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聡明な女性

新しい会社に勤め始めてはや一ヶ月。
いや、まだ一ヶ月。

ランチは、
通勤途中に会社近くのコンビニで
おにぎりとサラダを購入するのが定番だ。

ある日、いつものように
コンビニで商品を手に取って
レジに並ぶと、店員さんは
東南アジア系の若い女性の方だった。
最近は人手不足、都内のコンビニでは
もう珍しくもない光景だ。

サラダにはフォーク派なので、
商品を手渡しながら、

「割りばしじゃなくて、フォー・・・」

途中まで言いかけ
店員さんの手元を見ると、
既にプラスチック製のフォークが
握られているのだ。

驚いて視線をあげて、顔をみると、

「わかってますよ」

と、ばかりにニッコリ微笑んでいる。

まだ、新しいオフィスに
通勤し始めて一ヶ月、
このコンビニに足を運んだのは
多くても十数回だろう。

朝は混雑するので、レジは4つあり、
一列に並んだ客は、
空いたレジに順番に進むので、
意図して、同じレジや、
同じ店員さんにお世話になる事はない。

そんな中で、
彼女は名も知らぬ客の要望を
言葉にもせずに把握して、
率先して、それを提供しているのだ。

お会計を済ませ、
レジを離れる際に、短く、

「素晴らしい、ありがとう」

と小声で伝えたが、自分の感動が
伝わったかどうかはわからない。

彼女の仕事ぶりを、
適切に表現する言葉が
見つからないが、
普段あまり使わない形容詞を
あえて使うなら、

彼女こそ、聡明な女性ひとだと思った。

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