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形を変えた言いわけ。

尊敬するデザイナーさんが3人いる。なかでも印象的なのがHさん。一緒に仕事してかなり無理難題を言われた。しかし内容は至極もっともなものだった。印象的な出来事がある。

彼は事前に描いたラフスケッチでクライアントからOKをもらっていた。当然、撮影はラフに沿って進められる。ところが現場に着くと予定にないカットを次々オーダー。

「机の上で考えたスケッチより現場で思いつくもののほうがよっぽどいい」彼の姿勢は徹底していた。河川敷のロケでいきなり「川、はいれる?」モデルさん全員を川の中に立たせるの?驚いたらそうじゃなく、川に入るのは私のほうでした。

かなり振りまわされたけれど、それ以上にお釣りが来る体験だった。現像所から上がったフィルムを見て「ほら!こっちのほうが絶対いいよ!」彼はそう言うと、写真を元にしてスケッチを描き直してクライアントに直談判。新しい案を通して帰ってきた。

締切前に彼がいなくなるのも有名な話。どんどんエスカレートして、ついに国外逃亡に至った。「どうしても見たい映画があったのでハワイに行ってきた」と言う彼は真っ黒に日焼けしていた。

それまで私は(我慢してがんばって仕上げて、終わったらごほうびにケーキを食べよう...)という「鼻先ニンジンぶら下げ方式」だった。でもそれじゃだめらしい。楽しいものを作るには、楽しい気分で仕事しないと良いものができない。まったくその通りだ。なので本当にごめんなさい。締切前ですが、私は今から温泉に行ってきます。