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『黄色い家』川上未映子・著。



オーディブルで聴き終えました。


めっちゃくちゃ重たくて暗くて気持ち悪かったです。何度も聞くのをやめようと思いました。でも、なぜかやめられず,最後まで読切り(聴き切り)ました。

感想は、最初は終わった瞬間からどよ〜んっとして丸一日気分が重かったです。正直、読まなければよかった。時間の無駄だったと思いました。

ところが、重たい気分のまま日常を過ごしているうちに、なんで川上さんはこんな小説を書いたのだろう?
彼女は純文学の人だ。だから売りたいがためのエンターテイメントを書きたかったわけではあるまい。

なぜだっ、なぜだっ、なぜだっ。

と、頭の中でリフレインが続く。

日常の作業をしながらも,頭の中で、黄色い家の反芻が繰り返された。

夜、夕食後の洗い物をしていると、ふっと何かが頭に降りてきた。

あっそうかっ!

これは、決してこの物語の主人公の「花」だけのことじゃないんだ。
と気づいた。

家の貧困、無知、など不運な境遇の少女「花」が、素敵な女性「黄美子」と出会い運命が好転していく。そこから知らぬ間に悪の世界に染まっていく単なるピカレスクロマンではなかった。

実は、昔の自分の姿でもあったことに気づいた。

「世界中で一人ぼっちだと思う人間が、自分のことを受け入れてもらえると、人はめちゃくちゃ嬉しい」

これ、人間の普遍的な真理だと思う。

自分のことを認めてくれた、大好きな仲間と好きなことで大いに盛り上がり、突き進む。
気がつけば,みんなのためとか、この人のためとかって熱くなって生きていた。

自分の人生のハイライトといっても過言ではない。
それほど夢中で生きていた時期があった。

その人やその仲間の中にいるときの自分の存在に幸せを感じ,酔いしれていた。

その自分の活動心理は、主人公「花」とピタリと重なった。

ような気がした。

全身に鳥肌が立った。


とんでもない小説を読んでしまった。

ただ、これは超個人的な解釈です。

でも、主人公「花」を取り巻く世界を、別の場所に置き換えて捉えてみると、いろんな受け取り方ができる奥の深い物語だと思います。

例えば、不遇なサラリーマンがある日、偶然居酒屋で知り合った男性の生き方に感動する。その人が主催するセミナーに参加してみると、そこには・・・・。
みたいな。

とにかく、読む人によって、いかようにも解釈できるすごい小説だと思います。

読み続ける(聴き続ける)のはほんとにしんどかった。
でも、最後まで聴き終えてよかったと、心の底から思う。

読むきっかけをくれた、
友人に心から感謝しています。

追伸・・・今度は紙の本で読んでみます。オーディブルは声の出演者の方々の力量に左右されてしまうので,純粋に文字を読み自分なりの『黄色い家』をつくりあげ、咀嚼してみたいと思います。

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