普遍的な価値を再発見し、日本各地の魅力を引き出す イミュー 黒田康平さん
こんにちは、渋谷エシカルウィーク事務局です!
今回は、8月19日〜8月25日に開催する渋谷エシカルウィークをサポートしてくれているパートナーの株式会社イミューさんを紹介します。
日本全国の一次産業の事業者の課題解決を行う株式会社イミュー代表取締役社長の黒田康平さん。
渋谷新聞もメディアパートナーとしてサポートをしている渋谷エシカルウィークの夏祭り(渋谷キャストにて8月19日、20日開催)にイミューさんも出店されるとうことで、お話を聞いてみました。
地域のファンをつくって一次産業を変える
黒田さんの現在のお仕事は、ふるさと納税の自治体支援を通じて、産業課題の解決を行うこと。
一次産業の人たちとじっくり何度も会話をしながら商品開発やブランディングやマーケティングなどをしています。
「農家や漁業組合の人たちと何かやろうと思っても原資がないということもあって、その時に目をつけたのがふるさと納税なんです。ふるさと納税というと、全国で1兆円弱の規模があります。
一次産業の事業者は直接お客様に販売することが少ないので、ふるさと納税の商品ページなどを改善しながら、販売に繋げるようなサポートをしています。
自治体のふるさと納税の歳入で原資を稼ぎつつ、その地域にいる事業者さんのマーケティング活動が回っていく支援ができるのが理想です。
ふるさと納税はあくまで手段であって、日本の一次産業が元気になると日本は元気になるんじゃないか、地域が元気になるんじゃないかという思いでやっています。
大切にしている思いは『お金が欲しいから、お金を欲しいを変える』こと。ただ寄付を最大化しようとすると業界全体が荒れてしまいます。ふるさと納税がなくなった後の世界を創るという目線が重要で、地域のファンをつくっていきましょうという話をしています」
現地に足繁く通ってる黒田さん。現地で事業者の方と話をしているとこれまで見えてこなかった課題が見えてくると言います。一次産業の事業者と寄り添うことで事業を作っています。
「例えば、北海道の白糠町の例でいうとブリ。北海道でも秋刀魚や鮭といういわゆるスター魚が獲れなくなってきている中で、2000年ごろからブリが獲れはじめ、今では年間15トンくらい、全体の水揚げの5〜6%くらいの規模になってきています。
しかし、地元の漁業者や北海道の人はブリをほとんど食べないんです。そのまま陸路で送ってキロあたり300円という安い値段で販売しているんです。それが富山県の氷見の方に行くと、氷見ブリといってキロ4000円以上で販売しています。
であれば例えばキロ1000円という目標を地域の事業者と一緒に立てて、差額の700円を地域に落としていくような活動を行っています。自分たちが活動することで地域にお金を落とす。
こういうことが再現性のある活動、いわゆるエシカルな動きだと思っています」
「そして当社では、白糠町の新たな名産品として「極寒ブリ™」の商品開発を進めようと、白糠町に冷凍の鮮度に特化した水産加工工場をつくることに決めました(2023年8月末に完成予定)。
北海道ではブリを食べる食習慣がなく価値が低く見積もられているということを知ったことが地域に足を運ぶ価値だと思っています。そして、ブリは高く売れるんですよと言えることが自分たちの価値だと思っています」
きっかけは渋谷でのバーの経験
現在関わっている自治体さんは10以上。全国の一次産業の生産者に寄り添った活動をしている黒田さん。しかし大学卒業後黒田さんが選んだキャリアは、意外にも大同特殊鋼という金属を作る会社の工場での生産管理。そこでモノづくりを叩き込まれたと言います。
その後、25歳で始めたキャリアが今の黒田さんのキャリアに繋がっています。
「25歳の時、友人が渋谷でバーを始めたのに相乗りして私もそこで働くことにしました。建築家を志して建築の勉強もしていました。
うちの家系はサラリーマンの家系だったので、このような選択をして親も戸惑ったと思います。
バーは、渋谷の1号店を皮切りに、メキシコと羽田空港にも出店しました。海外の方に対して日本酒を販売する機会があって、メキシコと姉妹都市でもある広島やご縁のある大分などの事業者さんをたくさんめぐりました。クラシック音楽を聞かせてつくった日本酒や、海底で熟成させた日本酒など面白い酒蔵さんと知り合いました」
「メキシコのフードショーに出展する機会があって、メキシコのバイヤーさんからもらった味やパッケージなど色んなフィードバックを酒蔵さんに伝えるんですが、なかなか伝わらない。そこで、この売り手の思いを作り手に伝えるには、もっと作り手(商品自体の改善)に深く入り込んでいかないといけないと感じたんです。
その後、日本に戻ってきてITのマーケティング会社に入って、販売手法や広告まわりのマーケティングを学びました。ただたくさん売るだけだと商品はどんどんコモディティ化してしまうことに気づき、結局、商品や作り手と関わる「商品自体の改善」に携わらないと世の中に必要とされる事業に至らないと気づいたんです。
そこで31歳の時に独立してイミューを立ち上げました。
我々が入って地域にマーケティングの視点を入れることで、作り手と売り手のアンマッチを変えたいと思っています。
ふるさと納税には作り手や地域を応援しましょうという視点があるので、その思いをミックスしていくと価値があるものを作っていけると思います」
「事業者さんでいいものを作り、消費者さんが購入を通じて良い体験ができれば視座が上がっていきます。このような事例をつくっていくことで、地域で事業を行う一次産業における人口流出減ができると考えています。
イベントなどを通じて生産者と消費者をコミュニティ化していくことができれば、日本の豊かなものづくり産業ができると考えます。今回、8月に開催のエシカルウィークに出店することもその一つです。
地域を味わうイベントなどを開催し、試食だけではなく、地域での独自性のある取り組みやふるさと納税での頑張りを直接寄付者に伝える機会を持つことで、自治体職員も寄付者も少しずつ変わっていけると考えています。
寄付者には自分のお金が、ふるさと納税によって地域で「こんな形で使われているんだ」ということを知ってほしいですし、自治体側も寄付者が支援したいと思うような事例をつくっていくことが大事です」
メキシコでの経験が価値観を変えた
「社員自らどんどん地域に入り込んで行っているので、その地域に情が移っていきます。行く行くはこの中から地域で事業を興す人とかが出てきてほしいと思います。
イミューという社名は、『イミュータブルイシュー=普遍的なこと』を追っていきましょうという思いから作りました。
『Uncover immutable issue=普遍的な価値を再発見しよう』ということをコンセプトに仕事をしています。
地域に行くと、僕たちだけじゃ発見できない、感謝とか、人の幸せとか、本当に大事なものを発見することができます。そこに弊社の強みがあると考えていますし、これからも狭く深く地域と関わる仕事のスタンスを持ち続けたいと考えています。
実は私自身はあまりお金に興味がないんです。メキシコに住んでいた時に、ヒッピーコミューンにいる日本人カメラマンの方の家に居候していました。
その人は、資本主義を否定しつつも、自分の仕事で稼げる能力も持っている。
そのような人に出会ったからこそ、お金を稼ぐ意味について自問する機会や一般的な将来像みたいなものがある意味破壊され、普遍的なことを追いかけるようになりました。
都会で高級なご飯を食べるより地域で生産者の自慢話を聞きながら食べる方が幸せですよね」
インタビュー当日は、Tシャツに短パンというラフな格好の黒田さん。今回のインタビューを通して、黒田さんの人生に対して大切にしている想いや、フットワークの軽さを知ることができました。こんな色んなことを経験してきたからこそ、目指す姿は未来をしっかり見据えているように見えました。
◾️黒田康平 略歴
大手鉄鋼メーカーを脱サラ後、建築学生、フリーランスを経て、友人と立ち上げた日本酒のメキシコへの卸会社の役員に。その後ITベンチャーに入社し年商0円→70億円超のD2C事業経営や年商200億円企業の通販コンサルティングを実践後、株式会社イミューを設立。地域に根を張り日本を興すをコンセプトに、地域 x D2Cで地域から日本を元気にする活動を展開。
◾️株式会社イミュー
渋谷新聞について
渋谷新聞は渋谷エシカルウィークのオフシャルメディアパートナーです。
本記事は2023年7月26日に渋谷新聞にて記載された内容をもとに再編集しました。
オリジナル記事はこちら。
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