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あなたの社会変革でデジタルを活用する3つの方法、TOKYO STARTUP GATEWAY、他「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターNEWS」2022年5月10日号

​​​​こんにちは、ETIC.林(りん)です。私はETIC.で社会起業塾ローカルベンチャーラボ等の、プログラム運営に携わっています。

先日、PayPal Community Impact Grants を通じて、『デジタルを活用した社会変革の可能性』セミナーを開催しました。この助成は、PayPal社が『あらゆる人が等しく享受できる包摂的な経済を実現する』という企業ミッションのもと、世界22カ国で助成金や従業員のスキル・時間を通じて地域社会に貢献することを目的として実施しているものです。

イベントの内容は盛りだくさんでご紹介しきれないので、今回は現場で社会変革に取り組むみなさんがどのようにデジタルを活用していけるかについて、(1)効率化する、(2)繋げる、(3)寄り添う、という3つのアプローチにまとめてご紹介します。

<セミナー講師>
金 辰泰 氏 
株式会社Shared Digital Center 代表取締役 
一般社団法人 Robo Co-op 代表理事
株式会社JDSC Executive Sustainability Director
立命館大学 客員研究員

Shared Digital Centerにて、ソーシャルセクターのDX推進に向けた業務の集約化×機械化や研修を通じたDX民主化を推進。同時にRobo Co-opにて、シングルマザーや難民といった多様な人財のデジタルスキルを活用した経済的自立も支援。JDSCではAIと多様な人財を掛け合わせた事業開発を推進し、更なるキャリアアップ機会を共創。2021年までDeloitte Tohmatsu ConsultingのSocial Impact Officeにて、SDGsを起点としたCSV戦略や財団を活用したオープンイノベーション構想、企業-NPO/NGOアライアンス強化を担当。Deloitte DigitalにおいてSXを目的に据えたDX事業開発のインキュベーターとしても活動。

どのデジタル技術が、どのような価値を向上するか

まず前提として、デジタル活用で大切なことは何でしょうか。現在Society 5.0やDXといった様々なバズワードが飛び交っていますが、「受益者へ提供する価値をどの技術がどう向上させてくれるのか」に注目する必要があります。それを見落としてしまうと、デジタル化が進んでも「これが本当に成し遂げたいことは何だったのか?」という本質が抜け落ちてしまう恐れがあります。
具体的には、導入するデジタル技術が「○○性を高めてくれる」と、きちんと高めてくれる価値を言語化をするように心がけましょう。

例として、金さんが代表取締役を務めるShared Digital Centerでは、RPA(Robotic Process Automation)という自動化技術により、NPOやNGOにおける業務の効率性を向上させています。一方、同じく金さんが代表理事を務めるRobo Co-opでは同じRPAを用いて、学びやすく稼ぎやすいデジタルスキルをいつでもどこでも学べるオンライン就労支援を提供し、就労の接続性を高めています。
同じ技術であっても、何がためにどう使われるかで高められる価値は様々。

それではDXなどのバズワードに惑わされずに、どのように社会変革に向けて具体的なデジタル活用を進めていくべきか、ここでは3つのアプローチをご紹介します。

アプローチ(1)効率化する

1つ目は、RPAやAIを活用し業務を効率化することです。RPAは、事業成長に伴い業務が増えたり変わったりする中でもシステムを変えずに、人や部門、システムを繋ぎ定型業務を自動化することを得意とします。またAIに大量のデータを学習させることで、分析や判断を代替させることも可能です。

「効率化」の具体例1:Shared Digital Center
上記でもご紹介のShared Digital Centerでは、ソーシャルセクターのバックオフィス業務を集約化し、RPAを用いて機械化し自動化を進めることで、各団体がより高付加価値業務に集中できるようオンラインで経理業務や労務業務のサポートを行います。

「効率化」の具体例2:JDSC
本講座のパネルディスカッションには、JDSC代表取締役の加藤氏が登壇しました。JDSCは、個社では解決できない社会課題や産業課題を横断的なAIによるデータ利活用で解決することを追求しています。世界初の「AI活用による不在配送問題の解消」の実験を行っていて、AIが各家庭の電力データを分析し在宅/不在の判断を行い、不在先を回避できる効率的な配送ルートを配達者に提案しています。佐川急便や東京大学などのマルチセクターが連携し、不在配達に係る業界全体のコスト2,000億円/年の根本的解決を目指しています。

アプローチ(2)繋げる

2つ目は、プラットフォーム化することで、事業により多くの関与者を巻き込み、より多くの人々にサービスを届けられるようにすることです。デジタルプラットフォームは、利用する人の数が増えれば増えるほど、プラットフォームから得られる価値が高まります(ネットワーク外部性)。また、規模が大きくなるほど事業コストも下がります(規模の経済性)。大きなスケールのインパクトを実現しやすいのが、デジタルプラットフォームの特徴です(代表例:グローバルで空き家と旅行者を繋ぐAirbnb)。

「繋げる」の具体例1:Robo Co-op
今、デジタルワーカー同士が支え合う「Tech Co-op」が就労支援のグローバルトレンドになっています。Tech Co-opは、メンバーがデジタルスキルを教えあい、ITプロジェクトを遂行する中で稼ぎ、皆で運営を広めます。Robo Co-opはこの仕組みを応用し、多くの人々がオンライン上で繋がり、デジタルのスキルアップやマッチングを通じた経済的自立を大規模に繋げることを目指しています。グラミン日本やSAPとも連携し、働きたいが最初の一歩が難しいワーカーと、人材を募集する会員企業をデジタルプラットフォームでマッチングする「ソーシャルビジネスプラットフォーム」の普及にも取り組みます。

「繋げる」の具体例2:Kiva
Kiva はインターネットを介したマイクロファイナンスを行う団体で、発展途上国の小規模事業と融資者の仲介を行っています。これまでは、先進国の資金を集めても、規制上、特定国のマイクロファイナンス機関にしか資金を届けることができませんでした。そこでKivaは、インターネット経由で貸し手が借り手に直接融資できるP2Pプラットフォームを開発し、より多くの新興国と先進国の借手と貸手を1対1で繋げることに成功しました。

アプローチ(3)寄り添う

3つ目は、デジタルで、より一人ひとりのニーズに寄り添ったサービスを提供することです。たくさんの人々を支援する際に、全てを汲み取り、それぞれのニーズに寄り添うのは簡単ではありません。ただし、IoTのセンサーやデータ分析を活用すれば、受益者の状況やニーズに応じて寄り添うことが可能になります。

「寄り添う」の具体例1:JDSC「learning insight」
従来の生徒の多様性を無視した画一的な教育アプローチでは、一人ひとりの得意・苦手や、記憶定着度や集中度などを捉えきれませんでした。しかし、JDSCはAIを用いたアダプティブ・ラーニングにより、学習者のペースに寄り添い、最適化された学習コンテンツを提供することを実現します。

「寄り添う」の具体例2:JDSC「フレイル検知」
またJDSCは、不在配達解消に用いた電力データを転用し、AIが家庭の電力データからフレイル(要介護)のリスクを検知します。これにより、病院にいったり問診に答えることなく、要介護となる前に介入することを実現し、より健やかな人生を送ることを実現します。

なにから始めるべき?

それでは、どのようにデジタル活用を推進するのがよいでしょうか。大規模なデジタルプラットフォームの開発やAI導入には、時間もお金もかかります。組織のデジタル活用の経験値が低いうちに、高度なデジタル技術に取り組み大きな失敗をすると、受益者や支援者の負担となり、組織から離れていくリスクにもなりかねません。そのため、まずはRPAといった簡単なデジタル技術を用いて、効率化から着手することがオススメです。社内業務の自動化だけでなく、支援サービスの自動化にも転用できるデジタル技術の可能性にふれ、社内の機運を高めた上で、より高度なデータ活用などに取り組むステップは、中長期的な組織全体でのデジタル活用に繋がりやすくなります。

本オープンセミナーでモデレーターを務めた金さんは、Shared Digital Centerを通じてソーシャルセクターのデジタル活用の促進に取り組んでいます。このメールをご受信の方で、業務の集約化や、機械化に興味のある方のデジタル活用についての相談は、下記メールアドレスより受け付けてくださります。

//// Shared Digital Center ////
info@shared-dc.com



《Twitterスペース企画「デジタルを活かした社会課題解決のいま 」》

音声で皆さんと会話をしながら、ナレッジ共有の時間を実験的につくっているTwitterスペース企画。次回は「デジタルを活かした社会課題解決のいま」ということで、2020年12月より「Table for Kids」というサービスを開始した認定NPO法人夢職人の岩切準さんにお越しいただき、お話しを伺ってみたいと思います。

「Table for Kids」は、ひとり親家庭や低所得家庭など、経済的な課題を抱えた子育て家庭に対して、公的証書の確認も含めた審査を行い、提携している地域のお店(飲食店、弁当惣菜店、精米店、青果店等)の所定のメニューや商品で利用できるデジタルクーポン(ポイント形式)を提供しているサービスです。開発に至った経緯や苦労話、やってみて気づいたことや、その後の広がりなども聞いてみたいと思います。

参加方法は簡単。ソーシャルイノベーションセンターのTwitterアカウントをフォローしていただき、時間になったら、タイムライン上部に現れる紫色の枠が付いたアイコンをクリックするだけ。ブラウザ版だとリスナー参加しかできません。その場でお話できる方は、iOSまたはAndroid端末でお入りください。また、岩切さんに聞いてみたいことやご質問もぜひお寄せください。

●日時:5月17日(火)正午12時00分頃 ※録音いたします
●ご質問や情報のご提供は、Twitterのダイレクトメッセージまでお寄せください♪

- INFORMATION -


<5月10日(火)エントリー受付開始!>
東京都が主催する400字で世界を変える
スタートアップコンテスト
TOKYO STARTUP GATEWAY 2022 が開催

ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを
見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える
若き起業家を輩出する日本最大級のスタートアップコンテストです。
今年で9期目を迎える本コンテストは、起業をめざす
15歳から39歳までの個人が、400文字のアイデアでエントリーが可能です。毎年1000名を超える応募があり、これまでの応募総数は約9000件です。

優秀で実現可能なビジネスプランなど、初めは必要ありません。
「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」
その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。
この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、
思い切り磨いていってください。

今年のスローガンは「NEVER THE SAME」。
世界を変えるのは、きっと一人ひとりの情熱です。
これまでの発想や想像力を超えて、​​​これからの10年、これからの100年を
大胆に描く皆さんからのアイデアを楽しみにお待ちしています。

◆エントリー受付期間:2020年5月10日(火)〜7月3日(日)23:59

◆コンテスト部門スケジュール
先輩起業家による実践的な講義&メンタリング、ユーザーインタビューや
プロトタイプの開発等の具体的なアクション、 共に起業を目指す
応募者同士の切磋琢磨を通じて、起業家としてのビジョンを深め、
アイデアを、「世界」を変える事業​​​​​計画にブラッシュアップしていきます。

・7月上旬 エントリー審査通過者発表
・8月20日(土)First Stage Gathering
・9月24・25日(土・日)集中Mentoring Day
・10月中旬 セミファイナリスト審査 結果発表
・11月上旬 Final Stage/決勝大会進出者発表
・11月27日(日) ファイナル・各賞発表

◆コンテストへのエントリー・詳細はこちらから

<6/1(水)締切>
ジェレミー・ハンター教授 Special Session for Social Leaders in Japan 2022
「セルフマネジメント・マインドフルネスで結果を変える:Creating Choices」

お申込みがまだの方に最後のご案内。ジェレミーさんの研修で、一番おススメしているのがこのセルフマネジメントのクラスです。

ピーター・F・ドラッカー氏は、人をマネジメントすることは、
自分をマネジメントすること(セルフマネジメント)から始まる
と言いました。

ここでいうマネジメントは「管理する」というよりも、
相手やその時の状況を理解した上で、望む結果を出すスキルのことです。
このセッションでは、不確かな状況の中でも、望む結果を出していく、
セルフマネジメントの基礎を学び、実践します。

□思考の幅を広げて、今までにない選択肢を生み出し、成果へとつなげたい
□難しい相手でも、よい関係を持ちながら、関係性を進化・変容させていきたい
□ストレスに対して適切に対処することで、生産性の高い状態をつくりたい など
思い当たる方はぜひいらしてください。すべてオンライン開催です。

◆開催日程:(全4日程への参加が必須)※間に30分の休憩をはさみます
Day1 6月15日(水)10:00~13:30
Day2 6月29日(水)10:00~13:30 
Day3 7月 6日(水)10:00~13:30 
Day4 7月20日(水)10:00~13:30 

◆お申込み:
プログラム詳細をご確認いただき、フォームから情報をお送りください。
 >>プログラム詳細はこちら
 >>お申込みフォームはこちら

Editor's Note - 編集後記 -

ふたたび、林美輪です。私個人的にはデジタルに苦手意識があり、アナログに頼りがちなのが正直なところです。しかし今回セミナーを担当させていただき、デジタルプラットフォームの考え方が面白いなと思いました。ETIC.だとどうだろう?他にどんなケースがあるだろう?と、いち参加者として好奇心をかき立てられました!
さて、ゴールデンウィークも終わり、新しいプログラムも始まるので、気合いの入れ直しです!


発行元:
NPO法人ETIC.ソーシャルイノベーション事業部
incu@etic.or.jp

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