハシゴしたので経費はかかったが、自宅よりも捗りに捗った。
 このショッピングモールには美味しいお弁当屋さんがあるので、夜ごはんはお弁当にしよう。ますます出費となるが、帰宅後の労働対価を考えるとこれも必要経費だ(お金たまんないタイプ)。
 吟味に吟味。お得でおいしそうなザンギ弁当が良いのはわかっている(ザンギ=ざっくり言うと鶏の唐揚げの北海道弁…なのか?家庭により味に違いあり)。でもね、この、魚の入った幕の内的な方がバランスが良いのではないかしら(高いけど)。こんなところに栄養面の気遣いなど必要なのか?と巡り巡る考え巡らし、贅沢な幕の内的弁当を二つカウンターの上へ。
「ありがとうございます。お買い物袋はご入用ですか?」
「あ、ください」
「お箸はいかがいたしますか?」
「あ、いらないです」
いちいち考えちゃって「あ、」がつく。なんだか言葉の反射神経がにぶい日だ。
あ、この容器…チンして大丈夫なやつかな?
「これ、レンジできますか?」
「はいっ!!できますっ」
ずいぶんと元気なお返事。そんなに丈夫な容器なのか?
 と、いつもならここでビニール袋にお弁当を入れて渡してもらうだけなのだけれど、なぜか店員さんがお弁当をカウンターの裏に持って行ってしまった。モールのエスカレーター横の小さなスペースにあるお店。バックヤードがあったのか、とはじめて気がつく。
 なかなか戻ってこないな。不具合でもあったのかな?サケが一切れ足りないとか?妄想がふくらむ。
「お待たせいたしました!」
なぜかお弁当は一つだけ。
「もう一つはもう少々お待ちください」
「あ、はい」
あああ。ガッテン。そういうことか。しまったなあ。
「お待たせいたしました。気をつけてお持ちください」
ありがとうございます。

 おわかりだろうか。かくしてワタクシ、ほかほかのお弁当を抱えて帰ることとなった。「レンジをかけてもよい容器か」のつもりで聞いたひと言を店員さんは「あたためてください」と理解承知の助。
 説明が足りなかった!と気づいたときにはすでに二個目のお弁当がレンジの中。
 これはひと言足りなかったコチラの落ち度だなあ。うん、何も言うまい。
 というわけで、あったかいお弁当を膝に置いて地下鉄に揺られて帰宅。残念ながら二人暮らしの我が家のメンバーが食べる時間にはもう一度チンせねばならない。

 ところで、我が家のレンジはチンとは言わない。ピーである。ピーと鳴っても無視しているとピーピーピーと鳴く。手が離せないときなんかは「わかってるよ〜」と声をかける。もちろん、その声に返事はない。返事が聞こえたら少し休もう。
 一人暮らし同士が共同生活をすることになった十数年前。家電に関してはより新しい(もしくは使いやすい)方が取捨選択された。レンジは夫の物を選択。だって、回転台みたいなのが無いし、機能もいろいろ。見た目もシンプルで良かった。
 しかし、あたため機能とパンをトーストすることしか使わないと思われる独身時代の彼が、なぜこの高機能オーブンレンジを購入したのだろう(いろんな憶測はまあ置いておく)。いやまてよ、ワタシも似たような機能しか使わないのに独身時代からオーブンレンジを使っていたんだった。
 ワタシの理由は明らかだ。
 「お菓子作りへの憧れ」
 憧れというものはたいてい憧れで終わるものなのか。とうとう、そのレンジでオーブン機能を使うことはなかった。一度だけクッキーを作ったような記憶があるがトースター機能しか使っていない。
 まず、ハードルを高く上げる存在が「余熱」。
 と書いて自信がなくなって一度検索してみたら「予熱」だった。ほらね。遠い存在なんですよ、オーブンは。
 「かんたん!」との冠かかげたレシピでも、「180度に予熱し」とあればその先に進む気になれないのです。

昨年はじめて発見された下のゴミ受け。恐怖と闘いながら開けたが、
凝った調理をしてなかったおかげでたいしたゴミは出てこなかった。いいこともあるもんだ。

 共同生活開始から十余年。いまだオーブンレンジはフル活用されていない。今確認してきたら「スチーム、茶碗蒸し」「発酵」と言ったボタンを発見。え?レンジで茶碗蒸し作ってたけど、専門の機能があったのか?発酵ということはパン作りもできるのね。憧れのパン作り。憧れの。
 そういえば、きょ年あたり、夫による「パン作りしてみたい」との発言から購入したドライイーストがまだ開封されずに仕舞われている。ドライとはいえ、なにか別の菌へと成長していないだろうか。
 ああ、仕舞っているで思い出した。きょ年の夏に引っ越してきた時、今度こそ使うんだ!と台所の割と一軍な場所に鎮座させたアレも使わなきゃ。
 次回「十余年で2度登場、高機能フードプロセッサー編」につづく。
 つづきません。


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