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⑨チェルケス料理とアブハジア料理

映画「アラビアのロレンス」でロレンスがトルコ軍に捕まるシーンがあります。その一連のシーンでトルコの将軍が、ロレンスに何人かと聞きます。

「Are you Circassian?」

この英語のサーカシア人こそ、トルコで言うところのチェルケス人。トルコでは「チェルケス=青い目金髪、美人が多い」というイメージがあるそうです。確かにロレンスも青い目金髪です。実際、オスマン帝国皇帝のハーレムの女性には、このチェルケス人が多かったのだとか。では、このチェルケス人、いったいどこの国から来たのでしょうか?

このウィキペディアを見ると主に1864年のロシア・チェルケス戦争以後にやってきた、この12氏族を指すとあります。しかし、トルコでは、どうも北コーカサス周辺あたりの人たちを全般的にチェルケスと呼んでいるみたいです。前回アフガニスタン料理の回で紹介した「アジア顔」の人たちをタタール人とざっくり呼んでいるのと似ています。ようは、あまりにも多様な人種がいるので、一括りにしているのかもしれません。

この「Circassian Cuisine」の看板見て歓喜した私!

その証拠に、今回行ったチェルケス(サーカシア)料理を名乗る「Ficcin」のオーナーは、この12氏族のお隣の国「北オセチア」出身のオセット人でした。それにも関わらず、分かりやすくチェルケス料理を名乗っています。

お店のウェブサイトがこちら。美味しそうな料理のギャラリーもあるので、見るだけでも楽しめますよ。

また、アブハジア料理店の「Sılaşara Restaurant & Cafe」も、アブハジアを名乗るもののチェルケスの名前も店名に入っており、同族的な意識が強いような雰囲気でした。北コーカサスとその周辺の民族全般をチェルケスとトルコでは認識しているのかもしれません。

アブハジア料理店のレズギンカのイラストに興奮する私

さて、今書いた二つのレストランが、今回の話になります。なので、移民街からは少し離れてしまいますが、この2つのレストランのオーナーが素晴らしく威厳に満ちていて、どちらの店も感動したので、1つの話として書きたいと思います。

イスタンブールに来たら、誰もが訪れる銀座中央通りのようなイスティクラル通り。ここに、人気のチェルケス料理の店があります。場所柄、外国人観光客が多いのでチェルケス料理目当てで来る客は、少ないかと思われます。メニューの多くは、トルコ料理ということもあり、美味しさと良心的な値段設定が人気の理由のようです。

フムスを始めとした定番のメゼ(前菜)

見てください、このメゼの美しさ!野菜もフレッシュでとても美味しかったです。これで、80トルコリラ(600円くらい)。

大通りの路地にあるカフェのように洒落た空間

ロケーションも写真のようなセッティングで良い雰囲気。取材したのは、午後3時頃でしたが席は満席でした。なので、逆に食べる前までは、チェルケス料理は、ちょっと「なんちゃって」な感じでトルコや西欧に寄せてるのかなあと思っていたのですが、メニューを見ると…

6〜8品くらいサーカシア/コーカサス料理がある

このようにちゃんとコーカサス料理のページがあり、料理単品を見るとすべてサーカシアという名前がついているのです。しかも気合い入って宣伝しています。しかも写真も美味しそう!

今回も、トルクメニスタンファンブックの著者でイスタンブール在住のギュルソユ慈さんにトルコ語の通訳をお願いしていただいてます。ありがとうございます!

北オセチア出身のFiccinオーナー

ギュルソユさんも、私たち同様に見知らぬ料理が大好き!なので、このチェルケス料理とアブハジア料理の回は、2つ返事で参加してくださいました。で、私たちは、この2つのレストランでギュルソユさんにYouTubeの撮影のため、通訳をしていただいたというわけです。これは、その1シーン。青い服の方が、このチェルケス料理店のオーナーさんです。

「私の故郷は、クラシックが流れてくるような素敵な場所なの。」

と語っていたという。なかなかそんなこと言えないです!終始、私たちのことを気遣いながらも、真摯にインタビューに答えてくださり、なんとも言えない荘厳なオーラを感じさせてくれました。

チェルケスチキンは、トルコではメゼの定番メニュー

この店で、まず紹介したい代表的なチェルケス料理は、チェルケスチキン(Çerkes tavuğu)。いわゆる中東各国にあるメゼに出てくるフムスのようなペーストですが、コーカサス料理らしく胡桃が使われています。そこにペースト状にしたチキンとハーブが交わり、独特の美味しさを創り出しています。

ネットで調べるとオスマン帝国の宮廷で食べられるようになったため、トルコに定着した料理なのだとか。先ほど冒頭に書いたようにハーレムにたくさんのチェルケス女性がいたのなら、頷ける話しです。

フィッチンのパイ生地は、結構しっかり目

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¥ 300

カフェ・バグダッドさんが提案された「世界を知るための10皿」という企画に乗り、様々な国の料理を取り上げていきます。料理を通じて、移民の方々や、聞きなれない国に親しみをもってもらいたいと考えてます。今後はYouTube「世界のエスニックタウン」と連携した企画をアップしていきます。